浜名湖の潮干狩りが3年連続中止に アサリが減ったのは乱獲が原因?

浜名湖の潮干狩りが3年連続中止に アサリが減ったのは乱獲が原因?

静岡県下最大、全国でも屈指の知名度を誇る浜名湖の潮干狩り場ですが、今年も開場されないことになりました。これで3年連続となります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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浜名湖の観光潮干狩りが中止に

全国でも屈指の大きさを誇り、豊かな生物相を誇ることで知られる浜名湖。ここは長年潮干狩りの名所として知られてきているのですが、湖内にある弁天島の観光潮干狩りは、今年も中止となりました。

浜名湖の潮干狩りが3年連続中止に アサリが減ったのは乱獲が原因?弁天島(提供:PhotoAC)

中止は2019年、2020年に続いて3年連続。その最大の原因は、潮干狩りのメインターゲットであるアサリの記録的な不漁です。

浜名湖では、2020年のアサリ漁獲量が過去最低の707トンを記録しました。これは10年前の半分以下の量です。静岡県と当該漁協では、協力してアサリ不漁の詳細な原因解明・対策を進めています。(『柏崎で全国初の養殖成功、ブランド魚になれるか』朝日新聞デジタル 2021.3.26)

不漁の原因は乱獲?

実は、浜名湖の観光潮干狩りは不漁を原因として、2013年以降は全面中止や限定的な実施が続いていました。潮干狩り場の知名度の高さもあり、アサリの不良の原因について、とくにウェブ上では「潮干狩り客の乱獲のせい」「いや漁師のせいだ」と乱獲を指摘する声が大きくなっています。

ただ、実は浜名湖では以前から、漁師には1日あたりの漁獲量上限を1日120kgに規制し、近年ではさらにその半分強である66kgまで規制を強めています。

浜名湖の潮干狩りが3年連続中止に アサリが減ったのは乱獲が原因?アサリ(提供:PhotoAC)

そもそも、漁獲量が短期で大きくなる潮干狩り場を3年連続閉鎖して、それでも漁獲が復活していないという現状から考えれば、乱獲だけに原因を求めるのは難しいでしょう。他に根本的な原因はないのでしょうか。

浜名湖の特徴

浜名湖は、山と谷が作る入り江が砂州によって塞がれてできた「海跡湖」。そのため海とつながる出口寄りが浅く、湾の奥が深いという特殊な地形になっています。

アサリは浅い海域を好む性質があるため、もとより湖の入り口寄りに多く生息していました。湾の奥に流れ込む河川から豊富に供給される淡水が、湾入り口寄りの浅い場所で外洋の塩分濃度の高い海水と混じり合い、栄養も多く水深も適度な、アサリの生息に適した水質になっていたのです。

浜名湖の潮干狩りが3年連続中止に アサリが減ったのは乱獲が原因?特徴的な地形を持つ浜名湖(提供:PhotoAC)

複合的な環境変化

しかし近年、湾口の工事が進み、湖に外洋から潮がよく入るようになったといいます。そのため湾入口付近の塩分濃度が上昇してしまい、アサリの生息に適さなくなってきた可能性があると言われています。

そこに加え、水温上昇などが影響し、クロダイなどアサリを好んで食べる魚が増加しているという研究もあります。限られた場所に残った僅かなアサリも、彼らに食べられてしまうのです。

このように浜名湖のアサリ不漁は、この湖独特の事情も関係しており、根が深く、一朝一夕に解決できる問題ではないのかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>