神奈川県水産技術センターが、小型魚の背骨を簡単に抜く器具を開発し、特許を取得しました。小型魚・未利用魚の利用促進につながるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:神奈川県水産技術センター)
「魚体中骨抜き具」とは
神奈川県水産技術センターが、「魚体中骨抜き具」という道具の特許を取得し、ニュースとなっています。発明したのは同センター企画指導部の主任研究員で、名前の通り小型魚の背骨を簡単に抜くことができる道具です。
この「魚体中骨抜き具」はポリエチレン製で、長さ15cm、直径1cmほどの硬く丈夫で透明なストロー状になっています。先端は波打つようにカットされており、魚体に差し込むときに大きな力が必要にならないよう設計されています。
使い方はとても簡単。頭部と尾っぽを切った小型魚の背骨部分を、器具の中に通すように刺し、貫通させて抜き取るだけ。3枚に下ろしたりすることなく、小魚の背骨を取り除くことができます。
なお、魚体中骨抜き具は円筒形の魚を処理する道具で、小型のサバやムロアジ、サンマなどに適してい
特産グルメの開発過程で誕生
この「魚体中骨抜き具」、実はとある「特産グルメ」の開発過程で誕生したものでした。
2014年に、神奈川県の水産関係者より同センターに「気軽に食べ歩きできる水産加工品」の開発依頼があったそうです。その結果、足掛け3年を要して誕生したのが新しい名物料理「かます棒」。
これは、小田原漁港で多く水揚げされる「ヤマトカマス」の中骨を抜いて、串を刺し衣をつけて揚げたフライです。特産グルメとして人気を博しています。
この「かます棒」の開発時に「中骨を簡単に抜く道具があれば」との願いから発明されたのが「魚体中骨抜き具」でした。構造こそシンプルですが、カマスの魚体を崩さず中骨だけを上手に抜くのは簡単なことではありません。道具の素材や太さ、長さを変えて約300種類を試作したそうです。
かます棒の発売開始と同じ時期に特許申請し、このたび無事取得されたということです。
小型魚・未利用魚の利用促進に?
この「魚体中骨抜き具」を使用すると、誰でも簡単に、形状を残しつつ小魚の中骨を抜くことができます。
そのため現在、この中骨抜き具を使って小型のサバやサンマ、イワシなどを加工し、フライ等の食品にしようという動きが全国で起きているとのこと。
定置網漁などで混獲される小型の魚は加工に手間がかかる割に魚価が安く、結果として水揚げされても「未利用魚」として廃棄されたり、動物向けの飼料等になってしまうことが多いと言われています。
「魚体中骨抜き具」を使えばこれらの小魚の加工も用意になるため、食品として活用される道が拓けると予想されます。
これが小型魚や未利用魚の利用の拡大につながること、ひいては魚食の拡大・食料自給率の向上につながっていくことが大きく期待されています。
(参考:『小魚の背骨楽々抜ける 三浦・県水産技術センターが特許取得』神奈川新聞 2020.10.22)
画像提供:神奈川県水産技術センター
<脇本 哲朗/サカナ研究所>