福島県二本松市でペットフードの製造などを行っている企業が、いわゆる「未利用魚」を使用したドックフードを開発し注目を浴びています。原材料となった『カナガシラ』とはどんな魚なのでしょう。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
「ペットフード」用の魚
犬といえば「肉食」「骨が大好き」というイメージが強い生き物。そのため、ドッグフードの材料も基本は肉なのだと思われてることが多いようです。
しかし実際はそうとも限らず、むしろ「魚」を原料としたドッグフードも少なくはありません。
実は犬にとって魚は栄養源としてとても優秀なもの。肉と比べて消化がよく、低カロリーでタンパク質も豊富、さらに青魚やサケに含まれるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸は犬の皮膚や毛などの組織を作る上で非常に重要な栄養素です。
このような理由から、魚を原料としたドッグフードは、アレルギー持ちや消化器官に不安のある犬、皮膚疾患に悩む犬の飼い主などから高い需要があるのです。
「未利用魚」で作るドッグフード
このほど、福島県二本松市でペットフードの製造などを行っている企業が、いわゆる「未利用魚」を使用したドックフードを開発し注目を浴びています。
この企業がドックフード原料として使用しているのは「カナガシラ」という魚。福島県によると、このカナガシラは県内の港で2021年は86t、今年は3ヵ月間で25.6tが水揚げされており、コンスタントに穫れる魚です。
しかしその一方、カナガシラの今年における1kgあたりの取引価格はたったの12円から74円と、ほぼ値がつかない魚です。まさに典型的な未利用魚であるといえるでしょう。
このように、一定の水揚げ量があってかつ価格も安いということが、カナガシラをはじめとした未利用魚がペットフードの原料として最適な理由なのです。今回のカナガシラ製ドックフードは好評で、会社の売上も伸びているそうです。(『注目の魚【カナガシラ】…「不漁」を打開する救世主になるのか〈福島発〉』福テレNEWS 2022.4.9)
カナガシラとは?
カナガシラは、大きく派手な胸鰭を持つことで知られるホウボウの近縁種で、両者はしばしば混同されています。カナガシラはホウボウより小型で、胸鰭はホウボウのように青くないことで区別することができます。
カナガシラは漢字で書くと「金頭」。頭部の皮膚と鱗が発達しており、まるで金属のように硬くなっているため「金頭」と呼ばれるそうです。この頭のために捌きづらく、そもそも頭部が大きいため歩留まりも良くないことが、未利用魚となっている理由でしょう。
しかしカナガシラの身はホウボウ同様に上品な白身で、刺身や寿司ネタなど生食しても非常に美味しい魚です。さらに全身にゼラチン質が多いため、火を通すと非常に良いダシが出ます。未利用魚にしておくのはとてももったいない魚で、個人的には鮮度の良いものを見かけたらかならず買いたいものです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>