釣魚の王様「マダイ」。コマセ釣りや、房総のビシマ釣りや手バネのシャクリ、ルアーファンにも人気のひとつテンヤや鯛ラバ…。これだけ釣り方が多彩な魚は全国、世界を見ても貴重な存在。日本を代表する「王様」の呼び名に異論を唱える人は少ないはずだ。そんな同魚を狙い、コマセ釣りの名手永井裕策さんが静岡・土肥のとび島丸から出船。釣行を取材した。
薄暗いうちは抱き合わせへ
同船と永井さんの付き合いは古く、「先代のころからマダイ釣りをかなり勉強させてもらった」とふり返る。
12月後半、あいにく冷たい小雨のなか6人が乗船。鈴木健司船長の舵で6時半出船。
「まずは安良里沖の深場を狙います。30分くらい走ります」とポイントへ。
「85mです。ハリスの位置からコマセを振ってください」と合図があり釣り開始。反応を確認しながら1m単位でタナ指示がでる。
すると、10分後永井さんの竿が待望の弧を描いた。難なくやりとりを制し1kg級本命を上げた。
付けエサはオキアミを抱き合わせ。「1匹だと真っすぐ刺さないとすぐに回ってしまう。薄暗いうちは回りにくい抱き合わせで」とのこと。
魚が上ずってる?
その後南寄りへ移動。雨は予報通り落ち着き、遠くに見える富士の裾野が見えてきた。
同氏は8時前に再び同級を追釣。食ってきたのはどちらも上バリ。「魚が上ずってるみたいだ」と状況を分析。
9時前に入った釣り場では、50m前後のタナ指示が中心。二枚潮やサバの猛攻で釣りづらいなか、乗船した釣り人たちも順調に数を伸ばす。
左舷トモの中村さんは1kg級。
左舷ミヨシの木村さんも「企業秘密」というこだわりの自作仕掛けで1.7kgの美ダイをキャッチ。
竿を振らずに誘え?
10時すぎ、ようやく富士山が姿を現した。
徐々に北上、水深80mほどでタナ指示は40m前後。エサ取りのウマヅラが活発になってきたが、永井さんは塩焼きサイズを追加。
ロングハリスが主流の西伊豆の釣りでの注意点を永井さんに聞くと、
「まずは、最初にハリスの位置でしっかりとコマセを撒く。あとは自然と下へコマセが落ちるのでゆっくり上げていって探るといい。何度も強く竿を振る必要はない」とのこと。
その言葉通り、ほかの釣り人も大きく何度も竿を振ることはなく、ドラグを緩めてイトを出しながら落とし込みで誘ったりと、テクニックを駆使しながら渋い時間帯でも積極的に攻める。
11時すぎ、さらに1kg級を追加。しかし、雨が上がり冬晴れともいえる快晴になると「景色はよくなったけど、曇っていたほうがこの濁りなら食うんだけど」
と完全には喜べない。
コマセ釣りは攻める釣り!
正午過ぎに、水深40mほど、タナ指示20m前後の釣り場へも移動。富士山だけでなく、アルプスの山々までも見渡せるロケーション。
しかし、満潮を迎えた時間帯ということもあり「活性がよくないね。誘ってね」と船長からハッパが掛かる。
調子を上げたのは右舷トモの市村さん。
「船長がどんどん攻めてくれる。それがうれしいし、応えたいと思って通っています」とのこと。氏の言葉通り、船長は細かく移動し、タナ指示も1m単位で的確に指示。
置き竿で放置という人は少なく、ロッドワークでイトを送り込んだりなど、何かしらアプローチを忘れない。
特に市村さんはガン玉を付けてエサ取りのタナをかわす作戦で連発。
未経験者が勘違いしていることが多いが「コマセを撒いたらタナで待つ待ちの釣り」という発想が誤解だということがよく分かる。
最終釣果は?
納竿間際、港近くまで戻りギリギリまで竿をだす。ここで最後に木村さんが1.4kgを上げ15時半に帰港。
釣果は1kg級主体に2~7尾。永井さんは7尾。
富士山と、弧を描くムーチングロッドに真紅の魚体。納竿や初釣りで絶景を堪能してみては。