ワカサギの産地として非常に知名度の高い諏訪湖。しかし数年前に原因不明の大量死が発生して以降、諏訪湖のワカサギは漁獲が不安定な状態が続いています。
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諏訪湖でワカサギ漁限定解禁
日本有数のワカサギ産地として知られる長野県諏訪湖。諏訪湖漁業協同組合は8月9日、盆前の需要期に合わせ、諏訪湖のワカサギ漁を1時間限定で解禁しました。
ワカサギ漁は例年9月初旬に解禁されるのですが、諏訪大社のお祭りであるお舟祭りが行われる8月頭と、お盆の直前には「試し捕り」として、投網漁を限定的に解禁しています。今年は漁師11人が出漁して投網を打ち、31kgのワカサギを水揚げしました。
漁獲されたワカサギの体長は6cmほどで昨年平均より1cmほど大きく、ふっくらと太っていました。体重も昨年同期の約3倍ほどとなっており、脂ののりも良いとのことです。
市場に持ち込んだ漁師たちは「たった1時間の操業時間の割にはそれなりに捕れた」とポジティブに語る一方、「目方(漁獲量)のわりに数はいない」と渋めの感想もあったということです。(『生育良いが親魚の確保最優先 諏訪湖のワカサギ試し捕り』長野日報 2021.8.10)
ワカサギの大量死
実は諏訪湖ではここ数年、夏に発生する「ワカサギの大量死」にたびたび悩まされてきました。これについては湖底に発生する貧酸素水塊や、プランクトンの異常減少など様々な理由が挙げられているのですが、はっきりしたことはわかっていません。
漁獲量も減少しており、かつては年間200tを超える漁獲量を誇ったそうなのですが、ここ数年はその10分の1程度にとどまっています。今回の試験操業で捕れたワカサギが生育良好だったのは、今年生育した個体数が少なく、1匹当たりの餌の量が増えたためと考えられるのです。
漁協組合長は「来春の採卵に向け、水揚げよりも親魚の確保が最優先」とし、生育の良さにも慎重な言い回しをしたそうです。
諏訪湖のワカサギは採卵用
これはちょっと意外なことなのですが、現在諏訪湖のワカサギは「食用」ではなく「採卵用」としての需要が主となっています。漁協にとって最大の収入はワカサギの水揚げではなく、親の生体から採られた放流用卵の出荷によるものなのです。
ワカサギは釣りの対象や食用として各地で人気が高くなっています。しかし彼らは山上湖などの閉鎖された水域に多く生息しており、釣り客や漁により容易に数を減らしてしまいます。それを補充するため、盛んに放流が行われているのです。
諏訪湖のワカサギから取られた卵は現在、全国約140カ所の湖沼へ放流されているといいます。なお、これに関しては「資源を守るためには必要な行為であるが、ワカサギの遺伝子多様性を損なうことにつながる」という指摘も多くなっています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>