私には多くの弟子たちや盟友の方々がいるが、恩師と呼べる先輩方も少なくない。その中でも故人となられたが日研熊本支部長で県へら鮒釣り連合会の会長の木下武夫先生は公私にわたって大変お世話になった方であります。
恩師にマル秘作戦を決行!
その先生が大病を患われて療養中のこと、当然外出も大好きなヘラブナ釣りももちろん禁止だった。
お見舞いに行く度に
「ヘラブナ釣りやりたいねえ、ヘラブナを釣ってみたいねえ、早く良くなりたいよう」
と子どものように言われる先生の切なる願い叶えたいのは山々だが奥様の
「ダメですよ」の優しいお言葉が天使の声のように……。
そこで〝騙しの湖次郎〟
ここは一肌脱いでの一計を案じるはポカポカ陽気のある日、春休みで合志川にヘラブナ釣りに誘った高校生の弟子の山崎、山口、栗林、高田兄弟5人に言い含めるマル秘作戦は
『お昼過ぎに木下先生を連れてくるが、それまでにヘラブナの入れ食いができるように寄せて寄せて決して釣るな』
『陽気も良いので先生を1時間ほどドライブにお借りします』
「1時間ですよ」と奥様の許可をもらってご自宅から25分で合志川へ着く、帰りも同じとすれば余裕は10分だけだ。
着いたところで
『先生、子どもたちがヘラブナを釣ってますよ』
「ほぉ、ここはよく釣れるのかな?」
『釣ってみませんか、ちょっとだけ』
「そんな時間がないだろ、見てるだけでいいよ」
『彼らは私の弟子です。おーい用意はいいか』
「OKです!」
山口の自信気な顔を見て
『先生ちょっとだけサオを握ってみませんか』
「うーんそれじゃぁ」
と先生が山口の釣座に座るや全員サオを休めて数秒、ウキはツンと動く「ほう釣れたぞ、釣れたよ」その時の先生の笑顔は合志川で釣る度に思い出す。
それから数尾立て続けに尺(約30cm)前後のヘラブナがサオを絞る~10分の僅かな時間だったが。
「十分だよ、しかしよく釣れるねここは」
ちょうど1時間で帰ることができ、何食わぬ顔で
『奥様、先生をお返しします』
「ドライブはどうでした」
「良い型が釣~……じゃない、良い景色だったよ」
後日回復されてヘラブナ釣りができるようになった最初の言葉
「あそこへ行こう」
一日のんびりヘラブナ釣りを楽しんで夕日が沈むのを見て
「あれが朝日だったら良いのになぁ」だって…(江津湖朝友会・合志川編より)。
合志川で釣り納め
今も変わらずよく釣れる合志川、12月23日に釣り納め。
紙面的には釣り始めの釣行は盟友の福島さん、直弟子の日高さん、本ママ。
サオ出しは午前10時、私の仕掛けは相変わらず10尺にミチイトはザイト2号、ハリス1号、ハリはセッサ9号の大仕掛けで
『木っ端相手じゃ身が持たぬ、大型数尾でOK牧場だ』
普通の仕掛けの福島さんと日高さんは開始早々に中型小型の入れ食いが始まって
「久しぶりにヘラブナの入れ食い、これは楽しいですね」と福島さん。
「数釣りは任せてください」と日高さんもいきなり〝爆釣〟だが
『9号を食ってくる奴はおらんのかい』と30分はアタリはあれど食いはなしの状況だ。
何しろ魚影の濃さは天下一品の合志川、冬の季節でも元気もんのヘラブナ入るはずだと余裕綽々でエサ(『底餌クロレラ/IKKEI』をドロドロ状態にして『蒼天/IKKEI』を加えてボソタッチに仕上げる)を打つ。
上流から風が少し吹いて川面にさざ波が立つ、流れも少し速くなったので「おわせ釣り」に変更してエサをやや底着け気味にするとエサを追ってヘラブナが「ツン」とアタリを出してくれた。
思惑とは少し小さいが9寸がサオを絞ってくれた。
以後、同じサイズがぼちぼち釣れだしたが福島さんと日高さんは2尾一緒に釣れるほどに忙しくなっていた。
恋は水色♪の正午を告げる植木町のチャイムが鳴った。
ここでいったん釣りをやめて日だまりで楽しくオニギリでお昼をとって午後1時に再び開始だ。
合志川のヘラブナ♪もうどうにも止まらない~次々にサオを絞る場面はもうタマリマセブン
『まだ釣りますか』
「ぼちぼちやめにします」
「こんなに釣れるのこの時期に、でも疲れました」ということで3時、納め釣りは終了した。
師走です 釣り疲れです 納めます
<週刊つりニュース西部版 APC・一美湖次郎/TSURINEWS編>
九州道(高速)植木ICから国道3号線で山鹿方面、植木温泉入口を右折。