春が旬の巨大貝『タイラギ』は「二度美味しい」 理由は寄生生物にあり

春が旬の巨大貝『タイラギ』は「二度美味しい」 理由は寄生生物にあり

国内では最大の食用二枚貝で、高級食材として珍重されるタイラギ。その大きな殻の中には、貝柱とは別の「美味な食材」が隠れていることがあります。

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その他 サカナ研究所

食用貝柱の中で最大級「タイラギ」

春を迎えようとするこの時期、多くの二枚貝が旬を迎えます。

そんな二枚貝の、食材としての最大の魅力といえばやはり「貝柱」。二枚貝の中で最も強い筋肉であり、高品質なタンパク質と旨味成分のアミノ酸、甘みであるグリコーゲンを大量に含むなど、味も健康にもとても良い食材です。

春が旬の巨大貝『タイラギ』は「二度美味しい」 理由は寄生生物にあり貝柱(提供:PhotoAC)

そんな貝柱といえばやはりホタテ……というイメージが強いようですが、実はホタテよりも大きな貝柱を持つ、貝好きにとっては夢のような貝があります。それはタイラギ。一般的な食用二枚貝の中では最大の大きさを誇り、その貝柱はときに幅8cmほどになるものもあります。

タイラギってどんな貝?

タイラギは「ハボウキガイ科」というグループに属する二枚貝。砂泥質の海底に埋もれるようにして生息しています。

タイラギの最大の特徴は、最大で殻の長さが30cmほどにもなるその大きさ。そのような巨大な殻を開閉させる貝柱もまた大きく、やや反った楕円形をしています。

春が旬の巨大貝『タイラギ』は「二度美味しい」 理由は寄生生物にありタイラギの刺身(提供:PhotoAC)

この貝柱は様々な料理で賞味されるのですが、特に寿司ネタ「平貝」として珍重されています。ホタテよりも軽くサクッとした歯切れの良さと濃厚な甘み、後味にわずかに残る心地よい渋みが特徴です。

タイラギは養殖が行われていないためホタテよりも高価で、最近では高級寿司屋でしか目にすることがなくなっています。かつては有明海で大量に漁獲されたのですが、残念ながら現在は絶滅危惧状態にあり、国内で主に流通しているのは三河湾産や中国・韓国産となっています。

寄生する「カクレエビ」

さて、二枚貝はしばしば、その殻の中に別の生物が寄生しています。アサリの中にいるカクレガニ(ピンノ)が有名ですね。

タイラギの中にも、そのような生物が寄生しています。その生物とは「カクレエビ」。

春が旬の巨大貝『タイラギ』は「二度美味しい」 理由は寄生生物にありカクレエビ(提供:茸本朗)

寄生生物とはいえ、タイラギのような大きな貝に生息しているのでサイズも大きく、全長は4cmほど。全身が透明で透き通った殻に覆われており、つぶらな瞳が非常にキュートです。

そしてこのカクレエビ、実は非常に美味なエビです。生で食べれば鮮度の良い甘エビのような甘味と旨味があり、後味に貝の風味もあってオンリーワンの美味です。小さいですが焼いたり炒めたりしても強いエビの風味が残り、とても好ましい味わいです。

基本的にはタイラギは殻を剥かれ、貝柱だけで流通するので、このカクレエビに出会うことはなかなかありません。ただもしタイラギを殻ごと入手する機会があれば、ぜひ探してみてください。それなりの確率で寄生しているようです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>