福井で幻の魚「アラレガコ」の生息調査 非常に美味でサケと同じ生態?

福井で幻の魚「アラレガコ」の生息調査 非常に美味でサケと同じ生態?

福井県を流れる一級河川・九頭竜川。その流域では古くから「アラレガコ」という魚が珍重されてきたのですが、最近は数が減ってしまっており、保護活動が行われています。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

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その他 サカナ研究所

「アラレガコ」の生態調査を実施

福井県の70%以上を占める広い流域面積を持ち、北陸地方を代表する大河でもある九頭竜川。古くから「暴れ川」「崩れ川」と恐れられてきた一方で、数多くの川の恵みを流域にもたらしてきました。

先日、その流域にある永平寺町で「アラレガコ」という魚の生態調査が行われました。現地では「アラレガコ」を古くから食用にする文化があり、天ぷらや甘露煮などで賞味されています。

福井で幻の魚「アラレガコ」の生息調査 非常に美味でサケと同じ生態?捕獲されたアラレガコ(提供:茸本朗)

しかし近年は数を減らしており、生息域の一部を天然記念物として保護した上で、2015年より生息数の調査を行っています。

「アラレガコ」は大きな竹籠を用いて行われる「エバ漁」という伝統漁法で漁獲されます。生態調査にもこのエバ漁が用いられており、そこには食文化とともに伝統漁法を守ろうという趣旨もあるようです。(『アラレガコ エバ漁で守る 永平寺町 九頭竜川で生息調査』中日新聞 2020.12.4)

アラレガコとは

この「アラレガコ」という魚、福井県の人以外はきっとほとんど聞いたことがないのではないかと思います。しかし、福井にしか棲息していない魚というわけではありません。

「アラレガコ」というのは福井県における地方名で、正式和名は「カマキリ」といいます。カジカという魚のグループの一種で、淡水性のカジカとしては日本最大種です。魚食性が強く、「鰓蓋に生えた棘で生きたアユを引っ掛けて捕らえる」という伝承があることから、アユカケという名前で呼ぶ地域も多いです。

福井で幻の魚「アラレガコ」の生息調査 非常に美味でサケと同じ生態?鰓蓋に硬い棘がある(提供:茸本朗)

なお、なぜ福井県でアラレガコと呼ばれているかと言うと、この魚が産卵のために川を下る際に「大きなお腹を川面に浮かべ、そこにあられの粒を乗せながら流れていく」からなのだそう。実際に川下りの際は流れに身を任せているように見えますが、お腹を水面に浮かべるということはないようです。

絶滅危惧種カマキリ

カマキリを食用にするのは福井県だけではなく、全国各地に食文化が存在します。かつて神奈川県では「カワフグ」と呼ばれたこともあるといい、淡水魚の中では非常に美味な部類といえます。

福井で幻の魚「アラレガコ」の生息調査 非常に美味でサケと同じ生態?唐揚げや甘露煮等で食べられる(提供:PhotoAC)

しかし、カマキリをはじめとする淡水性カジカは、水質の良い川にしか棲息できない指標動物です。それに加えカマキリは、サケなどと同じく、海で孵化し川に上る「両側回遊性」を持っています。

そのため、高度成長期に各地の河川で発生した水質汚濁や、治水のためにたくさんの堰が川に造成されたことにより、生息域を奪われ数を大きく減らしてしまいました。堰に付設された魚道も、カマキリのような遊泳力の低い魚にとっては超えられないハードルとなってしまっており、効果は低いようです。

筆者も一度だけカマキリを食したことがありますが、まるで海のオコゼのように締まった身と、骨から出る出汁の旨さに感動した記憶があります。この美味しい魚の食文化を守るためにも、より多くの地域で生態調査や保護活動が行われることを願います。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>