アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?

アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?

今や養殖物が支えていると言っても過言ではないアワビの市場。天然物を選んで買う際は、殻の色に注目すると良いと言われています。

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アワビの需要を満たす養殖物

高級貝の代名詞・アワビ。和食からフレンチ、中華に至るまで様々なジャンルで用いられ、高級料理のアイコンとも言える存在です。当然、わが国だけでなく世界的に高い需要があり、増産が求められています。

アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?アワビの刺身(提供:PhotoAC)

一方で、成長に時間がかかるアワビは採取圧に弱く、天然物はすぐに数が減ってしまいます。そのため現在では、中国、韓国をはじめ各国で養殖が行われています。

アワビの輸入大国・日本

日本では、贈り物に欠かせない「熨斗」として用いられるなど、古くからアワビは食材として重要なものでした。そのため様々な漁法で漁獲されてきたのですが、現在では漁獲量は激減してしまいました。これには乱獲のほか、温暖化による棲息適地の変化、磯焼けによるエサの減少などの様々な原因が考えられています。

アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?磯焼けが進む日本の海(提供:PhotoAC)

稚貝を育て海にまく「栽培漁業」も長年行われているものの、残念ながら効果は殆ど上がっていない状態だといいます。そのため養殖物の需要も高く、一時期は盛んに行われたのですが、現在では他国産に押されて漁獲高も減っています。中国、韓国で養殖されているのは日本原産のエゾアワビで、養殖技術も日本で開発されたものなのですが、環境構築などの点でコストが嵩み、後塵を拝しているのです。

その結果、現在ではアワビ国内需要の2/3近くを、輸入で賄っている状態だといいます。(『アワビ類漁業と資源管理・増殖の現状』「アワビ類の資源生態に基づく資源管理・増殖」 水産研究・教育機構 増養殖研究所 2018.2)

輸入物と天然物の見分け方

輸入の養殖物が多く入荷するようになった結果、現在ではスーパーマーケットの店頭でも活けのアワビを見かける機会は多くなっています。専門的な鮮魚店で見かける天然物と比べるとサイズは小さめで価格も非常に安くなっているので、養殖物だというのは素人目にもわかりやすいのですが、それ以上に明快な天然と洋食の判別ポイントがあります。それは、殻の色。

アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?殻がきれいな養殖物のアワビ(提供:PhotoAC)

養殖物、とくに最近多い韓国からの輸入物は、殻がきれいな緑色をしていることが多くなっています。これは「グリーンマーク」と呼ばれ、目利きのための重要なポイントになっています。天然のアワビは様々な藻類を食べるのに対して、養殖物は少ない種類の藻類だけを飼料として与えられるため、藻類の色が殻に出やすいのだと言われています。

また養殖物は、海面に設置された筏で養殖されるため、殻表面に藻などの付着物がつきにくいという特徴もあるそうです。

アワビの天然物・養殖物の見分け方 「殻の色」を見れば一目瞭然?付着物の多い天然物のアワビ(提供:PhotoAC)

柔らかく味が薄いと言われることがある一方で、食べやすいともいわれる養殖物のアワビ。味の優劣というよりも、用途や好みによって使い分けるのが良く、そのためにも目利きできるようになっておいて損はないでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>