どこにでもいるのに知名度がとても低いサカナ『ビリンゴ』

どこにでもいるのに知名度がとても低いサカナ『ビリンゴ』

河口などで見かける小さなハゼのようなサカナ「ビリンゴ」。あまりよく知られていないこのビリンゴというサカナについて調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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ビリンゴって知ってる?

釣りをする人ならおそらく一度は見たことがあるであろう「ビリンゴ」というサカナ。

「いやいや見たことないです」

そんな言葉が聞こえてきそうですが、きっと見たことがあるはずです。

堤防の壁沿いや、磯の潮だまりなどを思い描いてみて下さい。

ハゼのような見た目をした数センチの小さなサカナがピョコピョコと泳いではいませんか?

その名も知らぬその小魚こそが「ビリンゴ」というサカナです。

このどこでも見ることが出来るにもかかわらず、あまり知られていないビリンゴについて解説していきます。

ビリンゴの生息地

まず、ビリンゴの基本情報ですが、ビリンゴはスズキ目>ハゼ亜目>ハゼ科>ゴビオネルス亜科>ウキゴリ属に分類されています。

日本においては北は北海道から南は屋久島までありとあらゆる場所で確認されており、海外では朝鮮半島や中国などでも同様に確認されています。

川と海が合流する汽水域の砂泥地を好みますが、海の堤防でも確認されており、ある程度塩分があればそこまで問題ではないようです。

また、底生性はそこまで高くなく、中層付近をピョコピョコと泳いで生活しています。

大人に成長してもわずか6〜7cmで、寿命は約3年ほどだと言われています。

ビリンゴは漢字だと「微倫吾」と記載され、メダカの地方名としても使われており、小さなサカナといった意味でついたものだと考えられています。

どこにでもいるのに知名度がとても低いサカナ『ビリンゴ』ウキゴリの仲間(提供:PhotoAC)

食性

非常に小さいですが、食性は一般的なハゼと同じように雑食です。

自分よりも小さな甲殻類、小魚、生息地に生える藻類まで幅広く捕食しています。

しかし、なかなか自分よりも小さい甲殻類なども多くはないため体長の小さいうちは動物プランクトンやゴカイ、ヨコエビなど中心に捕食するようです。

汽水域にはプランクトンが多く集まるため、ビリンゴが成長するにはうってつけの場所と言えるでしょう。

面白い生態

ビリンゴの産卵期は春頃で、川の河口付近の砂泥底にオスが自分で穴を掘るか、アナジャコが使わなくなった巣穴を利用しています。

オスが巣となる穴を整え、そこにメスを招き入れる形で巣を作ります。

入口から5-15cmほどの深さの壁面に、100〜600個ほどの卵をびっしりと生み付けます。産卵後のメスは多くそこで力尽きますが、一部は生き残って翌年も産卵する個体もいるようです。

また、オスは卵がふ化するまで巣穴を守ります。両親ともに命を懸けて子を送り出すのはハゼ科のサカナに多い特徴ともいえるでしょう。

食べられるの?

非常い小さいためなかなか食べる機会はないとは思いますが、一部の地域ではまとめてかき揚げにして食べられていたようです。

しかし、お分かりのとおりビリンゴを狙って捕獲する機会がないため、そこまで一般的ではありません。

味はハゼ特有の風味を感じられるものの、旨味は強くないとされています。

どこにでもいるからこそ生態系に重要

このどこにでもいるビリンゴですが、生態系においてはピラミッドを支える非常に重要な役割を担っています。

河口域ではプランクトンを捕食するこの小さなビリンゴをハゼやスズキの小さな子供が捕食し成長しています。

どこにでもいるからこそ、どこの海も豊かにサカナが育つのです。

<近藤 俊/サカナ研究所>