私は一年を通して釣りに出かける。新年を迎えたころの水温は下降傾向にあり、まだ底を打った状況ではないため、ある程度の釣果は望める。だがホームの鳥羽方面では、2月の水温は1ケタ台の日もあり、我慢の釣りが続く。釣行回数は一年のなかで最も少なくなる。やはり釣りは安全でなくてはいけない。無理をしないことが大事だ。こんなときはサオを出したい場所があれば、ドライブを兼ねて車を走らせ、周りの状況や途中の景色を楽しんでいる。また次の釣行に備えて道具類の修理や製作など、限られた設備の中で楽しんでいる。そこで今回は〝穂先の製作と修理について〟大ざっぱだが気がついたことをまとめてみた。
穂先はアタリを表現し、それを読み取る重要なもの
穂先は、アタリを表現し、それを読み取る重要な部分を担っており、元ザオに応力を伝える役目がある。
ソリッドを、凸レンズのように先端にいくほど細く削れば「先調子」と呼ばれる形状になり、凹レンズのような形状に削れば「本調子」になる。
先端数センチを起点に曲がるものを「極先調子」、そして「先調子」、「本調子」の順となり、曲がる起点は手元に寄ってくる。
これは、さしエサの違いによるアタリの出方や、その日のコンディション、水深など釣り場の状況の違いにより、硬調、軟調かも含めて選択できる。
強風の日などは、やわらかい穂先では穂先自体が風で曲がってアタリが分かりづらいので、先調子である程度しっかりしたものが使いやすい。
さしエサの違いによるアタリの出方はあるが、必ずしもそうならない場合の方が多いように思う。
むしろ微妙なアタリばかりで終わってしまうことの方が多い。
私の場合はエサの違いで穂先を選択することはなく、微妙なアタリをどう捉え、どう食わせるかを優先に考えているが、自分の釣りスタイルや好みによるものも大きい。
また、スムーズに力が元ザオに伝わるということも大事。
これは穂先の先端から10~20cmほどの部分を持ち、ゆっくり90度に曲げてきれいな曲線になるかどうかで分かる。
手前に引くと継ぎ手部分のストレスが大きくなって折れることがあるので注意を。
最盛期の中小型が中心の数釣り時のラインは、1~1.2号を使うことが多い。
ハリも含めてトータルバランスが取れていれば、50cm級の年無しの取り込みも難しくない。
穂先の製作
製作は、素材となるソリッドを必要な長さ・太さに削ることから始める。
見本となる穂先や直径を測るデジタルノギスがあると、見本との差が数値として表れるので参考になるだろう。
元ザオとの継ぎ手部分を仕上げた後、全体的なバランスを見ながら好みの調子に削る。
この時、熱が発生しないように十分水を含ませ、粗めのペーパー120番ほどで目標に近い所まで削っていくと早く仕上げられる。
先端が細くなるとペーパーとの摩擦熱でソリッドが変形しやすくなるため、先端部分のペーパーの握りは除々に弱くしていくといい。
あとは細かめのペーパーで滑らかに仕上げ、回転方向のねじれを取る。
これは、先端が細くなるほどねじれやすいため、先端を下にして垂直に持ち、1~2回ほど熱湯をソリッドの中央あたりから先端に移動しながら掛けていく。
これをしないと、ねじれが自然に取れた時に取り付けたガイドの位置が変わってしまう。
【ガイドについて】
ガイドの取り付けだが、数量や取り付け位置などはメーカー品などを参考にした方がいい。
やたらガイドを多くしても張りがなくなり、デメリットの方が大きい。
ガイドは、Sicの場合はチタン製を使えばサビることはない。
先端部分は軽量ワイヤーガイドを使っているが、取り付け部分は3分の1ほどカットして瞬間接着材で固定している。
現在、先端部分のガイド止めの糸巻きはしていないが、巻く場合は先端から順に1個巻いたら瞬間接着剤で止め、糸を切らずに2個目のガイドを巻いて接着する。
順次ひと筆書きの要領で止めていけばいい。
【塗装について】
塗装は、釣具店で販売している漆に似たカシュー(有機溶剤系)や蛍光塗料などを使っている。
カシューは硬化後、粘りがあるためヒビ割れしにくく、艶がある。
一液性のため手っ取り早いが、有機溶剤なので換気の必要があり、閉め切った部屋はNGだ。
折れた穂先の修理
次に折れた穂先の修理だが、穂先の先端径は細いもので0.25mmほど。
イト絡みやオモリの部分まで巻き込んで折ってしまうことがある。
〝あっ〟と思った時はもう遅い。
先端のガイド取り付け部分だけが折れた場合は、数個ガイドを外して少し削れば元通りになる。
残った部分が折れないよう、実釣の際は他の穂先と交換するといい。
ガイド1個分の範囲で折れた場合は、付いているガイドを何個か外して削ればなんとかなる。
それ以上手前で折れた場合は、ガイドを全部外して削っても元のサオとはかなり違ったものになる。
穂先は消耗品に近いと思っているが、高価なので修理できるものは直して使いたい。
愛着も出て、他にはない自分だけのものになる。
<週刊つりニュース中部版 APC・山口昇/TSURINEWS編>