ユーは何しに日本へ?:アメリカナマズ編 小型哺乳類も口にする大食漢

ユーは何しに日本へ?:アメリカナマズ編 小型哺乳類も口にする大食漢

近年、利根川水系で大繁殖している「アメリカナマズ」。地元漁師を困らせているこのサカナはなぜ日本にやってきたのでしょうか?今回は「アメリカナマズは何しに日本へ?」をお届けしていきます。

(アイキャッチ画像出展:TSURINEWS編集部)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

特定外来生物『アメリカナマズ』

アメリカナマズは、北アメリカ産ナマズの総称(英名では「チャネルキャットフィッシュ」)とされ、日本国内では略して「アメナマ」と呼ばれたりもしています。

日本にもともと住んでいる日本ナマズとは異なり、頭が大きく、背ビレと胸ビレにに鋭いトゲがあることが、外見の特徴です。

原産国であるアメリカやカナダでは全長120cmを超えることもあり、非常に大型のナマズです。日本ではそこまで大きなものは今のところ確認されていませんが、それでも80cmを超える個体が捕獲されています。

また、アメリカナマズは非常に食欲旺盛で、近くで動くものや匂いを放つものはもちろんのこと、口に入るものであれば、ひとまず一回食べようとします。

魚やエビはもちろん、貝、水生昆虫、さらには小型の哺乳類まで何でも食べてしまうアメリカナマズは、日本の在来種を脅かす存在になってしまった為、2005年4月に「チャネルキャットフィッシュ」として特定外来生物に指定され、現在も定期的に駆除をされています。

日本での生息域

アメリカナマズは少しずつ日本での生息域を拡大していると言われていますが、現在では霞ヶ浦水系、利根川水系、阿武隈川水系、岐阜県下小鳥ダム、宮川、矢作川、庄内川などで、その姿を確認されています。

こういったデータは現地の漁業者による捕獲実績をもとにしているので、実際はもっと多くの沼や湖、小さな河川にも侵入していると考えられています。

中でも急激に増加しているのは利根川で、生態系や漁業へ被害が深刻なだけでなく、各地へ拡散する拠点になっていると考えられています。

日本に持ち込まれた理由

日本に移入されたのは意外にも古く、1971年に民間の研究所がアメリカから稚魚を輸入したのが最初だと言われています。その後も数回にわたり養殖技術確立のため持ち込まれたようですが、昨今の増殖の主な原因としては、1981年に霞ヶ浦で逃げたものが繁殖した説が有力とされています。

アメリカナマズが急激に増加している利根川水系は、生態系や漁業へ被害が深刻なだけでなく、各地へ拡散する源にもなっていると考えられています。

利根川への拡散は1982年の台風の時に、埼玉県内の業者の養殖池から江戸川に大量に逃げ出してしまったことが原因だと言われています。

ユーは何しに日本へ?:アメリカナマズ編 小型哺乳類も口にする大食漢釣り上がったアメリカナマズ(提供:TSURINEWS編集部)

どのような影響があるか

前述のとおり、アメリカナマズは非常に食欲旺盛です。霞ヶ浦・北浦でもっとも重要な水産資源とされているテナガエビやハゼ類、ワカサギ、シラウオ、イサザアミなどは、アメリカナマズが原因で年々漁獲高が減少しています。

また、漁師の網具にアメリカナマズが掛かってしまうと、暴れた影響で網が破損してしまったり、取りはずしの際にナマズのトゲによって漁師が怪我をしてしまったりすることも多発しているようです。

アメリカナマズが減りにくい理由

各地で駆除が行われているにもかかわらず、その数が減らないのには、アメリカナマズの子育て方法が影響している考えられます。

アメリカナマズは 5~7 月ごろに産卵をします。障害物の近くに産卵床をつくり、卵を積み重ねるように産みつけます。

ここまでは、他のサカナと大差はないのですが、産卵後、アメリカナマズはオスとメスが交代でふ化するまで卵を守るんです。1回の産卵で10,000個以上の卵を産卵し、それがしっかりとふ化をするため、駆除をしていても減るどころかどんどん増えてしまうのです。

食材としての利用

食料として輸入されたにもかかわらず、ウシガエルやライギョのように見た目やその食味のせいで普及せず、自然界で大繁殖してしまったサカナはたくさん存在します。

しかし、実はアメリカナマズが美味しいサカナだということはまだまだ知られていません。野生に生息している個体は、泥臭くて食べられたものではないと言われていますが、皮を除けば特有の泥臭さを軽減させることができます。食感はフワフワで、味も良く、ムニエルなどにすれば高級フレンチを彷彿とさせる仕上がりになるのだとか。

霞ヶ浦にある道の駅たまつくりでは、すでに「行方バーガー4兄弟」のひとつにアメリカナマズを使ったハンバーガー「なめパックン」が販売されており、かなり人気の商品になっているそうです。

もしかすると、食材としての利用方法を確立させることが、一番の駆除に繋がるのかもしれません。

食用に釣るのはOK

近年、とんでもないスピードで繁殖し増え続けているアメリカナマズは、外来魚の王様ともいえるブラックバスやブルーギルと同等、もしくはそれ以上に厄介な存在となっていきています。

現在、駆除以外に具体的な解決策が無いため、これ以上生息域を拡大させないことが、何よりも求められています。日本の固有種を守るためにも、むやみな放流は絶対にしないようにしてください。

ちなみに、釣って食べようとすることは全く問題ありませんし、駆除に貢献することは地元漁師さんからしても大歓迎だと思います。

ただし、食材として持ち帰る場合、特定外来生物に指定されているため、生きたままの運搬が法律上禁止されています。必ず締めることを忘れないでください。

<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>