日中の暑さが和らいでくると、ハゼの動きが気になってくる。川風に吹かれながらのんびりと楽しめ、道具もシンプルで気軽に楽しめる。足場も比較的いい場所が多いので、幅広い年齢層で楽しめるのも魅力だ。今回はそんなハゼの好釣り場を、和歌山の紀北~中紀から3カ所を紹介しよう。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・牧野博)
ハゼの付き場は河口域
ハゼは汽水域を好む魚であり、川の河口域に好ポイントが点在する。ハゼの付き場のキーワードは、大きな河川、干潟の存在、潮汐の影響である。
例えば関東で、東京都内や千葉県を考えると、多摩川や荒川、江戸川、墨田川などが流れ込み、東京湾の地先の海自体が干潟の浅海となっていて巨大な汽水域が形成されている。そのため、いたるところにハゼのポイントが存在する。実際に船宿でもハゼはこの時期のメインターゲットであり、陸っぱりはもちろん、貸ボートで狙うアングラーも非常に多い。
江戸和竿の世界でマブナザオと並んでハゼの中通しザオが数多く手掛けられているのがその証しで、その調子をカーボンロッドで表現した製品を作るメーカーもあるなど、ハゼ釣りに対する愛着度や釣技は全国的にみて最も高い地域といえるだろう。
そして関西にもハゼ釣り場は多く存在する。大阪湾に流れ込む淀川や武庫川の河口域は古くから親しまれているが、平野部の少ない紀伊半島でも、よく見ると大きな河川があり、ハゼの付き場になるポイントはたくさん存在している。私はキス釣りの傍ら、そんな釣り場を足で探っている。
今回は紀北から中紀までに点在するハゼスポットを探索した状況をレポートする。過去の釣況なども踏まえながら3か所にスポットをあててみたい。
1、紀ノ川河口域
和歌山県下では最もよく知られた釣り場で、河口域も広く長いので様々なポイントが存在する。近年、自動車専用道路の整備が進み、大阪のアングラーもよく釣行されているようだ。
特に入りやすい場所としては、左岸のせせらぎ公園(駐車スペースから徒歩0分)、右岸の市民スポーツ広場下(駐車スペースあり、釣り場が広い)、そのやや上流側の南海電車鉄橋上流側一帯などが代表的である。ここでは右岸の南海電車鉄橋上流側での釣況の一例を紹介する。
過去の実績
平成29年10月1日、紀ノ川右岸、南海電車の鉄橋上流側に入ったのが午前11時過ぎ、周辺には、ぽつぽつとハゼ狙いのアングラーが釣りをしていた。潮は干潮からの上げ潮で、釣りやすいコンディションだった。
この日は淡水用の和竿を継ぎ、オモリは2号のミニL天を使用。1投目からハゼが元気に躍り出てきた。サオでためていると、じんわりと魚が取り込める和竿の面白さを味わいながら約3時間の釣りでハゼは50匹(最長で15cm)。手のひらクラスのカイズが1匹交じった。
紀ノ川の河口部も護岸になっているところが多いが、この付近は自然の河原が残っている。
交通
電車利用なら南海和歌山市駅からバスまたはタクシー(バス停は東福島)。自家用車(大阪方面から)は、第2阪和国道を大谷ランプで下り、北島橋方面へ。左岸のせせらぎ公園は、阪和道の和歌山北ICを下り、右折して県道を西進、六十谷橋を渡ってさらに西進するとせせらぎ公園が見えてくる。道路を下りたところに駐車場あり、ポイントはすぐ下一帯である。
紀の川右岸・南海鉄橋上流
2、有田川河口域
有田川の河口部はキスの好ポイントで、数釣りだけでなく、夜釣りで良型が出るのはキャスターにもよく知られている。ただし護岸の部分が多く、河原に下りられる場所が少ない。
私も実釣経験が全くないので悩んでいたのだが、地元の大学が下流域の干潟で生物の観察会を実施したという情報をつかんだ。そのときの写真ではヨシの原や泥地の干潟の様子、シオマネキなどの甲殻類が紹介されていた。
「これはいける」と直感し、間髪をおかず9月1日に釣行した。場所は左岸、安諦橋(あでばし)の下流側。河原に下りられる狭い道がある。注意して道を下り、スペースを見つけて停めた(一応、車を止められる場所であることを近くの商店の方に確認)。
尚、ポイントの近くに市立病院があり、緊急自動車が通るので堤防上の道路に駐車するのは絶対にやめてほしい。
9月1日の釣況
