コロナで大打撃を受けた屋形船業界のその後 協会がガイドラインを作成

コロナで大打撃を受けた屋形船業界のその後 協会がガイドラインを作成

新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている屋形船業界が予防のガイドラインを策定・発表しました。策定までの経緯や今後の展望を「一般社団法人 日本旅客船協会」へ取材しました。

(アイキャッチ画像提供:photoAC)

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屋形船でのコロナ予防ガイドライン策定

緊急事態宣言は解除されましたが、現状客足は戻っていない屋形船業界。そのような背景を受け、新型コロナウイルスへの予防対策をまとめたガイドラインが2020年6月11日に策定、発表されました。

ガイドラインには「乗客」と「従業員」別に感染防止策をどのようにおこなっていくのかが示されています。

『屋形船における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』

乗客に対する感染防止対策

乗客に対する感染防止対策については基本的に「アルコール消毒の徹底」「手洗いと消毒、咳エチケットの徹底」「船内での密集状況の会話を避ける」「船内換気の徹底」「船内清掃の徹底」などについて細かく記載されています。

具体的な対策例としては、検温を可能な限り実施し発熱等の症状がある人は乗船を自粛してもらう、乗船前の手指消毒に協力してもらう、乗客間は最低1mの距離を取る、などが挙げられます。

従業員に対する感染防止対策

乗客同様、従業員の感染防止策もガイドラインで示されています。

基本的に従業員の健康管理・通勤規則・勤務中の感染防止策・休憩・休息中のルールなどがガイドライン化されており、「出勤前又は乗船前に、発熱や新型コロナウイルス感染症が疑われる症状の有無を確認、体調の思わしくない者には各種休暇制度の取得を奨励し、自宅待機の上、経過観察を行う」としています。

コロナで大打撃を受けた屋形船業界のその後 協会がガイドラインを作成多くの屋形船で賑わっていた東京湾(出典:PhotoAC)

詳細を「日本旅客船協会」に取材

それでは、コロナ予防対策ガイドラインはどのような経緯で策定されたのでしょうか。ガイドライン策定までのとりまとめをおこなった「日本旅客船協会」に、その裏側を取材しました。

策定の背景

まず、ガイドライン策定の背景を聞いてみました。

日本旅客船協会によると、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和2年3月28日(令和2年5月25日変更)」の決定がガイドラインの作成のきっかけとなったとのこと。

同協会は旅客船(観光船や鉄道など)向けのガイドラインを5月中旬に発表しており、その後「屋形船」に特化したガイドライン作成を開始、6月11日に発表しました。

作成方法

次にガイドライン作成過程をご紹介。

ガイドラインを内閣官房へ提出する必要があったため、まず原案を「国土交通省 海事局」が作成。その後、原案を基に旅客船協会が取りまとめ役として、「屋形船東京都協同組合」「東京湾屋形船組合」「江戸屋形船組合」の現場3団体から要望や意見を吸い上げていき、屋形船に特化したガイドラインを作成していったとのこと。

屋形船は「船」とはいえ、客間の距離などは飲食業に近く、ガイドラインも飲食店やカラオケ店のものをベースに作成していったと言います。

苦労した点

それではガイドライン作成までのハードルにはどのようなものがあったのでしょうか。

とりまとめ役の日本旅客船協会は「いかに現場が実現できる内容にするか」が最も苦労した点だと言います。新型コロナ発生からソーシャルディスタンスが取りざたされていますが、スペースが限られている屋形船ではなかなか実現のハードルは高いようです。さらに屋形船によってはスタッフの数が限られているため、換気や検温などもどこまで対応できるのか難しいところでもあります。

そのため、現場の屋形船3組合とは何度も意見の擦り合わせを行ったうえで、ようやくガイドラインの策定までたどり着いたそうです。

今後の展望

日本旅客船協会によると、国内外の感染予防対策の動向を見ながら今後ガイドライン内容の強化・修正などの見直しの可能性は十分あるとのこと。

また、今回のガイドライン初版はある程度の「総論」をとりまとめたものになるため、小規模屋形船店などの少数意見をどのように取り入れていくのかもキーポイントとなりそうです。

取材協力:一般社団法人 日本旅客船協会

<田口/TSURINEWS編集部>