猫の好物といえば魚、と日本人の多くは考えると思います。しかし実際のところ、魚は猫には「あまり与えるべきではない食材」の一つと言えます。
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猫に食べさせちゃダメな食材
数千年に渡り人類と生活をともにしてきた猫。世界中どんな場所でも愛される彼らは、飼い主と食卓を共にする機会も多くあったと考えられます。
しかし猫を飼っている人ならよく知っていることではありますが、「人の食べ物」のなかには「猫が食べてはいけないもの」はたくさんあります。例えばネギ類やぶどう、お茶などは、猫の体内に入ると思いもよらぬ深刻な影響を及ぼす恐れがあるため、間違って食べてしまわない要注意が必要です。
そんな「人はOKだが猫はだめ」な食材の中でも、とくに事故が多くなっているのが「魚介類」です。
イカ・タコ・貝類はダメ
猫に与えてはいけない食べ物の中で比較的有名なのが「イカ」。生のイカの内臓に含まれる「チアミナーゼ」という酵素が、猫の体内のビタミンB1を破壊してしまうのです。
これによりビタミンB1欠乏症になってしまった猫は、足のふらつきやよだれなどの症状を発症します。昔から、「イカを食べさせると猫が腰を抜かす」という格言が残っているのはこのためです。
チアミナーゼはイカだけでなく、タコや貝類の内臓にも含まれています。消化が悪いために猫が消化不良になってしまうリスクがあり、これらの食材を生で与えるのは厳禁です。
イワシやサバもダメ?
さて「イカや貝がだめなら、純粋な魚を与えるのは問題ないでしょ?」と思う人は多いかもしれません。実際、我が国では某国民的アニメの影響もあり「猫は魚が好物」という思い込みが広く存在しています。
しかし、実際は猫に与えてはいけない魚が存在します。その代表が、イワシやサンマ、サバなどの脂肪分の多い青魚。
このような魚の脂肪には、「不飽和脂肪酸」というタイプの油脂が多く含まれています。不飽和脂肪酸は我々ヒトの健康にはたいへん貢献してくれるのですが、猫が大量に摂取した場合は「黄色脂肪症」という病気の原因となります。
黄色脂肪症は脂肪にしこりができたり異常に固くなったりする病気で、罹患すると元気や食欲がなくなってしまいます。そのため青魚やサケのような「健康に良い魚」ほど猫にとってはリスクとなってしまうのです。
そもそも、もともと猫は肉食で、魚を食べることは多くなかったそう。しかし肉食文化の薄い日本で暮らしていくに当たり、猫は魚食に適応せざるを得ず、現在のように魚を食べるようになったといわれており、根本的に魚食にはそれほど向いていないという説もあるのです。
このほか、魚の尖った骨が喉に刺さるリスクなどもあるので、仮に猫が喜んでいるように見えたとしても、魚類を進んで与えるべきではないと言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>