沖縄県で大繁殖している外来生物「プレコ(プレコストムス)」。そもそもはどんな理由・どんな経緯で日本に持ち込まれたのでしょう。「プレコは何しに日本へ?」をお届けします。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
日本に持ち込まれた理由
沖縄県で大繁殖してしまっているプレコですが、日本に持ち込まれた理由は主に観賞用です。
日本の高度経済成長期に空前の熱帯魚ブームが始まり、世界中から様々な魚類が輸入されました。
前述のとおり、プレコは種類によっては非常に大型になるため、いくつかの種が、飼育できなくなったなどの理由で河川に放流され、そのまま定着・繁殖してしまっているのです。
なぜ本州にはいないのか
本州でも様々な外来種が繁殖してしまっていますが、プレコは確認されていません。
この理由としては、プレコがもともと南米などの熱帯に生息していたためです。
プレコが生息できるのは水温が20度以上の水域に限られるため、本州での寒い冬は越えられないというわけです。沖縄県は真冬でも気温や水温が20度前後を維持しているため、プレコは問題なく越冬できてしまうのです。
しかし近年、関東を流れる多摩川でもプレコが確認されており、温排水が流れ込むような一部地域では越冬できているという意見もあります。
大繁殖の理由は天敵不在
なぜ沖縄県で繁殖してしまっているのか。
前述のとおり、自然環境がマッチしていたことも大きな理由ですが、もうひとつ大きな理由があります。
それはプレコが恐れる外敵がいないということ。
本来、南米に生息しているプレコにとっての天敵はワニなどの大型の肉食動物です。
硬いヨロイをものともしないワニにとっては、プレコは絶好の食糧というわけです。
しかし、日本にはもちろんワニは生息していません。
自然界にプレコを食べて減らしてくれる生物が存在していないため、何も気にすることなく、どんどん増えてしまうのです。
また、プレコは自分が産んだ卵を守る習性を持っています。
強靭なヨロイのような鱗を持ってるプレコに守られては、ちょっとやそっとでは外敵から卵が食べられることがないわけです。
これにより卵の多くは問題なくふ化し、数をどんどん増やしていけるのです。
実は雑食性
草食のイメージが強いプレコですが、食性は意外にも雑食です。水槽で飼育されているプレコは、コケを食べてくれるため草食だと思われがちですが、自然系では口に入る魚や甲殻類は平気で食べてしまいます。
そのため、小型の在来種やその卵、その他の水生生物を食害する可能性が高く、外来生物法では要注意外来生物に指定され、駆除の対象になっている地域も存在します。
もし仮に本州でも繁殖してしまった場合、間違いなく特定外来生物に指定されるでしょう。
プレコはそれほどの危険性を秘めているサカナなのです。
食材としての利用
堅牢な鱗を持つプレコは食べようとしても一筋縄ではいきません。
包丁ではもちろん切ることはできませんし、金づちでたたいても砕けることはありません。
では、食べるにはどうしたらいいのか。
鱗を無力化させ、かつ美味しく食べる方法、それは【丸焼き】です。
直火でじっくり焼くことで、鱗は手で簡単にはぐことができるようになります。
しかも硬い殻が身からの蒸気を逃がさず、蓋のような役割を果たしてくれるため、焼き上がりは驚くほどふっくらジューシーになるそうです。
いかにも泥臭く匂いが気になりそうですが、そこもあまり気にならないのだとか。
南米の現地では、内臓を出した後、お腹に香草などを詰めて焼いて食べるのがポピュラーで、家庭では定番の一品として愛されているようです。日本でも有効な食材として研究を進めれば、もしかしたら高級フレンチなどでテーブルに出てくるようになるかもしれませんね。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>