深海魚を始め「目が光る」魚はたくさんいます。名前がそのものの「メヒカリ」も該当します。まるで本当に発光しているかのように輝くのは一体なぜなのでしょうか。
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メヒカリの成魚と卵が初めて確認される
やや深い海に生息し、深海底引き漁などで漁獲される「メヒカリ(目光)」という魚がいます。アオメエソならびにマルアオメエソという2種の魚の総称で、流通上はこの2種を区別することはありません。
魚好きなら知っているくらいの知名度ですが、大きさの割に脂乗りが良いこともあってファンは多く、産地周辺では唐揚げなどで賞味されています。特に福島産の品質が高いとされており、同県浜通りでは非常に人気の高い魚です。
そんなメヒカリですが、これまで漁獲されてきたものはいずれも「性成熟していない若魚」で、成魚や生殖巣は確認されてきませんでした。そのため身近な魚ながらその生態はほとんどわかっておらず、謎に包まれていたのです。
しかしこのたび、同県にある水族館「アクアマリンふくしま」で飼育されていたアオメエソの1個体が、なんと性成熟しているのが確認され、ニュースとなっているそうです。
同水族館は魚の生態や養殖に関する研究成果が多いことでも知られており、このメヒカリについても謎に包まれた生態の解明に役立つことが期待されます。
メヒカリの目はなぜ光る?
そんなメヒカリですが、この通称はもちろん「目が光る」ことからつけられたものです。新鮮なメヒカリを見ると、その目がきれいな青緑色に光っているようにみえるのです。
しかし彼らの目は実際に光っているというわけではありません。眼球の中に届いた光を、網膜の後ろにある構造体で反射させているのです。入ってきた光がきれいに反射されるため、まるで光っているように見えるのです。
この光を反射する構造体は専門用語では輝板といいます。ただ釣り人の間では、英語の「タペータム」のほうがよく知られているようです。
タペータムはなぜ存在する?
メヒカリを始め、キンメダイ、アカムツなど、タペータムを持つ魚は少なくありません。そしてその多くは「深海魚」です。
水深200mより深い深海は、太陽光があまり届かないため、我々人からすると真っ暗な空間にしか見えません。しかし実際には微量の光が差し込んでおり、生物たちはそれを頼りに視覚を働かせています。この少ない光を集めて増幅させることで、よく見えるようにするのがタペータムの役目なのです。
ネコも持つ
そしてタペータムは、魚だけでなく動物たちにもみられる構造体です。といってもタペータムを持っているのは深海に棲むものではなく、夜の暗闇に生きるものたちです。
最も分かりやすい例はそう、ネコ。彼らの目が暗闇で光るのも、実はタペータムを持つためです。なので言葉の上ではネコもまた「メヒカリ」であるといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>