世界中で愛され保護されているウミガメ(アオウミガメ)。希少な生物と思いきや、地域によってはかなり数が増え、害獣扱いとなっているところもあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ウミガメの大量死が発生した久米島
昨年(2022年)7月、沖縄県の久米島で、貴重な生物として知られるウミガメの一種「アオウミガメ」が大量に傷つけられ、死ぬという事件が発生しました。
県などの調査の結果、それらのアオウミガメが地元の漁師たちによって傷つけられ、死んだことが判明しました。
関わったと見られる漁師たちの話によると、漁業のために仕掛けた網にウミガメがかかり破いてしまったり、逃がそうとする際に暴れて危険だったため、やむなく傷つけたということでした。
再発防止の対策が行われた結果、同島周辺ではそれ以降、同様の事件は発生していません。
絶滅危惧種だけど重要害獣
この事件では「絶滅危惧種であるウミガメを傷つけるなんて!」と漁師たちに非難の声が集まりましたが、実際のところアオウミガメは多大な漁業被害をもたらしている”害獣”だという側面があります。
アオウミガメによって漁網が破られることで魚が獲れなくなったり、漁業に適した海域に網を仕掛けられなくなることで魚が獲れにくくなるといった被害が出ているためです。
加えて海藻を主食とするアオウミガメが、養殖のモズクなどの藻類を食害することによる経済被害も発生しています。
久米島周辺には現在アオウミガメが大量に集まっており、藻を食べ尽くすことで生物相が貧弱になる「磯焼け」も発生。これにより魚の数が減り漁獲が減少するという二次被害も発生しているようです。
解決策は「食べる」こと?
このような問題に対し、最近ではアオウミガメを「食用にする」ことで解決できるという提言もなされています。
上記のウミガメに関連する諸問題は、久米島周辺海域のアオウミガメが多すぎることに端を発しています。したがって、環境を保全するために適切といえる量までアオウミガメを捕獲すれば、解決する可能性があるといえます。
そして、捕獲したアオウミガメを食用に加工することで、新たな経済的価値や産業を創出することができます。実は我が国では離島を中心にウミガメを食用にする文化があり、現在でも市販されています。
現在アオウミガメはワシントン条約で保護されており、捕獲や食用にすることは容易ではありません。しかし小笠原地域などでは古くからの食文化保全とためという理由で食用が可能となっており、根拠があれば例外も認められる可能性があります。
現状の被害をあからさまにしたうえで、駆除への理解を得られれば、増えすぎたアオウミガメを駆除し、食材として活用する道も拓けるのではないでしょうか。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>