あご出汁のもとである「トビウオ」は今がまさに旬なのです。
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トビウオとは
ほとんどの人が名前を一度は聞いたことがあるであろう「トビウオ」。翼の代わりに胸鰭を広げて海の上を悠々と飛ぶ姿を想像する人も多いでしょう。
トビウオはダツ目トビウオ科に属し、実は世界中で50種類以上も存在するサカナです。日本でも30種類以上のトビウオが確認され、その中で主に4種類のトビウオが漁獲され、食用などに利用されています。
ちなみに普通のサカナは1匹、2匹と数えますが、トビウオは鳥と同じように1羽、2羽と数えることがあるようです。
メダカと仲間?
トビウオが属しているダツ目には、ダツの他にもメダカやサンマなどが属しています。
確かに顔はよく見るとメダカに非常に似ていますし、食べ味はサンマに近く非常に旨味の濃いサカナです。
トビウオの生息域
トビウオの生息域は、九州南部から四国の太平洋側、山陰地方、伊豆諸島があげられます。
春先から徐々に北上していく習性があるため、それに伴い時期によって漁場が少しずつずれていきます。
その中で、長崎県五島列島のあご焼きや、島根県、兵庫県のあご野焼き、八丈島の島ずしなど、伝統的に漁がおこなわれ、加工利用されています。
トビウオの旬
トビウオの旬は地域や種類によって異なってきます。トビウオの中でも春先に旬が来るのがハマトビウオ、初夏に来るのがツクシトビウオ、秋にトビウオと決まっており、これからの時期はまさに「トビウオ」が美味しい季節です。
基本的には西日本で多く漁獲されるため、鮮度のいいトビウオが食べたい場合は、有名な産地に赴くのがいいでしょう。
また、トビウオの卵は「とびっこ」として有名です。最近ではコンビニのおにぎりの具材としても認知されてきていますね。
あご出汁の原料
トビウオは運動量が非常に多いため、脂肪分や雑味が他の魚より少なく、さっぱりとした上品なダシが取れるとされています。
長崎県の五島地方では、主に漁獲されるホソトビウオを原料に煮干しを作っています。この煮干しはあごだしと呼ばれ、最近ではごく当たり前のようにスーパーで購入することが出来ます。
少し前まではあご出汁はあまり普及していなく、テレビなどでは『幻の出汁』などと紹介されている時期もありました。
最大600mの飛距離
トビウオのイメージと言えば美味しいよりも「飛ぶ」ですよね。
他の魚よりも長い尾びれと、翼のような胸鰭を使って空を飛びます。
トビウオは種類にもよりますが、平均すると200mほどの飛距離を飛ぶことができます。大型種になるほど飛距離も伸び、600mほど飛べるといわれています。
また、水面を滑走している時は時速30~40km、滑空時は時速50~70kmほどのスピードを出していると言われ、そのままの状態で1分近くも飛ぶことが出来ると言われています。
飛ぶために進化したからだ
トビウオは長い尾びれを左右に振ることにより、推進力をつけ、水面を飛び出します。その後は、胸びれと腹びれを広げてグライダーのように使うことで飛距離を伸ばします。
翼のような胸鰭は全長の2/3ほどもあり、広げるとまさに翼や飛行機の羽のようです。
また、トビウオには胃がなく、他の消化器官も短く直線にすることで、体を軽くし、飛距離を伸ばしていると考えられています。
トビウオが飛ぶ理由
飛行中でもブレーキをかけることや、方向転換ができることなど、意外と器用な飛び方ができるトビウオですが、具体的な飛ぶ理由は定かにはなっていません。しかし、有力なのはマグロやシイラなどの大型魚から逃げる手段でるというものです。
同様に大きな漁船が近くを通った時もまるで勢いよく逃げていく姿を見ることが出るため、短時間で遠くに行くための手段であるのは間違いないでしょう。
生食は美味
トビウオはイワシなどと同じように鮮度の落ちやすい魚ですが、輸送技術が発達し、新鮮なトビウオが手に入りやすくなった現代では、刺身で食べられることも多くなりました。
特に大型のハマトビウオは刺身として現地では非常に人気があります。現地を訪れ、生食で食べられる機会があれば是非食べてみてください。
想像よりも濃厚でしっかりとした味わいにすぐにファンになってしまうでしょう。
<近藤 俊/サカナ研究所>