2019年サンマの漁獲量は過去最低 沿岸・遠洋・沖合漁業と今後の展望

2019年サンマの漁獲量は過去最低 沿岸・遠洋・沖合漁業と今後の展望

2020年1月7日、全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によって、昨年(2019)のサンマの水揚げ状況データが発表されました。今回は、サンマの漁獲量と日本の漁業の関係性についてご紹介します。併せて、沿岸漁業、沖合漁業、遠洋漁業についても調べてみました。

(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

2019年のサンマ漁獲量は過去最低

以前の記事で2019年のサンマの漁獲量の予想についての記事を掲載しましたが、その結果が2020年1月7日、全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によって発表されました。(参考:https://www.samma.jp/index.html

2019年の全国のサンマ水揚げ量は予想通り、2018年に比べて減少し、66%減の4万517tまで減ってしまいました。

この数字は過去最低の水揚げ量だった、1969年(約5万2000t)をも下回る記録となっています。

予想される原因

これには、地球温暖化による海水温上昇による回遊ルートの変化や、中国や台湾などの外国漁船による公海での漁の活発化がなどが理由と考えられています。

日本のサンマ漁は近海での沖合漁業が主流とされていますが、中国や台湾などの諸外国の行うサンマ漁は、公海で行う遠洋漁業が主流になってきています。

そのため、日本の近海を通らなくなったサンマを先取りされる形になり、他国の漁獲量が増加、それと反比例するように日本の漁獲量が減少してしまっていると考えられます。

沖合漁業に比べ遠洋漁業では「船の大きさ」や「漁に費やす期間」がより大規模なため、日本の漁獲量が減る一方で、反比例するように台湾や中国の漁獲量が増えているのです。

では、遠洋漁業、沖合漁業にはどのような差があるのでしょうか。上記2つの漁業に沿岸漁業も加えて解説していきます。

2019年サンマの漁獲量は過去最低 沿岸・遠洋・沖合漁業と今後の展望日本では様々な漁が行われている(出典:PhotoAC)

沿岸漁業

日本の沿岸、特に太平洋側では南から流れて来る黒潮と、北から流れて来る親潮とぶつかります。

また、日本海側では北からのリマン海流と南からの対馬海流がぶつかり、日本中どこの海を見ても、世界でもTOPクラスの漁場を有していると言えます。

2019年サンマの漁獲量は過去最低 沿岸・遠洋・沖合漁業と今後の展望日本周辺の海流図(作図:TSURINEWS編集部)

そのため、船の大きさは5~10tくらいの小型漁船で、漁師自身が住んでいる町のすぐ目の前の沖で漁をする事が多いです。

岸からの具体的な距離は決まられていませんが、陸から比較的近い、日帰りできる程度の沿岸部で行われる小規模な漁業を指しています。

日本で行われる統計調査においては、【船びき網、その他の刺網(遠洋に属する漁業を除く。)、大型定置網、さけ定置網、小型定置網、その他の網漁業、その他のはえ縄(遠洋及び沖合に属する漁業を除く。)、ひき縄釣、その他の釣、採貝・採藻、その他の漁業(遠洋及び沖合に属する漁業を除く。)】がこの対象となっています。

また全国各地で様々な漁法が行われており、漁の対象となるサカナもバラバラで、季節でも獲れる魚が違ってくるので、旬の魚を獲っていると言えます。

沖合漁業

日本近海でギリギリ日帰りができる距離から、2~3日程度で帰れる範囲の海を漁場として行われる漁を指します。

船の大きさは20~150tくらいの漁船を使い、まき網漁や底曳き網漁のことを指します。

テレビなどでよく取り上げられる「カツオの一本釣り漁」なども沖合漁業に含まれています。

1970年代から80年代の半ばくらいにかけて漁獲量を増やし漁業の中心となっていましたが、200海里規制の影響により、自由に魚をとることができなくなり、80年代終わりごろから漁獲量が減少しています。

農林水産省によると【沖合底びき網1そうびき、沖合底びき網2そうびき、小型底びき網、大中型近海かつお・まぐろ1そうまき網、大中型その他の1そうまき網、大中型2そうまき網、中・小型まき網、さけ・ます流し網、かじき等流し網、さんま棒受網、近海まぐろはえ縄、沿岸まぐろはえ縄、東シナ海はえ縄、近海かつお一本釣、沿岸かつお一本釣、近海いか釣、沿岸いか釣、日本海べにずわいがに、ずわいがに】が対象となっています。

遠洋漁業

この漁業でもっとも代表的なのはマグロやカツオ漁業です。

赤道直下の南太平洋や南アフリカ沖など世界中の海が漁場で、その航海の期間に合わせて船のサイズも変わります。

漁を行う期間が非常に長く、短くても1ヶ月程度、長いものだと1年半にも及ぶ日数を費やすものもあります。

上記のような長期間の漁を行う場合、その船の大きさはなんと120〜200tクラスが中心になります。

そのため、コストが大きくかかってしまうので、近年では、漁場まで船と少人数の船員だけ先に行かせ、漁を行う船員を後から飛行機で向かわせることで拘束時間を減らし、人件費削減をするような対策を取ることもあるようです。

各国が漁業のできる海域を制限(200海里漁業水域)しているため、日本の船が自由に魚をとることが難しくなり、近年では漁獲量が減ってい流のも事実です。

農林水産省によると【遠洋底びき網、以西底びき網、大中型遠洋かつお・まぐろ1そうまき網、太平洋底刺し網、遠洋まぐろはえ縄、大西洋等はえ縄等、遠洋かつお一本釣、遠洋いか釣】が対象となっています。

サンマの需要が増えている理由

台湾や中国では近年、日本食がブームとなっており、その影響もあってサンマが人気となってきています。

日本のように家庭で焼き魚として食べたり、バーガーに挟んだりと、様々なサンマ料理が大人気となっているようです。

さらにそこに拍車をかけるように、健康食品としても注目されるようになっているため、アジア諸国でのサンマの需要は年々増えているようです。

ルールを守る事が大切

サンマなどの水産資源は、海の中を泳いでいる時には誰にも所有件はなく、漁獲されることによって初めて人の所有下におかれるという性質(無主物性)をもっています。

そのため、「先取り競争」が生じやすくなってしまいます。

今後も持続的に利用していくためには、水産資源を適切に管理し、資源の保全・回復を図る「資源管理」の取組が必要になってきます。 

漁業を行い、消費する側である私たち人間は「今年は豊漁だからたくさん捕ろう!」「他の国に取られる前に獲ってしまえ!」と考えるのではなく、魚を限りある水産資源と再認識する必要があります。

日本は、国土の四方を海に囲まれ、領海及び、排他的経済水域を合わせた面積では、なんと世界第6位。豊富な漁場を持つ「海洋大国」として顔も」持ち合わしています。

しかし近年では、近隣の諸外国と打って変わって、日本人のサカナ離れが嘆かれています。海洋大国としての地位を保ちつつ、これからの日本の漁業の課題や改革を行っていく必要があります。

とはいえ、日本だけでなく、近隣の諸外国、ひいては世界的に資源量を維持しながら安定的に漁獲をしていくためのルールを敷くことを、今後考える必要に迫られているのかもしれません。

<近藤 俊/サカナ研究所>