11月3日、三重・鳥羽本浦で、カカリ釣りの名手・薮邦正さんが企画・協力する「筏かかり釣り講習会」か開催された。折しも鳥羽周辺は、チヌの数釣り真っ盛り。当日は大小入れ交じってアジが猛威をふるう中ではあったが、チヌ数釣りの基本などをみっちりと学べた1日だった。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
ハリの選択基準
ダンゴの基本講習が終われば次は、藪さんのこだわりでもあるハリの説明。こちらはカカリ釣りで使われる、ヒネリタイプとストレートタイプのハリの使用上の違いについて解説。
ヒネリの入ったハリは魚の口にも掛かりやすいが、底をかく事もある。底をかくのを利用してワザとエサを止めたり…と言った少々高度な話にも参加者は真剣に聞き入っていた。
全員でカセへ移動
準備が整えば、ようやく渡船に乗り込みカセへ。今回のカセはカキイカダの横に固定されたタイプで、2基と3基のカセが並び、お互い向き合って釣るように設定してくれていた。カキイカダを伝って並んでいるカセには移動ができるので、順番に薮さんが周りながら指導する。
実釣での注意点
実釣では、ポイントの作り方からダンゴの使い方、アタリの待ち方、アタリが出た時の対処からやり取りまで、一通りの動作を実演を交えながら解説していく。その中で、その人に合ったレベルの解説がなされ、それぞれのレベルでの勉強になったハズ。
ポイントを作る
具体的には、まずポイント作りから始まる。カカリ釣りの基本はとにかく、自分が、さしエサを置いている所へチヌを呼び寄せて食わせる事にある。そのために、何を置いても重要なのはポイント作りである。カセに渡れば、仕掛けを作る前に、まずダンゴを作って投入する。
当日は、朝のポイント作りに使うダンゴに、アケミ貝を割ったもの、アミエビ、オキアミ、サナギミンチをアンコに入れ込んで投入。ちなみにアンコとはマゼとは逆にダンゴに混ぜ込まず、ダンゴを握る時におにぎりの具材のようにダンゴの中心に具材を入れる状態だ。
アケミ貝を使う理由
今回、アケミ貝を入れたのは、釣り場自体、カキ養殖が盛んな地域なので、チヌも貝をかなり食べているであろうとイメージしたからだ。そして、貝は重量があったり殻が海底に引っ掛かるので流されにくい特徴を持つ。なので、時間が経ってもその場でまきエサ効果が長続きする。
ダンゴの投入方法
最初に、まくダンゴは通常よりやや大きめでソフトボールくらい握る。これを5、6個は投入しておきたい。この時に1個作ってはまくのではなく、まくダンゴをすべて作ってから一気にまく事。こうする事で、風でカセが押されて少し移動してしまう状況であっても1カ所に集中して溜める事ができる。これがポイントとなる。
ダンゴ投入が終われば、仕掛けを作る。この日の仕掛けは基本として道糸、ハリス通しで1.5号、チヌバリ2、3号で、潮の速さなどに合わせて完全フカセからガン玉3B程度を打つ。
さしエサのローテーション
この日、参加者に案内して持参してもらったさしエサは、オキアミ、サナギ、シラサエビ、アケミ貝、コーンなど。これらのさしエサをローテーションさせていくのだが、その時に必ず、さしエサに使ったものをダンゴのアンコに入れるのが基本だ。
アタリを待つ準備
投入したダンゴが着底したら、そのまま竿先を軽く曲げた状態でキープする。あまり引っ張らずにダンゴがバラけて崩れ、さしエサが飛び出すのを待つ。さしエサが飛び出せば、竿先の曲がりがなくなりフワッと浮き上がるので、すぐに竿先を下げる。この動作をする事で、さしエサが大きく浮き上がるのを防ぎ、まきエサであるダンゴの場所にキープできる。
微妙な糸のテンションがキモ
潮が速ければ竿先が引っ張られていくので、その分、糸を送ってやる事で、さしエサが海底で安定する。逆にジッとしていると、中層の潮に道糸が引っ張られてさしエサが浮き上がってしまうが、実はチヌが少し浮いている事もあるので、わざとエサを浮き上がらせてタナを探る事もある。意識しておきたいのは、ジッとしていると潮の影響を受けて知らない間にさしエサが浮いてしまう・・・と言う事だ。
この日もエサ取りが非常に多く、少し浮かせるとアジの猛攻。それも豆アジから30cm近い立派なアジが食ってくる。参加者も最初は「糸を送って、さしエサを底にキープさせる」のが、なかなかイメージできなかったようで、自然にエサが浮き上がってのアジが入れ食い状態に・・・。
ただし、薮さんが竿を手に取って、しっかりとさしエサが浮かないように操作をすると、極端にアジのアタリが減る。チヌアタリがなく誘い上げるとアジがヒットする。タナとしては、ほんの10cmほどの差なのだが、ずいぶんと反応がかわるものだ。
エサ取りとチヌアタリの違い
ここでチヌアタリとエサ取りの違いを説明。エサ取りのアタリもバラエティーに富んでいるが、基本的に軽くコン、コンと竿をお辞儀させたら戻るようなアタリが多い。または軽いながらも派手で大きなアタリが出る。対して、チヌは小さくてもコツッと穂先をお辞儀させたらそのま戻らないパターンが多い。
ここでは即アワセではなく、曲がった分を送り込んでやると、再び引っ張っていく。このやり取りを数回続けていると、ひと際大きくスーッと穂先を持ち込むので、大きくアワせる。慣れてくるとひと目で分かるのだが、何でもアワせていると外道だらけになってしまう。
この日は終始、アジの猛攻に翻弄されたが、中にもポツリポツリと小型ながらチヌを上げている人もいた。夕方4時半に納竿としたが参加者からは「非常に勉強になりました。次回もぜひ参加させてほしいのでよろしくお願いします」と好評だった。
最後に
薮さんいわく「カカリ釣りは敷居の高い釣りと思われているかもしれませんが、基本をきっちりと道理を踏まえて習得する事で、敷居は低くなります。また奥が深いのもカカリ釣りの特徴なので、まずは簡単に入門して、その先にある奥深さを知っていただければありがたいですね」との事だった。
鳥羽では現在、チヌの数釣りが最盛期を迎えている。これから水温が下がるとサイズはさらに小さくなるが、まだまだ楽しめる時期。冬を迎えると今度はエサがかわりつつ、良型も狙えるようになり、春には乗っ込みの大型チヌが釣れる。
1年を通して同じチヌながら様々なスタイルで、違った釣りを楽しめるのがカカリ釣りだ。アナタもこの秋にぜひ、挑戦を!
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>