嫌われがちな『キュウセンベラ』は実は美味 専門に狙う乗合船が存在?

嫌われがちな『キュウセンベラ』は実は美味 専門に狙う乗合船が存在?

海釣りの外道の定番であるキュウセンベラ。しかし、関西では昔から一定の人気があり、昔は専門に狙う乗合船も出ていたほど。今回はその味や料理例を紹介しよう。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部)

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その他 お役立ち

キュウセンベラとは

意外と知られていないキュウセンベラの生態について紹介しよう。

性転換するサカナ

キュウセンベラは性転換する魚で、雌を赤ベラ、雄を青ベラと呼ぶ。ただし、生まれつきの雄もいて体色だけではわかりにくい。この雄は性転換した雄に割り込んで産卵するほか、数匹で雌を追尾しての産卵も報告されている。なんと適応力があり、子孫を残すいじらしい努力なのだろう。

生態

また夜は砂に潜り眠るのだが、砂に潜って冬眠もするし、驚いた時や外敵に襲われても砂の中に潜る。泳ぎながらキュウセンを見つけても少し目を離すといなくなっているのは、砂に潜って隠れてしまうため。あの特有のヌメリが砂の中で体を保護しているようだ。

普通ベラ科の魚は岩礁帯や珊瑚礁に多く、眠る時には身体のヌメリで袋状のものを作りその中で眠るものも多い。

嫌われがちな『キュウセンベラ』は実は美味 専門に狙う乗合船が存在?雌のキュウセンベラ(撮影:TSURINEWS関西編集部)

瀬戸内では人気の味

ひところの暑さはいくぶんマシになったが、海水温はまだまだ上昇する。今しばらく主役は夏の魚である。夏の魚というとまっさきに思い浮かぶのが、ベラ。

はるか昔(?)昭和の時代に、当時の私にはまだ購入できないくらいの高いハリスのテレビコマーシャルで、水着のおねえさんが真っ白の砂浜でベラを手の中で泳がしながらリリースしていた。このコマーシャルが印象的で、ベラは水着の女性に好かれていると思い込んでいた。

私のような兵庫県の瀬戸内海側で生まれ育ったものにとって、ベラと言えば標準和名キュウセンのことで、ササノハベラ(ホシ、アカ)ニシキベラやホンベラ、コブダイの幼体なんかもイソベラでくくってしまう。鮮魚店でも普通に並んでいるし、釣り船の対象魚にもなっている(最近は減ってきた)。それほど瀬戸内ではキュウセンは人気がある。

関東では嫌われ者?

関西では一定の人気があるにもかかわらず、関東では人気薄だとか。おそらく、エサ取りが抜群にうまいというのが嫌われる要因のひとつだろう。カワハギ釣りではベラに邪魔されるのは当たり前、牙顎歯や咽頭歯が発達し硬いエサも食べられるようになっているので、底物釣りでは高価なウニやヤドカリがイソベラなどの攻撃で数秒しか持たない。

だが考え方を変えれば、どこでも釣れる裏切らない魚でもあり、ここの海には魚がいないと思っていてもベラだけは相手をしてくれる貴重な魚である。

人気がない理由

また、不人気なのはあの派手な色も原因していることだろう。水着のおねえさんを思い浮かべるより先に気持ち悪いと思ってしまうのかもしれない。夏目漱石の坊ちゃんでも、縞のある金魚と書いてあった。

もちろん鱗にも色が付いていて、多く大きい。この派手なウロコをとって皮をひくと、真っ白な身が待ち構えている。皮を引く場合は、鱗付きのまま3枚におろす。ヌメッておろしにくい場合は塩で洗うといい。

そして、食べる際に小骨が多いというのも嫌われている原因なのだろう。特に小型は食べにくいのも考えもの。

ベラの料理例

上記の理由から、ベラは「南蛮漬け」に向いている魚でもある。アジの南蛮漬け同様おいしいし、骨も気にならない。また大型の青ベラ(キュウセンのオス)は刺し身にすれば甘さとそのねっとりした食感はアマダイに近い。

嫌われがちな『キュウセンベラ』は実は美味 専門に狙う乗合船が存在?型のいい青ベラはぜひ刺し身で(撮影:TSURINEWS関西編集部)

ただし瀬戸内海で釣ったキュウセンは上品な甘さがあるが、南紀や紀東で釣ったキュウセンは確かに味が落ちた。冬場の水温の低さで冬眠時間が長いからかと推察したが、日本海側のベラも瀬戸内のベラと味が違う。しかし素焼きにして麺つゆに生姜を入れたものに浸して食べれば、どこのキュウセンかは分からない。また単に煮つけてから焼いたものもおいしい。

嫌われがちな『キュウセンベラ』は実は美味 専門に狙う乗合船が存在?ベラの塩焼き(撮影:TSURINEWS関西編集部)

ベラの釣り方

ベラ(キュウセン)狙いの釣りでは小バリ、小エサ。特にマムシ(イワイソメ)をハサミで5mmから1cmほどに切って使うか、マムシをぶんぶんコマのようにして細く延ばしてハリいっぱいに刺す。

ミチイトがナイロンの場合はアタリが取りにくく空アワセで釣れることが多かったが、PEラインを使うようになってアタリが分かりやすく面白い釣りとなった。

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