養殖魚の需要が世界的に拡大している中で、その主力の一翼を担っているのは実は「淡水魚」であるということをご存知でしょうか。
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淡水魚の養殖がもつメリットとは
このような淡水魚の養殖は、海での養殖技術が向上するに従い廃れていくものと考えられていたこともありました。しかし、実際のところ淡水魚の養殖には海水魚にはないメリットがあり、そのため結果的に今も生産量を増加させています。
最も大きなメリットは「コストが小さい」こと。陸上に設置できる養殖場は小規模から行うことが可能で、イニシャルコストや運営費の面で有利です。
海上の養殖場は大規模にでき、一度に大量の魚を育てることができますが、その分各種のコストが掛かり、加えて自然災害や赤潮などの環境変化リスクにも弱いというデメリットがあります。近年の異常気象によりこのリスクは増大しており、いまや大規模資本の養殖場しか生き残れなくなってきているともいわれます。
もう一つのメリットは「非タンパク質飼料で育てられる」こと。
海水養殖魚の多くは肉食魚であり、その資料には多くの場合、小魚を原料としたフィッシュミールが使用されます。消化吸収に当たり必要なカロリーが相殺されることを考えると、どうしても「育てた養殖魚のタンパク質総量<飼料として消費されたタンパク質総量」となるため、肉食魚の養殖はタンパク質生産効率に劣ることが問題視されます。
一方で淡水養殖魚には草食・雑食性、あるいはプランクトン、貝類食性のものが多く、フィッシュミールを使用しなくても養殖が可能なことが多いのです。
これらのメリットはいわゆる「SDGs」の側面から見ても非常に有益であると言え、今後さらに淡水魚の養殖は重要な産業となっていくでしょう。我が国では、淡水魚がそもそも食材としてマイナーであるというハードルがあるのですが、今後このような「淡水養殖魚」が食材として見直される機会が来るかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>