我々にとって馴染みのあるあの人気食材が、沿岸部を高波から守るシールドとなります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
SNSで「成長する防波堤」が話題に
様々な環境問題やその解決のためのソリューションについて語る、アメリカ発のSNSアカウントがあります。そのアカウントが先日「成長する防波堤」という投稿を行い、話題となりました。
その防波堤は、一般に知られる巨大なコンクリートブロックを並べたものではなく、消波ブロックのような凹凸のあるコンクリート塊を並べたものです。
これを港湾部においておくと、やがてそこに「牡蠣」が付着します。これによりどんどん体積が増加し、大きく「成長」していくのです。
「牡蠣の防波堤」を復活する試み
実は「牡蠣の防波堤」という考え方は、アメリカには古くからありました。
アメリカ最大の都市ニューヨークは、かつて「牡蠣の名産地」として有名でした。ハドソン川河口部に立地し多くの入江に囲まれたこの土地は牡蠣の生育に向いた環境で、大量の野生の牡蠣が生息していたのです。
大量の牡蠣の食べがら(提供:PhotoAC)しかしその美味しさが注目されるとあっという間に狩り尽くされ、やがて牡蠣は消滅寸前のような状態になりました。するとニューヨークは高潮の被害が頻発するようになったのです。
そのため近年は「牡蠣の防波堤」を復活させるべく、大量の牡蠣殻を集めてネット等にまとめ、海辺に置くというプロジェクトが行われています。ここにまた天然の牡蠣が付着し、かつてのような大きな生息地になることを狙っているのです。
なぜ牡蠣は防波堤になるの?
しかしなぜ「牡蠣の防波堤」は作られるのでしょうか。これは牡蠣の「互いにくっつき合いながら成長する」という性質によるものです。
牡蠣はしっかりした硬い物質を土台として付着生活を行いますが、とくに他の牡蠣殻によく付着するという特徴があります。そのため多数の牡蠣がくっつき合いながら互いを土台として成長し、その塊がやがて大きくなっていきます。それが大きくなり、まるで珊瑚礁のように陸地化すると「牡蠣礁」と呼ばれます。
牡蠣同士がくっつきあい、塊に(提供:PhotoAC)牡蠣礁は沿岸部に陸地に沿って発達し、凹凸の多い構造物として打ち寄せる波の勢いを弱める、まさに防波堤の役割を果たしてくれます。加えて牡蠣以外の生き物のゆりかごにもなり、さらに牡蠣そのものによる海水浄化作用も期待できるなど、コンクリート製の防波堤よりも優れた点もある素晴らしい構造物なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

