筑後川の初夏の風物詩「エツ漁」が解禁 マイナー魚だけどとても美味

筑後川の初夏の風物詩「エツ漁」が解禁 マイナー魚だけどとても美味

有明海には日本でここにしかいないユニークな食用魚介がいくつも存在していますが、そのひとつ「エツ」の漁が5月に解禁されました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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筑後川の初夏の風物詩・エツ漁

福岡県中部を貫流し有明海に注ぐ九州一の大河、筑後川。ここで、毎年初夏の短い期間のみ行われる「エツ漁」が、5月1日に解禁されました。

筑後川の初夏の風物詩「エツ漁」が解禁 マイナー魚だけどとても美味漁獲されたばかりのエツ(提供:小宮春平)

解禁に先立ち、筑後川の下流部・久留米市城島町にあるエツ大師堂では、エツの大漁を祈願する神事が行われました。神事には漁協や行政の関係者などが出席したそうです。

例年は神事の後に期内最初の漁が行われますが、本年1日は強風で筑後川が荒れていたため、漁は取りやめとなったそうです。エツ漁は7月20日までの2ヶ月半ほど行われます。(『筑後川の初夏の風物詩 エツ漁が解禁 豊漁願う 有明海の一部だけに生息』テレビ西日本 2021.5.1)

有明海にしかいないエツ

エツという魚を知っている人は、九州以外ではほとんどいないかもしれません。ニシン目カタクチイワシ科に属する魚で、煮干しなどで高い需要のあるカタクチイワシと共通する特徴を持っていますが、15cm前後にしかならないカタクチイワシと比べ、エツは40cmほどにも成長します。

筑後川の初夏の風物詩「エツ漁」が解禁 マイナー魚だけどとても美味独特なシルエットの魚(提供:小宮春平)

エツは頭が小さく、頭部よりの胴体が一番体高があり、尾に向かうにつれて細くなっていくナイフのような形状をしています。その独特なシルエットから「弘法大師が筑後川を渡してもらった際、船頭へのお礼にと川にヨシの葉を投げいれると、たちまちそれがエツになった」という伝説が残っています。前記の「エツ大師堂」もその伝説にちなんで建てられたものです。

エツは国内では有明海の一部だけに生息しています。普段は有明海で暮らし、この時期、産卵のため筑後川を上ります。そこに網を張って漁獲するのです。かつては川でのみ漁が行われていましたが、近年は海を回遊する稚魚を獲ることもあるようです。

エツは美味しい

エツは知名度こそ低いですが、カタクチイワシの仲間だけあって身の味が良く、地元では人気の食用魚です。いろいろな調理法で食べられており、刺身や塩焼きにすると脂の乗った身の美味しさが、煮付けにすると身の味の濃さが楽しめます。

一方でニシン目に共通する「小骨が多い」という特徴も持っており、調理の際は骨切りしたり、薄くスライスすることが必要になります。骨自体は柔らかく、からりと揚げるとほとんど気になりません。

筑後川の初夏の風物詩「エツ漁」が解禁 マイナー魚だけどとても美味骨切りして調理すると骨は気にならない(提供:小宮春平)

筑後川では、採れたてのエツをその場で食べさせる屋形船のサービスも行われており、人気となっています。お隣中国にも似た魚が生息しており、かなりの高値で取引されている人気の食用魚だそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>