夏の海岸線は向かい風が吹きやすい? 「海陸風」の正体と原因を解説

夏の海岸線は向かい風が吹きやすい? 「海陸風」の正体と原因を解説

夏の日中、海岸では強い風が吹くことがあります。暑い季節にはありがたいともいえますが、釣りには少々厄介な向かい風となることが多いです。でもこの風、成因を理解していれば比較的簡単に予測することができます。今回はこの風、「海陸風」の正体に迫りました。

リアルタイム天気&風波情報

(アイキャッチ画像提供:pixabay)

アバター画像 TSURINEWS編集部

お役立ち その他

夏の気圧配置

今年は久々によく雨の降る梅雨になりましたが、7月も終わりになれば夏本番を迎えるのが例年のパターンです。天気図を見ると、日本列島は広く太平洋高気圧に覆われ、等圧線の間隔は広く、おおよそ強い風の吹くような気圧配置ではなくなります。

とはいえ、実際フィールドに出てみると風が強く、釣りにくかったなんて経験をしたことはありませんか?最近のピンポイント天気予報ならある程度正確に予報してくれるかもしれませんが、風の吹く原理を知っていれば、天気予報を見なくても対策が練れるというものです。今回は天気図からは読めない局地的な風、「海陸風(かいりくふう)」について紹介します。

海陸風

海陸風とは、天気のいい日に海岸線付近で吹く風のことで、日中海から陸に向かって吹くものを「海風」、夜間に陸から海に向かって吹くものを「陸風」と呼びます。一般的に夏場のよく晴れた日は海風、冬場のよく晴れた日は陸風が強くなります。風速は、海風で4~7m/s、陸風で3~4m/sと強風とまではいきませんが、向かい風となる海風が強いと少々釣りにくい場面も出てくるでしょう。

海陸風の成因

この風の成因は、海上と陸上の比熱の違いにあります。

同じ量のエネルギーを太陽から受けた場合、比熱の違いにより地面の温度は海面より高くなるのです。「水は温めにくく冷めにくい、陸は温めやすく冷めやすい」という性質のことです。

また、海面は熱を吸収しても熱伝導によって拡散されたり、海水の上下混合もあり、温度の日変化は海面が穏やかな時で2度以下、平均では0.5°以下と言われています。

地表面付近の大気の気温は、地表面温度で決まることから、日中は陸上で高く、海上で低い状態となります。つまり、空気密度の小さくなる陸上は低気圧、大きくなる海上は高気圧という関係が出来上がります。そして、両者の境となる海岸線は特に気圧傾度が大きくなり、強い風が吹くというわけです。

反対に夜間は、急速に冷やされる地面に対してなかなか冷めない海面が日中とは逆の気圧場を形成し、陸風が発生します。ちなみに陸風が冬場の方が強く吹くのは、冬場の方が放射冷却などにより陸上の温度が冷え、より高気圧性が高まるためです。

夏の海岸線は向かい風が吹きやすい? 「海陸風」の正体と原因を解説海陸風のイメージ(作図:TSURINEWS関西編集部・中西)

なお、海上と地上の気温が逆転するのに合わせて、海風は日の出後3〜4時間、陸風は日没後1~2時間で始まると言われています。

風向きが分かれば対応は簡単

以上のことから、夏場の日中海を向いて釣りをすると向かい風になりやすいことが分かります。重たい仕掛けを投げる釣りならそう問題にはならないかもしれませんが、ライトリグの釣りではポイント選びに注意が必要です。地図をみて、おおよそ背中側に海がくるような場所なら快適に釣れるでしょう。たとえば、海岸線と平行に伸びる漁港の波止から港内向きを釣るとか、沖一文字から陸方向を釣るといった具合です。

逆に夕暮れ時などは、多少向かい風が強くても日が沈んで1時間もすれば収まることを知っていれば、気にせずサオを出すことができます。

<中西/TSURINEWS関西編集部>