日本最大の湖であり、世界有数の歴史のふるさを持つ古代湖でもある琵琶湖。その沿岸地域では、農業と漁業が深く結びついた独自のエコシステムが構築されてきました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
琵琶湖を彩る独特な淡水魚食文化
一般的に、湖は年月が経つと土砂の流入によって水深が浅くなり、やがて消滅してしまう運命になります。しかし断層湖である琵琶湖は土砂の流入を上回る勢いで容積が増していくため、場所を微妙にずらしながらも長い期間消滅せず存在し続けてきました。このような湖は「化石湖」と呼ばれ、世界にも数えるほどしかありません。
そんな長い歴史と巨大な容積を持つ琵琶湖には、ビワマス、ハス、ニゴロブナなどといった琵琶湖にしか生息しない固有種が多数生息しており、沿岸地域の人々に利用されてきました。多種多様の水産物を様々な調理法で食べてきた琵琶湖沿岸は、日本で最も豊かな魚食文化を持つ地域であるともいえます。
そんな琵琶湖でも最近は多分にもれず、ブラックバスやブルーギルを始めとした侵略的外来種の棲息量が多くなっています。しかし、そのような魚たちも加工し、食用にするような懐の深さもあります。
今回の認定をきっかけに、豊かながらも知名度があまり高くない「琵琶湖の淡水魚食文化」に、よりスポットライトがあたるようになればいいなと個人的には思っています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>