「騒音」が魚に与える影響を実験 平均余命が1割以上も短くなった?

「騒音」が魚に与える影響を実験 平均余命が1割以上も短くなった?

イギリスの大学が「魚に騒音を聞かせる」という実験を行いました。サカナもヒトと同様、騒音による影響を受けているらしいとわかってきたようです。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

騒音が魚に与える影響

9月15日、英カーディフ大学の研究チームによるとある実験のレポートが発表され、話題となりました。その実験とは「魚に騒音を聞かせ、影響を調べる」というもの。

実験に使われたのは、観賞魚として人気の「グッピー」。彼らはグッピーを3つのグループに分け、第1のグループには24時間、第2グループには7日間に渡り「ホワイトノイズ」と呼ばれる騒音を聞かせました。

「騒音」が魚に与える影響を実験 平均余命が1割以上も短くなった?グッピー(提供:PhotoAC)

そしてその後(第2グループはその7日間の最中)、騒音を聞かせていない第3のグループを含むすべてのグッピーを寄生虫に感染させ、17日間に渡って様子を見ました。

実験の結果

24時間騒音を聞かされたグループのグッピーは、他のグループの個体と比べ疾病負荷(健康寿命やQALYなどの指標から計算される、疾病により失われた生命や生活の質の総合計)が高くなったことがわかりました。つまり、終日騒音を聞かされることで、何らかの形で体調を崩したり状態が悪くなってしまった個体が多くなった、ということが言えます。

また、7日間騒音を聞かされ続けたグッピーは短命の傾向が強まったことも判明しました。他のグループのグッピーの平均余命が14日だったのに対し、このグループの個体群のそれは12日と、1割以上も短くなっています。(『騒音ストレスで魚が短命に、寄生虫への免疫低下 研究』JIJI.com 2020.9.16)

これらの結果は「騒音によるストレスを受けた魚は、病気を撃退する力が弱まる」という事実を示唆していると考えられています。

実験の意義

今回の実験によって、長期・短期の人工的な騒音が魚における宿主と寄生体の相互作用に対し悪影響を与えるということが明らかになりました。

これは例えば漁業においても、非常に意義のある考察だといえます。例えば養殖場で育てられている魚は非常に寄生虫に感染しやすいことが知られていますが、この考察によって、その理由を説明することが可能になるかもしれません。

「騒音」が魚に与える影響を実験 平均余命が1割以上も短くなった?養殖に際し騒音を防ぐことが肝要になる可能性も(提供:PhotoAC)

騒音が野生動物に与える影響についてはこれまでもしばしば考察されてきました。例えばとある動物が騒音によって捕食動物が近づく音を聴くことができなくなったり、動物が交尾相手を探す能力が妨げられてしまうことが指摘されています。(『人間は自然保護区域にさえかなりの騒音をもたらしている』EurekAlert 2017.5.4)

今回の実験は、騒音と動物の健康被害の関連を明示する新しい証拠となるものだと、研究者たちは考えています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>