長かった冬の寒さが少しずつ和らぎ、いよいよ渓流釣りの解禁シーズンとなった。ずっと待ちわびていた人、今年から挑戦してみようという人、さまざまな想いを胸に里山の川へのイメージを膨らませていることだろう。解禁を前に基本的な渓流釣りの装備やポイント選び、そしてマナーなどを手引きしたい。
いざ、早春の渓へ
都会ではサクラが咲く春でも里山はまだ冬で、ウメが満開。
まずは防寒をしっかり心がけよう。
特に重要なのは足元。
渓流釣りに欠かせないウエーダーに、秋の禁漁以来、半年ぶりに足を通すことになる。
釣り場に到着してから「水が染みてきた」ということがあったら大変。
十分にチェックしておこう。
靴底のフェルトが剥がれかけてないかも、合わせてチェックする。
そのほか、上半身もしっかり防寒することが大切。
三本指のグローブも忘れずに。
【タックル】
次にタックル。
竿は川の規模に合わせて選ぶ。
支流では6m、本流で8mというのが一般的で汎用性もあるのでお勧め。
ここでは春の里山の釣りのガイドをするので、支流などで使用する6m竿のタックルを紹介する。
春の釣りはおもにヤマメが主体。
「ライトな仕掛けをヤマメのいる深い流れにジワーっと流しながら届ける」という場面が多くなる。
【竿】
竿はソリッドタイプ、ミチイトはナイロンがいい。
仕掛け全体の長さは、竿を伸ばした状態より50cmほど短くすると枝の張り出しなどを回避しやすく使いやすい。
【目印】
目印は視認性のいい色を4~5色用意。
光の当たり方によっては白や黒などがよく見える場合もある。
瀬を流す釣りでは、矢羽タイプのものがよく見えるので便利。
【ハリ&エサ】
続いてハリについて。
春先の寒い場面では、エサはイクラを使う。
イクラは「放流魚のエサ」と思われがちだが、厳しい冬を乗り越え体内の脂肪分が尽きてきた野生魚にとって、魚卵の脂肪分はとても魅力的。
そのため有効なエサなのだ。
皮の薄い塩イクラにダメージを最小に刺せる、細軸のハリがいい。
4月になってピンチョロ虫が沸くと、断然にこのエサがよくなる。
川虫を刺すのに特化したハリが効果。
渓流釣りでは、使用するエサに合わせてハリを選ぶのが基本。
【オモリ】
最後にオモリ。
春の釣りはオモリのチョイスがとても重要。
釣れる人とそうでない人の決定的な違いは、だいたいここにある。
その日の川の流れの強さで水中に入るイトの状態を感じ取って、オモリを替えていく。
「ヤマメのいる流れにジワーっと届けられるオモリ」
これがもっとも重要。
ポイントを移動したら、まずはオモリのチョイス。
初期のヤマメはここだ!ポイントの選び方。
次はポイント選び。
渓魚は水温によって活性が著しく変化する。
そのため、水温計を常に携帯してまめに水温を計ってポイントを選ぶ。
この時期の朝マヅメは、だいたい3~4度というのがパターン。
このような日は、川が大きくカーブして淵を形成しているような水深のあるポイントにヤマメは集まっていることが多い。
普段は警戒心の強いヤマメだが、こうした場合はなぜか同じポイントで何尾も続けて釣ることができる。
よく知っている川で「あそこにあんな深い流れがあったな」というようなポイントを思い出してみよう。
朝マヅメでも、夜通し曇り空で朝から気温が高い日は、水温が6~7度くらいのときがある。
このような日は、魚が瀬に移動している。
瀬を流す釣りをやってみよう。
瀬に出ているヤマメは、警戒心があって同じ場所で何尾も釣れない。
まめに移動して、釣果を足で稼ぐようにする。
また、水温が高い日は水際の石で小さな羽虫が羽化を始めている。
そうした周囲の状況を観察しながら釣りを楽しむと上達が早い。
早朝は寒くても、午前9時を過ぎると気温の上昇とともに水温が上がってくる。
そうなるとヤマメもアクティブになり、方々に移動を始める。
ユスリカの羽化が始まったりカゲロウの亜成虫が流れてきたら、ヤマメは羽虫を食べ始める。
こうなるとイクラエサで釣るのが難しい。
目の細かいタマ網を使って現場で川虫を採ってエサに使ってみよう。
実際、羽虫食いに入った魚を幼虫で釣るのは難しいが、イクラで釣るより可能性は高くなる。
ただし、こうなったら毛バリ釣りにはかなわない。
釣りもほどほどに、魚が虫を食べている様子をじっくり観察して今後に生かすのもいい。
渓流釣りはいろいろなポイントを自分の足で歩いて観察し、経験を積み重ねていくことが上達への近道。
川歩きのなかで植物や野鳥、昆虫など大自然のと出会いに楽しさを見つけるとさらに面白くなる。
自分たけの渓流の楽しみ方を探すのもいいと思う。
マナーを大切に
たくさん釣り人がいればそれぞれ楽しみ方も違うが、ここでお願いしたいのは、釣り具や弁当のパッケージなどを川に残して帰らない、ということ。
マナーのいい釣り人はとてもカッコいいと思う。
それから釣った魚について。
好条件の日に好ポイントに恵まれたときなど、たくさんの渓魚を釣ることができる。
そのようなとき、すべて土産として持ち帰ってしまうと川の魚が減ってしまう。
もちろん、これは遊漁券を購入して釣りをしているのであれば、ルール違反ではない。
ただ、釣り人の心ひとつで生態系を守ることができるのだ。
釣った魚を自分で料理して、家族や親しい仲間たちと食べてみては。
「美味しく料理できた」とか「ちょっと焦がしてしまった」など、自分で釣った魚を、その釣り上げた回想とともに料理していくと、その1尾の命の価値がぐっと大きくなる。
そのような経験を重ねていくと、釣った魚との新たな関係になってくるかもしれない。
そうしたら、今まで以上に「釣り」を大切に思うようになるだろう。
<奔流倶楽部渓夢・上谷泰久/TSURINEWS編>