8月1日、釣りのハイシーズンを前に「落水体験会」が名古屋港で開催。ここではその模様と釣りにおける事故の実際、救命器具の重要性、安全に釣るための留意事項を紹介する。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版APC・大田豊明)
釣り中の事故数が増加中
愛知県、三重県を管轄する海上保安庁第四管区海上保安本部の調べによると、今年の釣り中の事故は過去最多だった昨年度を上回るペースで発生しているという。
いつも救命具を着けて釣りをしている人でも、あらためて海に落ちて自身の救命具の浮力実験をした人はまずいないだろう。不意に海中転落したらいったいどうなるのか。きちんと救命具は役割を果すのだろうか。
「経験は最上の力」。一度体験すると自身の想像と現実のズレに驚くはず。私は40年前、このような体験教室を経て安全に目覚め、以来救命具を着用した落水体験を勧め、そのようなイベントを開催してきた。
釣りの事故は海中転落が8割
第四管区海上保安本部(名古屋)では、過去10年間の愛知、三重両県下での釣り中の事故について、次の通りリリースしている。
10年間の釣り中の事故者は160人。事故発生は10月が最も多く、次いで5月。釣り中の事故者のうち約8割が海中転落によるもので、転落者のうち約4割が死亡している。海中転落者のうち、約7割が救命胴衣を着けていなかった。救命胴衣着用者の生存率は約7割と高い。これによっても明らかなように、万が一の海中転落事故に備えて救命具を着用することが、最も有効な救命手段といえよう。
海中転落者の事故発生場所は、防波堤と岸壁からがほとんど。これらから転落するとつかまる所や上がる場所がなく、潮に流されてしまう。
救命胴衣の重要性
これらをまとめると、(1)釣り中の事故は海中転落が最も多い。(2)事故の発生場所は防波堤と岸壁が主で、救命胴衣を着けていない釣り人が多い。(3)年齢別では60歳以上の高齢者の被災率が高い、ということだ。
「救命胴衣の浮力体験をしたことがあるか」、「そのライフジャケットはいざというとき正しく作動するか」、「ボンベや本体が使用期限を過ぎていないか」をポイントに8月1日、「釣り人の安全講習会(救命具の落水体験会)」を海上保安庁指導のもと、名古屋港で開催した。
安全講習会で落水体験
午前9時すぎから四管本部交通部安全対策課大迫担当官による救命具の取り扱いや事故の実態などの「安全講話」、続いて10時から救命胴衣を着用した釣り人による落水体験会が始まった。
体験は参加者の約4割7人が自身の救命具を着けてチャレンジした。内訳は小学生1人、中学生1人、女性1人、高齢者2人など。救命胴衣の形式は固形式が3人。膨張式が4人と膨張タイプがやや多かった。
体験者が浮力を確認
灯台見回り船「あやばね」の舷側のタラップを利用して海に入る。救命具が膨らむとあお向けになり、両手を広げて浮力を保つ。穏やかな海面だからたやすいが、荒れた釣りの海では容易ではないかもしれない。
次に体験者に向かって陸上から2Lのペットボトルと10Lのクーラーボックスを投げ入れて浮力の実験をした。ペットボトルもいいが、クーラーの浮力はとても頼もしく有効だった。