3月3日は『金魚の日』 ひな人形と一緒に飾るのが一般的だった?

3月3日は『金魚の日』 ひな人形と一緒に飾るのが一般的だった?

来月3月3日は「ひな祭り」こと桃の節句。ひな人形や菱餅を飾り付けることは今でも普通に行われますが、かつてはその横に「金魚鉢」が置かれていたことは余り知られていません。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

ひな祭りにちなんで「金魚」を展示

来月3月3日は「女の子の行事」としてよく知られるひな祭り(桃の節句)です。これに関連し、岐阜県にはる世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふでは、ひな祭りに合わせたテーマ別水槽が登場しました。

水槽のなかを泳ぐのは、色鮮やかな金魚たち。陶器でできたひな人形のまわりに金魚鉢が配置され、そのまわりを金魚たちが舞うように泳いでいます。

3月3日は『金魚の日』 ひな人形と一緒に飾るのが一般的だった?ひな祭りに金魚!?(提供:PhotoAC)

水槽の担当者は「童謡を歌う子供たちの笑顔のような、華やかな金魚たちの姿を楽しんでほしい」と語っています。(『水の中に雛人形!? 雛人形と金魚が水中で共演します』アクア・トトぎふニュースリリース 2021.2.16)

ひな祭りと金魚の関係とは

この展示を見て「なぜ、ひな祭りに金魚を?」と不思議に思う人もいるかもしれ魔線。実はこれは、かつて我が国で一般的だった「ひな人形は金魚と一緒に飾る」という習慣をイメージしているものなのです。

現在、金魚といえばどちらかというと夏のイメージの魚。夏祭りの金魚すくいや、金魚鉢の涼し気な見た目がそのイメージの強化に貢献しているかもしれません。

3月3日は『金魚の日』 ひな人形と一緒に飾るのが一般的だった?金魚鉢の金魚(提供:PhotoAC)

しかし江戸時代頃は、金魚といえば2月の中旬から3月のはじめに売られるものでした。購入した金魚は金魚鉢にいれられ、ひな壇のそばに飾られるものだったためです。そのころ、金魚売りの売り声は、初春の風物詩だったのです。

なぜひな祭りに金魚が?

女の子が健やかに成長することを祈願するイベントであるひな祭り。かつては「紙などでつくった人形に穢れを移し、水(川や海)に流す」ことで厄を払う行事でした。この紙人形が現在のひな人形の起源となったという説があり、また現在でも「流し雛」の文化が残る場所もあります。

その後、ひな人形が基本的に「飾るもの」となってからも「水」に関わりのあるもの、例えばハマグリや魚を模したぬいぐるみ等を、ひな人形のそのそばに飾る風趣が残りました。

3月3日は『金魚の日』 ひな人形と一緒に飾るのが一般的だった?ひな人形(提供:PhotoAC)

一方、室町時代に中国から日本に入ってきた金魚は、はじめのうちは非常に高価なものでした。そのため江戸中期になり、武士の家計状況が厳しいものになってくると、藩士が副業として金魚の養殖を行うようになりました。

大量生産によって価格が下がった金魚は、一般庶民にも手の届くものとなり、金魚鉢とともに鑑賞物として定着していきました。それに伴い、雛人形とともに飾られるようになったのではないかと思われています。

様々な熱帯魚が飼育されるようになった現在でも、金魚は特別な美しさを持つ魚です。この春は、ひな人形とともに金魚鉢を飾ってみると、「主役」である女の子もより喜んでくれるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>