「ゲノム編集」で身の厚みが20%アップした肉厚の養殖マダイが誕生

「ゲノム編集」で身の厚みが20%アップした肉厚の養殖マダイが誕生

「ゲノム編集」という技術によって、一般的な養殖マダイよりも筋肉量が多く美味なマダイが開発されました。この技術は一体どのようなものなのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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サカナ研究所 その他

ゲノム編集された養殖マダイ

いま、「ゲノム編集」によって生み出された肉厚なマダイが話題となっています。

この「肉厚マダイ」は京都大学と近畿大学が共同で品種改良をおこなったものです。普通のマダイと比べるとひと目で分かるほどに筋肉量が多く、通常は筋肉の厚みがさほど無い腹部にもしっかりと付いています。

「ゲノム編集」で身の厚みが20%アップした肉厚の養殖マダイが誕生養殖のマダイが肉厚に?(提供:PhotoAC)

通常のマダイと比べて厚さがおよそ1.2倍もあるこの養殖マダイ、かつてはマッスルマダイと呼ばれていたそうですが、いまは改め「肉厚マダイ」という名前で商品化が進められているとのことです。(『世界初 ゲノム編集でマダイが肉厚1.2倍に』テレ朝News 2021.9.23)

魚の「ゲノム編集」とは

さて、この「ゲノム編集」ですが、一体どういった技術なのでしょうか。

ゲノム編集は、いわゆる遺伝子組み換えとは違い、外部からの遺伝子情報を新たに加えることはせずに、もともとある遺伝子を変化させる技術です。

「肉厚マダイ」は、筋肉形成を制御する「ミオスタチン」という物質を生み出すための遺伝子を人工的に欠損させています。そのため筋肉形成がセーブされることがなく、大きく成長し筋肉質になります。

「ゲノム編集」で身の厚みが20%アップした肉厚の養殖マダイが誕生人工的に筋肉量を増やしている(提供:PhotoAC)

この研究については、欧州で育てられている「筋肉量が異常に多い肉牛品種」がヒントになったといいます。彼らは先天的にミオスタチン遺伝子が欠損しており、そのために筋肉量が多くなるのだそうです。

京都大学ではゲノム編集によって「食欲を抑える物質を制御する遺伝子」を欠損させたトラフグの開発も行っているそうです。満腹にならずに餌を摂取し続けるため成長が早く、天然物だと4年かかる2kgものが、たった1年半で育つのだそうです。

養殖の効率を上げるため

自然界にはもともと、遺伝子欠損により「大きくなる」「成長が早い」などといった特徴的な形質を得た魚の個体が存在します。このような、ヒトにとって利益となる形質を人工的に発生させることで、養殖の効率を上げたり、より味の良い魚を生み出すことが可能となります。

「ゲノム編集」で身の厚みが20%アップした肉厚の養殖マダイが誕生養殖技術に革新をもたらす(提供:PhotoAC)

現在、世界的な魚介類の需要増や人口増加を受けて、魚の養殖は世界的に急成長しています。しかしそれに伴い、狭い水域で密度の高い養殖を行うことによるさまざまな弊害が現れてもいるといいます。そういった状況を解決するための一つの策として、このゲノム編集養殖魚が求められる可能性があるといいます。

一方、ゲノム編集された個体には交配能力をもつものもあり、自然界に逸出すると野生個体と交配して遺伝子汚染を起こす可能性もあります。また、遺伝子組み換え魚同様に、その安全性が完全に保証されたわけでもありません。拙速な導入は求めず、しっかりと研究を重ねていく必要はまだあるように思えます。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>