河原に下りると、小さめのゴロタ石混じりの砂泥底。干潮時からの上げ潮回りのみの釣り場といえるが、かなり広さもある。当日は午後3時ごろからミャク釣りを開始。やや濁っていたが、12cm前後のハゼがシグナルを見せる。小石が多い底で浅いためか、元気のいいハゼが多く、横走りしたりして痛快である。あまりずるずると底を引くよりも、オモリを軽く小突きながら少しずつ仕掛けを動かしてアピールする釣り方が有効だった。
この日は正味1時間半の釣りでハゼは最長15cmまでを34匹。デキハゼが少なく、比較的型が揃った。
外道にはキビレの子などもきたので、安定して釣れる場所であると思う、足で探り歩くとかなり数が出るだろう。尚、潮が満ちてくると戻れなくなるので注意が必要である。
交通
電車利用ならJRきのくに線箕島駅から徒歩(箕島駅に停車する特急は多く便利)。自家用車(大阪方面から)は、有田ICを下り、R42号で和歌山、有田方面へ。古江見(こえみ)の分岐点で右の県道に入ると間もなく安諦橋(あでばし)に出る。橋を過ぎてすぐに河原に下りられる狭い道があり、釣り場が見えてくる。
有田川左岸・安諦橋下流
3、日高川河口左岸の干潟
日高川河口左岸には、王子川という小さな河川の河口部とつながる形で大規模な干潟が形成されている。ここにはハイビスカスと同属の植物、ハマボウの大群落があり、御坊市の天然記念物に指定されていて盛夏には黄色い花が目を楽しませてくれる。
私がこの釣り場を知るきっかけになったのは、日高川河口へのキス釣行である。右手に干潟をみながらポイントに向かうときに、たまたま車を止めて下りてみると、ゴロタ石混じりの砂泥底であり、カニ類や、トビハゼなどがいた。
キス釣りの後、少しイシゴカイが余っていたので王子川の河口寄りでミャク釣りを試したところ、ハゼが連釣。
ポイントであることが確認できた。若干フグが多いのが難点であるが、ハゼ以外にもキビレやセイゴ、さらにメッキが鋭い魚信を見せ、河口の干潟でありながら黒潮の影響も強い面白いポイントであるといえそうだった。
9月7日の釣況
9月7日は台風15号の存在を気にしながら高速を南下し、現地に入ったのが午後3時半。日高港のEEパークやSioトープが真近にある干潟の南端(王子川河口)でミャク釣り。愛竿のサクラ特選水郷小継4.5mを延ばし、ミチイトはフロロ1号をサオ1本分とった。また、今回は中古であるが、関東流のハゼテンビンが入手できたので、それにナス型オモリ2号をセットして探り始める。
底はゴロタ石混じりの砂泥底である。いきなりフグの歓迎を受け、ハリスの消耗が激しい。しかしオモリが見え始めるようなニアポイントにハゼがいることが分かった。そして、12~13cmが連続して姿を見せ、忙しくなってきた。
ポイント自体は広くないが、捨て石や石積みの周り、小さな流木など変化があり、さらに王子川の河口がすぐ近くで、上げ潮回りでは川のような潮の動きがあって、魚が回ってくるのであろう。魚影はかなり濃いようで約1時間半でハゼは20匹を超えた。
そこで少しポイントを変更。釣り場の南端にあるコンクリートの護岸に上がって仕掛けを入れてみたところ、フグやキビレも多かったが、17~18cmの良型がサオを絞り込んだ。落ちハゼでもなかなかこない迫力のある魚体に納得してサオをたたむ。この日は2時間強で、ハゼ18cmまでを26匹の釣果。デキハゼは少なく、もう釣期に入ったと見ていいと思う。
当日は短時間の釣行であったが、ハゼやキビレのほかにメッキも多いポイントでもある。少し根掛かりが多いが、上げ潮回りで水位の高いときであれば、ルアーで狙うことができるのではないだろうか。ストラクチャーが多く、面白い釣りができそうな気がする。
当日、遠目に見る煙樹が浜にはすでにうねりが来ていた。日高川河口部は外洋に面した干潟であり、高波やうねりに弱いので海況には注意が必要である。
交通
電車利用ならJRきのくに線御坊駅からタクシー(御坊駅はすべての特急が停車)御坊駅で乗り換え、紀州鉄道西御坊駅から行くことも可能。自家用車(大阪方面から)は、御坊ICを下り、R42号に出て日高港を目指す。日高港の入り口が王子川の河口で、その周辺がポイント(公園Sioトープに若干の駐車スペースあり)。
王子川河口
今回紹介した3つのポイント以外に、まだまだハゼのいそうな場所があると思う。釣行できれば、また紹介していきたい。
<牧野博/TSURINEWS・WEBライター>