若狭湾の「敦賀ふぐ」水揚げが最盛期 「抜歯」で身が美味しくなる?

若狭湾の「敦賀ふぐ」水揚げが最盛期 「抜歯」で身が美味しくなる?

若狭湾に面し、嶺南地方の代表都市として知られる福井県敦賀市。ここで養殖されるトラフグは「敦賀とらふぐ」の名前でブランドになっています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

福井のブランドフグ「敦賀ふぐ」

福井県敦賀市にある西浦地区。ここは実は、福井県内最大の養殖トラフグ産地です。西浦では12月に入ってフグの出荷が本格化しており、800gから1.2kgほどのサイズに成長した食べごろのフグが、連日生簀から水揚げされています。

若狭湾の「敦賀ふぐ」水揚げが最盛期 「抜歯」で身が美味しくなる?養殖が盛んなトラフグ(提供:PhotoAC)

敦賀市で生産される養殖トラフグは「敦賀ふぐ」の名前でブランドとなっており、高い評価を受けています。例年、忘年会などでトラフグの需要が高まる12月にかけて約5万匹を出荷しているといい、今年もコロナ禍の影響があるものの、12月までに同程度、来年3月までに合計6、7万匹を出荷予定とのことです。(『丸々肥えた「最高の食材」敦賀ふぐ水揚げ 福井県敦賀市で出荷本格化』福井新聞オンライン 2020.12.4)

美味しさの秘密

「敦賀ふぐ」は敦賀湾に浮かべた生簀で養殖されているのですが、実はこの敦賀市は日本最北端のトラフグ養殖場となっています。そしてそれが敦賀ふぐの美味しさの大きな秘訣となっているのです。

若狭湾の「敦賀ふぐ」水揚げが最盛期 「抜歯」で身が美味しくなる?トラフグの代表料理「てっちり」(提供:PhotoAC)

本来はやや南方系のフグであるトラフグは、基本的には西日本の温かい海に棲息しています。一方で敦賀市が面する敦賀湾は水温が低く、本来のトラフグ生育適温からは離れています。年間の海水温の差も大きく、冬の水温はトラフグの生育できるギリギリの温度なのだそうです。

そのような低水温の海でゆっくり育つことにより、敦賀ふぐは身の締まりがよく、味も濃厚になるのだそうです。

敦賀ふぐのこだわり

「敦賀ふぐ」の養殖方法には、他にもいくつかのこだわりがあります。

例えば、トラフグを育てる過程の中に「歯切り作業」というものがあります。フグの仲間はいずれも鋭い歯を持っており、飼育をしている最中に互いに噛みつきあって傷ついたり、養殖生簀の網を食いちぎってしまうことがあります。そのため、稚魚がある程度成長した段階でその歯を切る必要があるのです。

しかし、一般的なフグの養殖においてはこの歯切り作業を「歯が伸びるたびに切る」という形で行うのですが、敦賀ふぐでは「抜歯する」という方法で行うのだそう。こうすることで、フグにとって大きなストレスとなるこの作業を一生で一度だけに留めることができるのです。

若狭湾の「敦賀ふぐ」水揚げが最盛期 「抜歯」で身が美味しくなる?養殖トラフグのてっさ(提供:PhotoAC)

また、研究の中で「ビール酵母」がトラフグの健康促進になることがわかり、飼料に取り入れているといいます。低水温期でトラフグがあまり餌を積極的に食べないときには時間をかけて給餌するなど、一匹一匹丁寧に育てることにこだわっているのだそう。(『敦賀ふぐの宿なかいが育てる『敦賀ふぐ』と『敦賀真鯛』』敦賀ふぐの宿なかいHP)

これらの工夫が詰まった敦賀ふぐ、もし現地に行くことがあればぜひ食べてみたいですね!

<脇本 哲朗/サカナ研究所>