人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?

人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?

高橋哲也さんの「人生最高フィッシング」。思い出深い釣りを振り返ってもらいながら、それを通して学んだことや魅力について語ってもらった。

(アイキャッチ画像提供:高橋哲也)

アバター画像 TSURINEWS編集部

インタビュー その他

ニュージーランドでの思い出

人生最高の釣りは?

高橋哲也さん

15年ほど前、ニュージーランドにテレビ番組の撮影で行ったときの現地ガイドの人の表情、一生忘れられないなぁ。

 

どんな釣り?

高橋哲也さん

磯からヒラマサの大きいのを狙ったんだけどね……。これまで何度かニュージーランドで同じようなロケはやっていて、そのどれもが成功していたんだけど、このときは台風が接近していて、どこも濁りが入ってどうしようもない状況。

 

現地ガイドの心遣い

現地ガイドはどんな人でしたか?

高橋哲也さん

ピヒさんという現地の人だったんだけど、そんな彼でも釣り場を探すのさえ一大事という状況。一日目は釣りができる場所を探して歩いたものの、戻る道がなくなって、危うく遭難しかけるほど。どんどんピヒさんの笑顔が消えていくのが辛くてね。とにかく責任感がある人だったから、なおさらだよね。

「こういう状況で釣れないことは分かってるから心配するな。誰のせいでもないよ」って言いたいけど、そんな微妙なニュアンスがなかなか伝わらないのが悔しかったね。

 

2日目以降は?

高橋哲也さん

2日目、3日目もダメでようやく4日目に一瞬だけ潮が澄んだ場所を見つけて、イカの1匹付けの底狙いで5kgのマダイを上げたけど、こんなの釣り方の問題でも誰の責任でもないよね。でも、ガイドとしては責任感があるから、まだ表情が明るくならないんだよ……。

 

釣れれば言いわけじゃない

5日目(最終日)は?

高橋哲也さん

よほど悔しかったのか、先住民族のマオリ族の村に話をつけて、普通では入れないような場所に連れて行ってくれたけど、台風で濁りはひどくなる一方で、釣果としてはチャリコ1、2尾だった。だけど、もう釣果とかは関係なくて、これだけ僕たちのために頑張ってくれて、ほんの少しだけど成果を出せたのがとにかく飛び上がるほど嬉しかった(笑)。やっぱり釣りって「ただ釣れればいいというものじゃないな」って思ったよ。

 

自然は常にかわる

やはり大きさや数ではない?

高橋哲也さん

間違いないね。50kg以上のマグロや、磯釣りでも大きい魚をさんざん釣ってきていたけど、そんなのさえどうでもいいと思えるような喜びだった。

 

人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?テレビ撮影で大物を数多く釣ってきた(提供:高橋哲也)

そのほかに実感したことは?

高橋哲也さん

よく仲間にも言うけど「釣りって上空を吹いている風と同じで、いつも一緒ではない」「”常にかわる”という本質は変わらない」というのを実感したよ。

「自然相手なので釣れないことがあるのはちゃんと理解しているよ」っていうことを、ピヒさんに上手く伝えられなかったのだけが心残りだね。

 

沖縄での生活

三宅島に沖縄、海外とさまざまな場所で釣りしてきたからこそ感じることも多いと思いますが、三宅島の生活に比べて現在の沖縄での生活はいかがですか?

高橋哲也さん

三宅島は荒れやすいし、かなり厳しい海だったから、それに比べれば沖縄ではのんびりと楽しむことができているよ。でも、やっぱり厳しい海から学んだことは多いし、それが今に生きている。やっぱり、肌で風を感じて竿をだす経験って大事だと思う。

 

人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?国内外を問わず真っ向勝負(提供:高橋哲也)

アジア各国の釣りの印象

最近では台湾などアジア各国での釣行も多いですが、どんな印象ですか?

高橋哲也さん

沖縄に住んだのもこういった国々に行きやすいからというのが理由のひとつで、とても気に入っているよ。台湾の釣り人は、ひとことでいえば、いい意味で「古きよき昭和の釣り人」って感じかな。かつて夢中になった釣りがあるような気がするんだ。

 

譲り合いを大切にする

「お国柄」といった部分で違いを感じることはありますか?

高橋哲也さん

特に感心するのは、慣習だと思うけど「譲り合う」ことを大事にしているね。例えば、ある磯で青物を狙うとするよね。そうすると釣れる場所ってどうしても限られてくる。そういう時に5人が、その磯に上っているとしたら、彼らは譲り合って順番に竿を出す。日本だと「いい場所をとった人のひとり勝ち」みたいなところがあるけど、こういう点は見習わないといけないね。

 

日本での経験

日本で体験した「古きよき昭和の釣り」で印象に残っていることはありますか?

高橋哲也さん

小学校3年だったか4年生のころ、たたら浜(※編集部注:神奈川・観音崎~鴨居の間にある小規模な砂浜)でのカレイ。釣りの考え方が変わったね。

 

何があったんですか?

高橋哲也さん

当時、投げ釣りは大人気で、釣りに行く電車では黄色い布製のバッカンに丸めたつりニュースを突っ込んでたり、読んでいる人がたくさんいたような時代。

それで、あんな小さい砂浜にたくさんの釣り人が何本も竿を出していたんだけど、あまり釣れないよね。それで、浜の脇の小磯みたいなところに行ってみると、地元の釣り人がウミタナゴを釣るようなノベ竿を使ったウキ釣りでバンバン大きいカレイを上げているわけ。当時は「カレイ=投げ釣り」だったし、図鑑にも「投げ釣りで狙う」って書いてあったから「何だあれは!」っていう衝撃。

 

いろいろな釣りにハマるきっかけ

なぜウキ釣りで釣ることができた?

高橋哲也さん

すぐには分からなかったけど、ウキ下がかなり長かった。ようするに、ウキ下を長くして底をはうようにすれば、投げ釣りもウキ釣りも変わらないんだよね(笑)。「カレイ=投げ釣り」とか、そういった決めつけが一気に崩れていったし「ウキ釣りでカレイを釣ってもいいんだ」と思って、いろいろな釣りにのめり込むきっかけになった。

 

人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?ジャンルを問わず釣りを楽しむ(提供:高橋哲也)

釣り好き少年へのメッセージ

高橋少年のような釣り好きの子どもたちに何かメッセージはありますか?

高橋哲也さん

よくイベントとかで子どもには「インストラクターを目指しちゃダメだよ」って言っている。インストラクターとかプロって、誰かのために釣りをするわけだから、その前にまずは自分自身が実際にたくさん釣り場にいって頬で風を感じて、目で観察して、五感全部を使って楽しむことが大事だと伝えているよ。

 

高橋哲也(たかはしてつや)さんプロフィール

1965年生まれ、神奈川県出身。沖縄県在住。幼少期から釣りに打ち込み、その熱は父親も巻き込み(?)三宅島へ移住。そして現在は沖縄在住。独自のスタイルで磯釣り界をリードし、今や日本を飛び越え海外の磯、特にアジア各国へ精力的に釣行。

人生最高フィッシング:高橋哲也 「プロを目指しちゃダメ」の真意とは?Youtubeでも世界の釣りを発信(提供:高橋哲也)
この記事は『週刊つりニュース関東版』2020年6月12日号に掲載された記事を再編集したものになります。