産地偽装問題の背景に国産アサリ資源量の減少状況 産地を襲う危機は多様

産地偽装問題の背景に国産アサリ資源量の減少状況 産地を襲う危機は多様

連日報道されているアサリの産地偽装問題。そもそもこのような偽装が行われてきた裏には、全国で一斉に起きているアサリ資源量の著しい減少があります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

アサリの産地偽装問題

全国を揺るがした熊本県のアサリ偽装問題。連日盛んに報道されていますが、その影響は市場から離れ、各方面に広がりを見せています。

同県の中央部にある宇土市では、ふるさと納税の返礼品として県内産アサリの加工品を提供していましたが、返礼品の内容を変更すると発表しました。また同市にある道の駅「宇土マリーナ」では、熊本県産のアサリの販売を見合わせており、現在は「中国産」など他産地のものが販売されています。

産地偽装問題の背景に国産アサリ資源量の減少状況 産地を襲う危機は多様「熊本県産」として売られているアサリ(提供:PhotoAC)

今月8日には熊本県知事が、アサリの「緊急出荷停止宣言」を発令、今後2カ月間のアサリの出荷を停止すると宣言しました。生産・流通の現場には大きな痛みをもたらす政策ですが、これにより偽装アサリの「膿」を出し切るという強い意志を感じさせます。(『アサリ産地偽装問題 加工品にも影響【熊本】』テレビくまもと 2022.2.7)

偽装の背景

今回の偽装は全国の消費者に大きな衝撃を与えました。しかし一方で熊本県下では、アサリの偽装はなかば「当たり前」のことだったことが、報道が進むにつれてわかってきました。

有明海や八代海など、遠浅でアサリの生息に適した海を抱える熊本県。アサリ漁獲量は1970年代、年間6万トンを超え全国のおよそ4割を占めたといいます。しかし70年代後半から、高度経済成長に合わせて発生した建築ラッシュにより、コンクリートの材料として県内を流れる川の川底の砂が大量に採取されるように。その結果、海に流れ込む砂が減り、浜や干潟が痩せていったといいます。

産地偽装問題の背景に国産アサリ資源量の減少状況 産地を襲う危機は多様アサリのいる浜は急速に失われている(提供:PhotoAC)

生育適地の減少により、熊本県のアサリは80年代から漁獲量が減少し続けており、2020年はたったの21tでした。しかしそれにも関わらず、全国の鮮魚店・スーパーの店頭には「熊本県産アサリ」が並びつづけたのです。農林水産省の推計では、2021年10~12月の間に2485tの「熊本県産アサリ」が販売されたということです。

食品表示法

実は食品表示法においては、例えば中国で「1年育てたアサリ」を輸入した場合、熊本で「1年より長く」育てれば合法的に熊本産と表示できます。これにより、そもそも中国産や韓国産、さらには公式には輸入されているはずのない北朝鮮産アサリを熊本で畜養し「熊本県産」として出荷するということが常態化していきました。

さらにそこから一歩進み、仕入れ先の外国の業者に対して実際の生育期間より短い「生育証明書」を出すよう依頼するなど、本格的な偽装が発生する形となっていったのです。
 

純国産アサリは高嶺の花

実は熊本に限らず、全国のアサリ産地でアサリの生産量は激減しています。

現在日本一の生産量を誇るのは、三河湾や伊勢湾などの大きな内湾を抱える愛知県です。しかし県内では最大産地の三河湾で、ここ数年「苦潮」と呼ばれる貧酸素水塊の発生が拡大。湾奥部のアサリ資源量の低下が進んでいます。

貧酸素水塊は、河川の水質汚染により海中の栄養塩が多くなりすぎて発生するもので、日本各地で発生している環境破壊のひとつです。東京湾奥部では毎年のように大規模な貧酸素水塊が発生し、アサリを含めた様々な資源が壊滅に近い状態となっています。

産地偽装問題の背景に国産アサリ資源量の減少状況 産地を襲う危機は多様国産アサリは希少に(提供:PhotoAC)

また愛知県に接し、生産量上位の常連である三重県では、伊勢湾内に外来種の巻き貝であるサキグロタマツメタが定着し、これによるアサリの食害被害が大きくなっているといいます。サキグロタマツメタは、輸入アサリとともに国内に移入され定着したという説もあり、これもヒトによる環境破壊のひとつと言えます。

我が国内で現在も潤沢な資源量を誇るといえるアサリ産地は、北海道の厚岸など数えるほどしかありません。「純国産」のアサリを食べるのはもはや贅沢となってしまっているのが現状であり、そのような状況は我々日本人による環境破壊がもたらしたものです。偽装を叩くだけでなく、偽装をしたくなる状況に追い込んだのは我々日本人であるということを認識する必要があるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

 

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