幻と言われる魚は、意外に多く存在する。クエやイシダイなどがそうだが、個体数が少なく、非常に釣るのが困難なことから幻といわれるようになった。そんななか、数年前から一気に注目を浴び始めた幻がシロアマダイだ。今回は近年そのシロアマダイが狙って釣れる三重県・紀伊長島三浦沖へ出撃。人気沸騰中の幻を狙ってみた。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
いざ出船
出船前に佐々木船長の息子さんの省吾さんからポイントについて詳細な説明があった。ざっくりいえばサイズは落ちるが数が出やすいのが、水深40m前後の浅場。アタリは少なくなるが、大型が出やすいのが60m前後の深場ということだ。この2つのエリアは隣接しており、40~60mの間を丁寧に流していけばまず釣果には恵まれる。
その他、注意事項を聞き渡邉さんの操船でいよいよ出船。ポイントまでは20分ほどだ。魚探に映るターゲットではないので、水深と底の形状を見てポイントを判断する渡邉さん。風は南からそよ風程度吹いている。
レンタルボートの場合、大型船のようにスパンカで船を立てるわけではなく、基本的にドテラ流しで攻める。流されて仕掛けが底をキープできないようなら、オモリを重くしていきそれでもオモリが浮いてしまうようならパラシュートアンカーを入れて調整する。
オモリで底をたたいて誘う
開始当初はさほどボートが流れないので、そのままで開始。オモリは50号だ。シロアマダイに限らずアマダイは、砂泥の底に潜り込んで目の前を通るエサを捕食する。そのエサが巻き起こす砂煙に反応するので、オモリで底をたたいて砂煙を上げながら、仕掛けを底にはわせてエサを食わせる。
1にも2にも、いかに仕掛けを底にはわせるかがキモとなるわけだ。またシロアマダイはエサを求めて積極的に泳ぎ回ることはあまりない。目の前にエサを持っていくことが重要だ。そのためにはある程度ボートが流れてくれないと、同じ場所ばかり釣ることになる。無風で全く流れないのであれば、船外機で強引に船を動かすのも手だ。
1匹目は30cm級
開始して30分、0.2ノット程度でボートが陸寄りに流されるなか、石川さんのサオが曲がった。「あまり大きくないですよ」と言いながら巻き上げると、水面下に見えたのはまぎれもない本命。1匹目なので丁寧にタモで取り込んだのは、アオイソメが口からはみ出た30cm級のシロアマダイだった。
だがここから修行の時間が始まった。風がなさすぎてボートが流れないのだ。時折渡邉さんがエンジンをかけてボートの位置をずらすが、決して広範囲を探れるわけではない。
シロアマダイが生息しているエリアは、根や瀬があるわけではなく本命以外ではイトヨリが交じる程度。根周りのように決してアタリが多いエリアではない。
デミ潮に大苦戦
この日悩まされたのは無風だけではなく、デミ潮だ。デミ潮とは春特有の潮で、ちぎれた海藻やプランクトンの死骸が海中に多く浮遊し、まるで春霞のようになってしまうこと。このゴミ(デミ)がラインにまとわりつき、とにかく釣りにくい。PEラインはもちろん、リーダーの結節部やテンビン、サルカン、ハリのチモトまで付着し、仕掛けを上げるたびにデミの除去作業に追われる。
またデミがラインにまとわりついたまま巻き取ると、トップガイド周辺にたまっていき、そのままだと穂先を追ってしまう危険もある。そのためいちいちラインに付いたデミを取る作業がとにかく面倒だった。
大物狙いで深場へ
修行の時間が続くなか、渡邉さんが移動を決断した。向かったのは、水深60m前後のくればデカイぞポイントだ。ここで早々にサオを曲げたのは生きバナメイエビで付けていた牧田さん。激しくたたく引きは本命っぽくない感じ。予想通り上がってきたのは、色鮮やかなイトヨリだった。しかも40cm級の良型だ。
そしてそのまま流していくと、石川さんから「食った!」の声。サオが一気に絞り込まれ、ドラグが滑ってイトが出される。「コレ、アマダイの引きじゃないですよ」という石川さん。確かに本命の引きにして、パワーがありすぎる。