実は無視できない「国内外来種」問題 エリアによってはナマズも対象?

実は無視できない「国内外来種」問題 エリアによってはナマズも対象?

一般的な外来種と比べ認知度の低い「国内外来種」。しかし、その危険性は無視することはできません。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

横浜で国内外来魚が増加

横浜市を流れる大小の二級河川群。そこで先日生物調査が実施されたのですが、そこでとある魚たちが増加し、問題になりつつあることがわかりました。それは「国内外来魚」。

2018~2019年の冬季と夏季に実施調査を行った横浜市環境科学研究所によると、本来は西日本に生息する「国内外来種」の淡水魚がこれらの河川で相次いで確認されているそうです。

実は無視できない「国内外来種」問題 エリアによってはナマズも対象?カワムツ(提供:PhotoAC)


調査では52種類の外来種が確認されたのですが、その中で魚類の外来種は22種にのぼり、その実に半数以上が「国内外来種」でした。研究所は「増加傾向で生態系に影響を及ぼす恐れがある」として、引き続き外来種の動向を監視するとしています。(『横浜の河川で国内外来魚が相次ぎ確認 新たに4種類』神奈川新聞 2021.5.13)

国内外来種とは

一般的に「外来種」と呼ばれるものは、海外から移入され、日本の環境に定着したものを指すことが多いです。

しかしそうではない、日本国内に産する生物種でも、もともとそれが生息していない地域に人為的に持ち込まれた場合、それも「外来種」として定義されます。それが「国内外来種」です。

実は無視できない「国内外来種」問題 エリアによってはナマズも対象?オイカワ(提供:PhotoAC)

国内外来種としてもっとも身近なものは各地のコイ。また他にも東海以東のハスや関東地方以東におけるカワムツ、北日本のオイカワ、琵琶湖・淀川水系以外のヘラブナ、東日本のアマゴや西日本のヤマメなども挙げられます。

意外なところでは、ナマズも江戸時代以前は西日本のみに生息していたと考えられており、東日本では国内外来種のひとつということができます。

国内外来種はなぜ問題なのか

国内外来種は日本在来の生物ではありますが、海外から移入された外来種と同じく、持ち込まれた地域の自然に悪い影響を及ぼすおそれがあります。

例えばコイは、「日本を代表する魚」と考えられていることや、「コイの泳ぐ清流」のようなポジティブなイメージがあることから、古い時代から全国各地に放流されてきました。

しかし彼らは非常に貪欲な魚で雑食性が高く、大型になりあらゆる生物を口にするため、各地の貴重な在来生物を次々に食害してきました。その結果いまや「コイしか棲めない川」と呼ぶにふさわしい場所も多くなっており、環境への害はあのブラックバスをも上回ると言われています。

実は無視できない「国内外来種」問題 エリアによってはナマズも対象?コイは非常に害の大きい外来種(提供:PhotoAC)

また直接的な食害がなくとも、全く異なる危険性が国内外来種にはあります。それは「その地域の在来種と容易に交雑してしまう」ということ。国外からの外来種と比べ、国内外来種は在来生物と遺伝的にさほど遠くないために、交雑が起きやすくなってしまうのです。

そのような交雑個体は遺伝子が撹乱されており、親である在来種と同種のものではなくなってしまう可能性があるほか、繁殖力や生命力が親たちより強い「高度な侵略性を獲得した個体」が生み出されてしまい、在来生物を圧迫する危険性も指摘されています。

仮に在来の生物であったとしても、素人判断による安易な自然環境への放出は百害あって一利なしと心得るべきでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>