新型コロナウイルスの流行を受け、キンメ釣りの聖地といえる伊豆賀茂地区の遊漁船の一時休業が決まった。その経緯を伊豆漁協に聞いた。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部・大高)
キンメ聖地で約100軒の船宿が休業
下田や南伊豆、稲取や西伊豆などは、熱烈なファンの多いキンメ釣りの聖地といえるエリアだが、4月10日に賀茂船主組合連絡協議会の要請を受けて以下のように一時休業することが決定した。
▽期間=4月13日~24日まで(感染状況を見極め延長の可能性あり)
▽休業内容=遊漁船、渡船業すべての営業
100軒近くの遊漁船が休業することとなり、各種SNSなどでは肩を落とすファンがいる一方で、遊漁船としての規範を示したと評価する声もあった。
伊豆漁協に聞いた経緯と背景
同連絡協議会が所属する伊豆漁協に、今回の要請の背景について電話取材したところ回答いただいた。それによると主な休業の理由は3つあるとのこと。
1、同松崎町、西伊豆町、南伊豆町から感染者が出た事情を踏まえて
問い合わせたところ「狭い地域なので致し方ない」と言うが、これについては首都圏の感染者数と人口密度を比較すれば早急な対応だったとも言える。
2、県内外から多くの利用者が訪れる
「県外から多くの人が来てくれることは本来ありがたいことなのですが…」と話したが、先述した通り、釣り人にとってはキンメの聖地としても知られるだけでなく、マダイやイサキなどこれからのシーズン特に多くの釣り人の利用が予想される。豊富な魚種だけでなく、美しいロケーションを求めて県外からも多くの釣り人が訪れる人気エリアならではの苦悩がある。
3、船室内の密閉、密室、密集を防ぐ
「キャビンを使用しなければいいのでは」という意見もあるだろうが、キンメ釣りなどでは沖を目指して3時間以上航行することがザラ。波の高い海を3時間以上船室外で過ごすのは、急な高波による落水などの危険性が高く現実的ではない。
期間策定の背景
都市部の外出要請ではゴールデンウイーク明けの5月6日までを一定期間として示していることが多いが、本休業要請は4月24日まで。
この点については、「遊漁船に限らず5月の連休は同地の産業では重要な時期という各方面からの意見を聞いたうえで、22日までとの意見もあったが、24日までとなった。」とのこと。
遊漁船だけではなく、漁協直売所などの意見も反映させたうえ各方面との話し合いを重ねて、経済に与える影響も考慮した結果【感染状況を考慮して延長することがある】との前提のもと、この期間に決まった。これ以上延長しないことを望むが、判断が待たれるところだ。
休業中は職漁活動を
つらいのは釣り人だけでなく、釣り人をエスコートしてくれる船長にとってもこの休業申請は非常に厳しい。そこで漁協としては遊漁について休業申請しているが、職漁については制限していない。「同地の遊漁船の大半は漁も行っているので、期間中はそちらでなんとか頑張っていただきたい」とのこと。
しかし、水産業を取り巻く実情は厳しい。というのも、首都圏の飲食店の営業自粛の影響で卸価格が激減し漁師たちは頭を抱えている。「乗組員の多い大型船は出船するだけで赤字になることもある」とのことで、問い合わせた当日にも「話し合いの結果、出船しない大型船もありました」と言う。
幸い、遊漁船にとっては「10~19t級の遊漁船であればなんとか漁になると思う」とのことだ。
釣り人に求められること
感染をこれ以上拡大させないためにも、釣り人は冷静な判断と、節度ある行動が求められている。
伊豆の美しい海で、激ウマキンメやイサキ、マダイなど数々の魚と遊ぶ日が来ることをじっと待ちたい。
※最新情報については、公式HPを確認もしくは、直接各施設へお問い合わせください
<TSURINEWS編集部・大高>
出船場所:下田、南伊豆、稲取、西伊豆