海底を彩る生物といえばサンゴ。沖縄の海には多種多様な生き物が生息していますが、なんとそのうちの25%はサンゴ礁に頼って生活をしています。海の生き物にとってサンゴはどのような役割をしているのでしょうか。
(アイキャッチ画像出典:Pixabay)
サンゴは海のオアシス
「海の熱帯林」、「海のオアシス」と呼ばれることもあるサンゴ礁。彼らは海洋生態系の中で重要な役割を担っています。
大きく分けて3つの役割を担っています。
・食物連鎖の土台
・防波堤の役割
・二酸化炭素の循環及び水質の浄化
今回は、特に「食物連鎖の土台」としての役割に注目していきます。
大事な食物連鎖の土台
サンゴの周辺を生息域とするサカナには、サンゴを食べるものと、そのサンゴと共生するもの、またそれを捕食するものの3種類が集まります。
いわばサンゴを中心に食物連鎖が繰り広げられているのです。
豊富な栄養素
サンゴは非常に有能な栄養源と言えます。しかし、どのサカナにとっても有益な食料というわけではありません。
サンゴは刺胞動物に分類され、クラゲやイソギンチャクなどの仲間です。一見、やわらかくて害がなさそうに見えますが、実は餌にするにはかなり手強い相手なのです。
サンゴの骨格は先端が鋭く尖っており、その上に被さる本体は、無数の毒針と粘液で覆われています。
こういった理由から、サンゴを食べられるサカナの種類はかなり限られ、魚類全体で3万種近くもいる中から実はブダイやオニヒトデを始めとした128種しか確認されていません。これらのサカナにとってサンゴは競争相手の少ない有益な食料と言えます。
サンゴの粘液
サンゴにサカナが集まる理由はもう一つあります。それはサンゴが体の表面から分泌している粘液もその一つです。
この粘液はもともとはプランクトンを捕獲するためだったり、紫外線から体を保護するためだったりと、様々な役目を果たしています。
しかしこの粘液はサンゴを離れると、海中に沈み、バクテリアに分解されることによって微生物食物網に入ります。バクテリアは微生物に食べられ、それをさらに小型の生物が食べます。
このように、サンゴがいることによって生態系は豊かになり、生態系はサンゴがベースになってつくられているといえるのです。
魚が外敵から身を守るためのバリケード
サンゴの周辺に数多くの生物が生息しているもう一つの大きな理由は「身を守るため」です。
サンゴは枝状、テーブル状、塊状など様々な形をしています。
これらのサンゴが集まることによって、海中の地形はより複雑になり、サカナににとって身を隠す絶好の環境になっています。
サンゴの中に隠れることにより、サンゴの刺胞cで大きなサカナや外敵などから食べられるのを防いでいます。
映画でもおなじみのカクレクマノミなどのスズメダイの仲間は、体表に粘液を分泌することで、サンゴやイソギンチャクの刺胞が自分たちに刺さるのを防いでいます。
小魚がサンゴを守る?
実はサンゴやイソギンチャクはただ外敵から身を守るバリケードになっているだけではありません。カクレクマノミなどを始めとしたサカナに守られてもいます。
カクレクマノミは非常に縄張り意識の強いサカナです。自分の縄張りに魚が侵入して来ると、すごい剣幕でその魚を追い払います。
カクレクマノミが住み着いているサンゴやイソギンチャクを食べようと他の魚が近づいてくると、自分のテリトリー内に侵入してきたと見なして追い払います。
この習性のおかげで、結果としてサンゴたちは守られています。
こういった持ちつ、持たれつの関係を共生と言い、お互いに助け合うことで、生物たちは豊かに育っていきます。
サンゴに生息する生物
サンゴ礁があることで様々な生物が集まってくることは先にも記載しました。その数は実に約13万種類にもなると言われています。これは全海洋生物の1/5に相当する数字です。
またサカナだけではなく、カニなどの甲殻類や、ウミガメなどの爬虫類など、ありとあらゆる生物がサンゴ礁に集まってくることで、豊かな海を作りあげています。
またサンゴには、地上の森林以上に、二酸化炭素を循環させる機能を持ちます。それだけではなく、沖縄を始めとした南国のエメラルドグリーンの美しい海はサンゴが水質の浄化を担っているからこそです。
無くてはならない存在
サンゴ礁は広大に広がっていると思われがちですが、全海洋で見れば、たったの0.2%しかありません。しかし、海洋生物の1/4~1/3がこのサンゴ礁に生息していると言われています。
近年、サンゴの減少が、ニュースでも取り上げられるようになりました。
それもそのはず、国際自然保護連合(IUCN)などの調査によると、世界中のサンゴのうち1/3の種類で絶滅の危険性が高まっていると言われています。
そしてその原因の大半は地球温暖化だと言われています。この1/3のサンゴがこのまま絶滅したら、何万種という海洋生物に影響がでるかもしれません。
その影響は計り知れません。この事実にもっと危機感を持ち、地球全体の問題と捉える必要があります。
人類と自然の関わり方はまだまだ改善が必要です。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>