魚の王様マダイ、その釣法は時期や地域によって実に多種にわたる。そんななかで、伊勢湾伝統釣法といわれているウタセマダイは、普段マダイが食べているエサのエビをまきエサ、さしエサにも使う、実に理にかなった釣法といえる。今回は秋のウタセマダイ釣りについて解説しよう。
エサ
エサに使うウタセエビだが、ウタセエビという名前のエビは実は存在しない。
伊勢湾で行われている打瀬網漁で獲れるサルエビなどを総称して、ウタセエビと呼んでいるのだ。
大きさはさまざまで、小さなクルマエビほどの大きさのものもあれば、シラサエビほどの小さなものもいる。
大きなエビはサシエ、小さなものはマキエとして使われることが多いようだ。
エサの付け方
このウタセマダイにおける最大のキモといえるのが、このウタセエビの刺し方だ。これが完璧にできれば、マダイはもう釣れたと言っても過言ではないほど、重要なファクターなのだ。
エビが海中でいかに自然に漂っている様子を演出できるかなのだ。
まずエビを利き腕と反対の親指、人差し指、中指、薬指の4本でしっかり持って固定する。
そして利き腕でハリを持ち、エビの頭の先端にあるツノとツノの間にゆっくりハリを刺していく。
このとき、頭にある脳ミソの部分には絶対ハリを入れないこと。
エビが死んでしまい、魚の食いが落ちるだけでなく、海中でクルクル回ってハリスがヨレてしまう。
ハリを入れたら反対側の甲羅の部分から、ほんの少しハリ先が出るまで入れていく。ハリ先を出しすぎるとエビの姿勢が悪くなるので要注意。
エビを刺し終わってハリスを持ってぶら下げたとき、エビが水平になるようならOKだ。
この作業をいかに素早くできるかで手返しのスピードが上がり、ひいては釣果にも影響する。
エサ取りの多い秋のウタセマダイでは特にエサ付けが多い。案ずるより産むがやすし、とにかく場数をこなして素早くエサ付けできるようになろう。
釣り方
さて具体的な釣り方だが、ざっくり分けて縦の釣りと横の釣りがある。
縦の釣りは潮が動かない場合に、横の釣りは潮が速い場合に船長がまくウタセエビのマキエを同調させながら、遠くのポイントまで仕掛けをどんどん送り込んでいく釣り方だ。
まず縦の釣りから説明しよう。
縦の釣りについて
この釣り方は文字通り、船の下に重めのオモリを付けてまっすぐ落とし込んでいく。仕掛けがとにかく長いので、手前マツリには気をつけたい。
仕掛けのハリはまずサオのグリップに3本とも掛けておき、オモリをそろそろと海中へ沈めていく。
一番の下のハリまできたらここでエサを刺し、順に沈めていく。このとき、オモリが海中にあるので仕掛けには負荷がかかっている。
ハリを指に刺すと大事故につながるので、細心の注意を払ってエサ付けを行おう。
この時期、底から10mまでは、マキエに寄ってきたベラやカワハギ、フグなどのエサ取りが大量に集まっている。1投目は底まで落とし、ゆっくりリールを巻きながら仕掛けを徐々に上げてくる。
エサ取りの細かいアタリは一切無視し、10mまで巻き上げたらいったん回収しよう。おそらくハリ3本ともエサはきれいになくなっているはずだ。
次の投入は底まで落とさず、底から3mの位置でオモリを止めて再び巻き上げを開始。こうしてエサ取りがどのタナまで群れているかまずか調べるのだ。
目安としては一番下のハリだけエサが取られ、上2本のエサが残っているタナ。このタナをまず探し当てるよう。
当たりダナさえ見つければこちらのもの。そのタナに仕掛けを止め、手持ちザオでじっくり待つ。この時期ならアタリが出るのにそう時間はかからないはず。
独特の金属的な引きで穂先が絞り込まれるだろう。
もちろんこの当たりダナは時間や潮で変動する。再びエサが全部取られるようなら、そのタナから上へ上へと探っていこう。
次は横の釣りを説明しよう。
横の釣り
ウタセマダイでは船長が専用のカブセカゴを使い、生きたウタセエビをまいてくれる。
潮に流れがあれば、まかれたウタセエビは流されて潮がヨレたエリアにたまり、当然マダイや青物もそこに集まることになる。
船から離れた所にポイントができるので、船下を釣るよりノープッシャーの魚を狙えるのだ。この釣りでキモになるのが、ミチイトのフロロカーボンラインだ。
水切れが良く浮力のあるPEラインとは違い、フロロカーボンは水の抵抗を大きく受ける。仕掛けを投入する手順は同じ。
オモリは釣り座や潮の速さにもよるが、まず20号ぐらいから始める。これで流れなければ、15号、10号と軽くしていき、釣り座が大ドモだったりすると最終的に1~2号まで落とすこともある。
捨てイトを長めに取って投入し、オモリが着底したら流れるままイトをどんどん出してやる。
流し方としては、オモリが着底したら余分にイトを出してやる。オモリが流されてイトが張っていき、穂先に負荷がかかり始めたら再びスプールからラインを出してやる。
フロロカーボンラインは潮の流れを受け、水中で大きくたわむ。これがいわゆる帆船の帆のような役割を果たし、仕掛けを適度な速さで流してくれるわけだ。
これを繰り返していくと、イトが張っていく途中で穂先にアタリが出る。ラインがフロロカーボンなので、PEほど鮮明に出ないが、グッと押さえ込んだところでアワセを入れる。
このとき、必ずサオ全体を振り上げて大きくアワせること。ラインが伸びのあるフロロなので、大きくアワせないとしっかりハリ掛かりさせられないのだ。