「山本太郎」の好釣果へのターニングポイント:チヌの乗っ込み攻略法#1

「山本太郎」の好釣果へのターニングポイント:チヌの乗っ込み攻略法#1

名手・山本太郎氏が実釣の模様を詳しく解説していく『チヌ釣り伝道師!山本太郎の好釣果へのターニングポイント』。今回は、乗っ込み期の狙いや攻め方などについて紹介しよう。

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乗っ込みチヌを考察する

昨年の初夏以降、アウトドア一大ブームが訪れた。釣りも多分に漏れず、これまでに見ないほどの人気を博している。

チヌ釣りにおいても平日・週末を問わず、このところの人気ぶりは目を見張るものがあるが、緊急事態宣言が解除された早春、折しもカカリ釣りにとっては乗っ込みシーズン。チヌ釣り開幕のベストシーズンに突入した。そこで今回は、乗っ込み期のカカリ釣りをより楽しむための、私なりの攻略法を紹介したい。

チヌの乗っ込みはあいまい?

本来、チヌには「乗っ込み」といった行動の用語等はなく、元々はヘラブナの春行動から引用されたもの。ヘラブナは春先、雄・雌が一緒になって背ビレが水面を割るほどの浅瀬に乗っ込んで産卵という大役を果たす。

チヌにも当然のことながら産卵はあるが、ヘラブナほどのはっきりとしたメリハリのある行動ではなく、基本的には「なんとなく」や「いつ始まっていつ終わったか?」といった、実につかみどころのない産卵行動というのが実情である。

全国的にも最もカカリ釣り場が多い三重県を例に挙げると、乗っ込み=産卵行動にメリハリがあるといえるのが、鳥羽の的矢湾と生の浦(おおのうら)湾。例年3月上旬ごろから測ったように抱卵モノが釣れ始め、ゴールデンウィークごろまでダラダラと、ときには激しく釣れ続く。

「山本太郎」の好釣果へのターニングポイント:チヌの乗っ込み攻略法#1生の浦湾の釣り場風景(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

その他の釣り場は、年によっては同じようなメリハリのある行動を見せることもあるのだが、通常は前述した「なんとなく」のパターンが多い。

春チヌの行動を知る

さてチヌの習性・行動なのだが、湾内の水温が厳しく下げだす晩秋から初冬、体力を整えた個体は群れを作り集団行動で外洋の水温が安定した深場で越冬する。これらの集団はいわゆる回遊性だが、これとは逆に湾内でそのまま冬を過ごす「居着きモノ」も存在する。

私のこれまでの経験では、湾内で越冬したチヌは産卵行動も少し早く、1~2月にはすでに抱卵していることも少なくない。もちろん湾内での最低水温は三重県エリアでは9~12.3度まで下がるので、チヌはその低水温に耐えるだけの大型であることは付け加えておきたい。

「山本太郎」の好釣果へのターニングポイント:チヌの乗っ込み攻略法#1的矢湾の釣り場風景(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

メリハリのある的矢湾や生の浦湾では回遊性、その他の釣り場では小規模の回遊性と居着きが入り乱れて行動するようだが、湾の奥へ移動しながらエサをあさったり岩礁や海藻に身を隠したりと忙しく行動する。

「ナーバス」で「気まぐれ」

ご存じの通り、チヌは性転換する魚種として有名だが、全ての稚魚は雄として生まれ、数年後(体長約30cm)、今度はほとんど雌に変わっていく。聞いた話では5~10%程度が雄のまま残るそうだが、地域や諸条件によって差が出るので正解なデータは定かではない。

近年、早春からいきなり25cm級のカイズクラスも一緒になって行動するさまが確認されているが、私自身てっきりこれらのカイズたちも産卵行動に参加しているものと思っていた。たが、実のところ生殖器が未発達な可能性が高く、単に一緒に移動しているだけと考えた方がいいようだ。

20年近く前までは、この乗っ込み期にカイズクラスが釣れることはまれだったのだが、年を追うごとに小型チヌも目立つ気がする。8割以上が抱卵した雌、その後ろを少数の雄と予備軍の小型がピッタリとマークしながらエサ、産卵場を求めて活発に移動する。

主導権は完全に抱卵した雌にあり、性質はナーバス。朝からコツコツと作り上げたポイントにやっと寄せても、気に入らないことがあるとサッサと他へ移動してしまう気難しい時季でもある。

乗っ込み期のカカリ釣りをひとことでいうなら、入門者・初心者にも簡単に釣れるチャンスがある反面、釣り場・ポイントを外せば、あっさり裏切られてしまう「くじ運」も背中合わせだ。

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