今年の年末はイクラ抜き? 続くサケの不漁が引き起こすイクラの高騰

今年の年末はイクラ抜き? 続くサケの不漁が引き起こすイクラの高騰

年末年始はイクラの消費量が増える時期。しかしここ数年、サケの不漁によるイクラの価格高騰が続き、庶民にとっては厳しい状況となっています。

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その他 サカナ研究所

今年もイクラは高騰中

10月に入り、長引く暑さにもようやく終わりが見えてきました。海水温も徐々に低下し始め、北東日本では秋サケ漁が佳境を迎える時期です。

しかしここ数年、各地の秋サケ漁は不漁を極めた状態が続いています。そしてそれに伴い、その卵であるイクラも高騰が続いています。

今年の年末はイクラ抜き? 続くサケの不漁が引き起こすイクラの高騰この一杯でウン千円……?(提供:PhotoAC)

2015年には、1kg3000円~4000円で都心の小売店に卸されていた北海道産イクラ醤油漬け。そこから毎年2割ずつ値段が上がり、現在は1万3000円くらいになっているといいます。(『“秋の味覚”に異変? イクラにサンマ高騰相次ぎ打撃』FNNプライムオンライン 2021.9.21)

出口の見えないサケ不漁

ここ数年、北日本周辺の海水温が異常に高くなっており「海洋熱波」と呼ばれる状態が続いています。それに伴い冷水を好むサケの接岸が減り、厳しい不漁が続いているのです。

2000tに達した2018年を除くと、2017年度以降の北海道内のサケ水揚げは毎年概ね1500tあまりとなっており、これは2011年の半分以下の数値です。春の冷たい水温と、初夏の急激な水温上昇という2つの影響を受けて死んでしまうサケが非常に多くなっていると考えられており、これが極端な不漁にも影響していると思われます。

今年の年末はイクラ抜き? 続くサケの不漁が引き起こすイクラの高騰サケの接岸が年々減っている(提供:PhotoAC)

今年2021年は、漁期初期は歴史的不漁と呼ばれた昨年を上回る兆しもあったのですが、9月下旬から北海道南岸で発生した大規模赤潮によるものと思われるサケの大量斃死が起こってしまい、苦境に拍車がかかりました。

急激な水温上昇や大規模赤潮は地球温暖化による可能性があり、今後もこの不漁が続く可能性は低くない状況です。

頼みの綱の輸入品も……

日本よりもサケ類の漁獲が多い隣国ロシアでも、昨年から酷い不漁が続いているといいます。

当地では「イクラ」という言葉は魚卵全般を指すので、サケの卵のことはとくに「赤イクラ」と呼ぶそうです。しかしここ1、2年は日本のイクラ同様価格高騰が続いており、そのあまりの上昇ぶりに「赤じゃなくて黄金イクラだ」という声もあがっているそうです。

今年の年末はイクラ抜き? 続くサケの不漁が引き起こすイクラの高騰もはや「黄金」的価値(提供:PhotoAC)

このような状況下で、当然日本へのイクラの輸出量は減少しています。正月に欠かせない安価な「イクラの醤油漬け」は輸入ものがメイン原料なので、直接的な価格上昇の影響が出ています。さらに不漁は数年続いているため、冷凍のイクラ醤油漬け在庫もいまや底をつきつつあるといいます。

個人的な感覚ですが、小売価格で20000円/kgを超えると、小分けパックでも数千円になるので、とても購入する気にはなれません。しかし、首都圏でイクラ醤油漬けがその数値に到達するのも、今となっては時間の問題かもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>