BBQ道具を川で洗う若者が問題に 洗剤が魚介類に与える悪影響とは?

BBQ道具を川で洗う若者が問題に 洗剤が魚介類に与える悪影響とは?

バーベキュー道具を川の水で、洗剤をつけて洗っている非常識なシーンの写真がTwitterに投稿され、非難の声が上がっています。川で洗剤を使用すると、魚たちには一体どのような影響が及ぶのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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バーベキュー客が川で洗剤を使用

先日、岐阜県の某河川で撮影されたとある写真が、Twitter上で大きな話題となりました。写真に写っているのは、バーベキュー客と思われる若い人が、「川で、しかも洗剤を使って」洗い物をしているというシーン。

公開された写真に写っている人はプライバシー配慮もあってか顔などは写っていませんでしたが、この非常識な行為に対し「魚が死んでしまう」「自然をなんだと思っているのか」と非難する声が相次ぎました。

BBQ道具を川で洗う若者が問題に 洗剤が魚介類に与える悪影響とは?川面に浮かぶ泡(提供:PhotoAC)

一方で「彼らはそれが悪いということを知らないのかもしれない」「このようなことが起きるのは必然」と、彼らそのものではなく基本的なことを教わる機会がない若者たちに同情を示す声もありました。

アウトドアブームが原因?

今回の件に限らず、例えば直火での焚き火をしたり、釣り客が釣り場にゴミを残していくなど、新規参入層と思われるアウトドア客のマナーの悪化が指摘されることが多くなっています。

これについては「最近のアウトドアブームで無知な人間が野山に出るようになってしまった」という声も多く、アウトドアの楽しい面ばかりを喧伝するメディアの責任を問う声も上がっているようです。(『「洗剤をどばどばと…」バーベキュー後に川で食器を洗う若者たち 無知な行為の代償は?専門家「想像力育んで」』まいどなニュース 2021.8.12)

洗剤が魚に及ぼす影響

今回の件のように、川で洗剤を用いた場合、その成分が河川水中に溶け出します。それは河川環境において様々な形の悪影響をもたらすのですが、特に注目されるのは「魚毒性」です。

洗剤の成分がある程度以上の濃度で溶けこんでいる水中に魚を入れると、彼らは死んでしまいます。これは一体なぜでしょうか。

洗剤や石鹸など、油汚れを落とすために用いられる物質は「界面活性剤」と呼ばれます。界面活性剤は水と油の両方に混ざりやすい形態をしており、本来なら混ざり合わないその2つを混ぜ合わせることができます。これにより、油汚れを水で洗い流すことができるようになるのです。

BBQ道具を川で洗う若者が問題に 洗剤が魚介類に与える悪影響とは?エラの細胞に悪影響を及ぼす(提供:茸本朗)

しかし、この界面活性剤が生物の細胞に付着すると、細胞膜の主成分である脂質を溶出させるため、細胞が機能しなくなってしまいます。水中に溶け込んだ洗剤の成分が魚のエラ(鰓葉)に付着すると、エラの細胞が機能しなくなり、魚は酸素を取り込めなくなって窒息してしまうのです。

したがって、魚に限らずエラ呼吸をする水中の生き物たちは、洗剤が河川に溶け込むと同様の被害を受ける可能性があります。それ故に川や湖沼に洗剤を流してはいけないのです。

合成洗剤でなければいい?

洗剤のこのような水棲生物毒性を問題視し「洗剤を使わないようにする」という運動は世界各地で行われてきました。それに伴い「合成洗剤」ではなくより自然に近い「石鹸」を使用しようと呼びかける運動も、各地で行われてきました。

しかし実際のところ、石鹸もまた界面活性剤の一種であるため、水棲生物毒性がないわけではありません。ただし、石鹸は低温で溶け出しにくく、河川水の水温程度ではさほど溶解しないという特徴があります。

加えて、石鹸は水に含まれるカルシウムイオンと結合し「カルシウム石鹸」と呼ばれる不溶性の物質になるという性質もあります。そのため、洗剤と比べると魚毒性が低くなりやすいのです。

BBQ道具を川で洗う若者が問題に 洗剤が魚介類に与える悪影響とは?石鹸は洗剤と比べて環境に優しいと言われている(提供:PhotoAC)

しかしその一方で、石鹸は合成洗剤と比べ、洗浄能力そのものが低いというデメリットも持っています。そのため一度の洗浄で合成洗剤より大量に用いられやすく、それに伴い洗浄に使用する水量が増え、水質汚染に繋がってしまう、という欠点もあります。石鹸が無条件でよく、合成洗剤が無条件に悪いというわけではないのです。

なお、現在の下水浄化技術では合成洗剤も十分に浄化が可能であるとされています。大事なのは、石鹸にしろ合成洗剤にしろ「必要以上に使用しないこと」、そしてそれ以上に大切なのが「排水が自然環境に垂れ流されないこと」です。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>