サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?

サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?

サカナによって違う口の形。種類や生息する地域によって様々な進化を辿っています。そしてサカナの口や歯の特徴からどのような食性なのか判断できます。今回は、意外と知らないサカナの口や歯の形に着目していきます。

(アイキャッチ画像出展:Pixabay)

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サカナも食事を楽しんでいる?

私たち人間は、人によって肉が好きだったり、サカナが好きだったり、野菜が好きだったりと一人一人で食の好みが異なります。

食の好みを楽しんでいる生き物は、人間だけではありません。サカナも同様に、種類によって好みの食べ物が違ったり、同種の魚でも生息域が違うだけで主として食べるものが違い、時には全く異なる食性の場合もあります。

サカナの食性

先ずは、サカナの食性についてご紹介します。サカナの食性は大きく「プランクトン」、「魚」、「虫・甲殻類」、「植物・藻類」の4つのカテゴリーに分けることができます。

一つのカテゴリーしか食べない種類のサカナもいれば、雑食性で口に入るものならなんでも食べてしまう種類のサカナもいます。コイやクロダイなどは貪食として知られています。

サカナは基本的に食性に合わせて口の形や歯の形が大きく異なってきます。種類ごとに口の形が異なり、好みの食べ物を捕食しやすいように発達しています。

まずはサカナの口にフォーカスを充ててみましょう。

口を見ればわかるサカナの食性

サカナは口の形や大きさ、開く向きで大体の食性を判断することができます。

例えば、釣りで人気のスズキ(シーバス)は、自分よりも小さいサカナ丸呑みにして食べるため、口が大きく開きます。また、水面付近や浅場を泳ぐサカナを下から食べ上げるので、下顎が大きくしゃくれ出ているのも特徴です。

このように、その魚が何を捕食の対象にし、どのようなシチュエーションで口を使っているのかは口を見ることで大体判断できます。

上向きの口

代表例:スズキ、メバル、アンコウ、ブラックバス、アロワナなど

このタイプの口を持つサカナは基本、自分より小型〜あるいは同等の大きさの生物を捕食します。食の好みも肉食や雑食のものが多く、口に入るものならなんでも食べてしまう獰猛な種類のサカナです。

特徴としては、下顎(あご)が大きく、ややしゃくれているため、自分の上を泳ぐ生き物を捕食することに長けています。

サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?アンコウの口は上向きで大きい(出典:PhotoAC)

下向きの口

代表例:キス、メジナ、ネズミゴチ、コイ、フナ、コリドラスなど

このタイプは虫や甲殻類、藻類などの生物を捕食するサカナになります。口の構造も下方に向かって上唇が伸びるような構造になっているのも特徴の一つです。

口は体の大きさに比べて小さく、地面の中に隠れている生物をついばむように捕食したり、底に沈む岩や石に付着した藻類を削り取るように捕食することに長けています。

サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?コリドラスの口は下向き(出典:PhotoAC)

正面を向いている口

代表例:カツオ、マグロ、アジ、イワシなど

このタイプのサカナは高速で泳ぎながら捕食するサカナです。口は顔の前端に位置していることが多く、上下にバランスよく大きく開くようにできています。

噛み付くのではなく、泳ぎながら口に入ったサカナを丸呑みにして捕食するため、自分の体の太さと同じくらいに口が開くことができます。

高速で泳ぐサカナに多い特徴の一つと言えるでしょう。

サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?正面を向いたマグロの口(出典:PhotoAC)

クチバシのような口

代表例:イシダイ、イシガキダイなど

甲殻類や貝などを主食としているサカナは、口がクチバシのように進化しています。口先の部分が非常に硬くなっており、トゲだらけのウニや大きなハサミを持ったカニでも関係なくボリボリと噛み砕いて捕食することができます。

甲殻類など硬いものを噛み砕いて、食べることに特化した口と言えます。

サカナの食性と口・歯の関係 海藻を食べる魚は人間と同じ歯を持つ?イシダイのクチバシのような口(出典:PhotoAC)

歯で見る食性

口の形でも食性を判断することが可能ですが、サカナの歯の形や大きさからでも同様に判断することできます。例えば、サワラやヒラメような動く魚に噛みつき捕食するサカナの歯は鋭く、釣り糸などもスパッと切ってしまうほど鋭利なことで知られています。

一度咥えたら、簡単には離さないような構造になっています。

口の内側に向かって少しだけカーブしており、中に入るものには力がかかりにくく、反対に外に出ようとするものにはより深く刺さるような仕組みになっています。

一方、藻類や、岩に生えた海藻や水草を食べるようなサカナは、サワラやヒラメのような鋭い歯は持っていません。これらのサカナは、動物でいうシマウマやゾウと同じような臼歯(きゅうし)をという歯を持っています。

人間でいう奥歯と同じような役目をし、ものを噛み砕いたり、すりつぶしたりすることに長けています。

海藻を食べるサカナ中には、前歯で海藻をついばみ、もぎ取ることに特化させた熊手のような形に発達させたサカナも存在します。

珍しいサカナの歯

サカナ中には、珍しい歯を持ったものも存在します。例えば、南米原産のピラニアの仲間、パクーと呼ばれる魚は、まるで人間のような歯を持っていることで知られています。パクーは雑食性のサカナで、木の実からカタツムリや他のサカナも食べるため、独特の進化をしています。

南米では、男性器を噛み切ることから、現地では別名ボールカッターと呼ばれ主に男性から恐れられています。

また日本で親しみ深いクロダイも、独特な歯をしています。クロダイも甲殻類からサカナ、時には藻まで捕食する雑食性の強いサカナです。

意外とクロダイのように見たことあるけど、口の中までは見たことがないサカナが多いと思います。

今後、スーパーや釣りで釣れたサカナの口に注目してみるのも面白いのではないでしょうか。

<近藤 俊/サカナ研究所>