意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?

春に旬を迎えるとされる「桜鯛」と、鯛とは全く関係ない「サクラダイ」。どちらも日本の国花「桜」を名前に冠していますが、扱われ方には大きな差があります。

(アイキャッチ画像出典:TSURINEWS編集部)

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「桜鯛」はマダイのシーズン名

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?まさに桜色(提供:PhoteAC)

春本番の陽気の日が続き、全国各地から季節の便りが届くようになりました。東京を皮切りに桜の開花も始まり、桜前線が日本を北上しています。

日本人が大好きな桜。そのピンクの花びらに魅了され、人々は古くから様々なものに桜の名前を冠してきました。もちろん魚にも桜の名前を冠するものがおり、その代表と言えるのが「桜鯛」です。

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?桜鯛の美しい桜色(提供:週刊つりニュース編集部)

桜鯛とは、サクラの季節である3~5月に漁獲されるマダイのこと。初夏の産卵を前に抱卵しているこの時期はマダイの「旬」のひとつとされており、特別な名前で呼ばれています。また、産卵期のマダイのオスは顔のピンク色がより一層鮮やかになり、花びらを散らしたような白い斑点が出るため、これも「桜鯛」とよばれる理由のひとつです。

もとよりおめでたい魚であるマダイに、おめでたいイメージの強い「桜」の名前がつくことで、高いブランド力のある言葉になっています。メディアなどでも「マダイの旬は春、桜の時期の『桜鯛』」と書かれているのをよく目にします。

「サクラダイ」は鯛ではなくハタ

一方で、ブランドネームではなく、正式和名が「サクラダイ」の魚も存在しています。

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?サクラダイの成魚(提供:野食ハンマープライス)

サクラダイはは15cmほどのサイズの小魚で、幼魚のときは全てメスで地味なオレンジ色をしていますが、成魚になると性転換してオスになり、同時に鮮やかな赤色へと変化します。この体色からサクラダイと名付けられましたが、実際はハタの仲間で、いわゆる「あやかり鯛」のひとつです。

サクラダイとマダイは科も異なる全く別物の魚たちですが、同じような水深に棲息しており食性も近いため、釣りではよく一緒に釣れてきます。しかしおめでたいブランド魚であるマダイに対して、小魚で群れているサクラダイはエサ取りのひとつとしか認識されておらず、全く箸にも棒にもかからない存在です。

桜鯛とサクラダイどっちが美味?

しかし、実は「桜鯛」についてはある種「名前負け」しているといえる側面があります。というのが、上述したとおり桜鯛は抱卵している個体が多いのですが、産卵が近くなったマダイは卵巣が肥大しており、餌があまり食べられなくなります。さらに栄養をそちらに取られてしまうため、筋肉自体は痩せてしまい、身の味が落ちてしまっているのです。そのため、漁師の中には「桜鯛は本当のマダイの旬ではない」という人もいます。

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?煮付けが美味しいサクラダイ(提供:野食ハンマープライス)

一方でサクラダイですが、こちらは小魚ながらも、美味な種の多いハタの一種。特に冬の時期、アマダイ釣りの外道で釣れてくるものは爽やかな白身ながら皮目に脂が乗っており、皮付きの焼霜造り(皮だけを焼いて造る刺身)にすると食感の良さも相まって美味しく食べられます。たくさん釣れるので、鱗と内臓だけをとって煮付けにするのも良いでしょう。

ブランドや名前に惑わされないで「正しい知識」を持つのが大切

意外と知らない「桜鯛」と「サクラダイ」の違い 美味しいのはどっち?祝い膳にもよく登場するマダイ(提供:PhoteAC)

実際のところ、桜鯛の時期にも美味しいマダイは居ないわけではないのですが、しかし「桜鯛こそが旬」という考え方には、脂乗りがいい魚が好きな関東の人間としては強い違和感を感じます。それでも全国的にこれだけ桜鯛という名前が浸透しているのは、結局日本人がブランド名に弱く、実際に味を知る前に名前で判断してしまうからなのだと思います。

サクラダイもまずいからと言って捨ててしまう釣り人はたくさんいますが、釣り場で「食べたことはあるの?」と聞いてみると、多くの場合は「ない」という返事がかえってきます。一度食べてみると少しは評価も変わると思うのですが、「まずい外道」という先入観があると、どうしても食指が動かなくなってしまうのかもしれません。

日本にはこの「桜鯛」と「サクラダイ」のような事例が沢山あると感じています。自分の舌で判断することを放棄し、世間の評価に踊らされるだけだと損をしてしまうことがあるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>