皮膚がん予防や美白ブームで悪者にされがちな紫外線ですが、骨の形成や維持に重要な役割を果たしているビタミンDの生成にはなくてはならない要素でもあります。今回は『侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック』でもおなじみ、現役ドクターであられる近藤先生に解説してもらいました。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)
ビタミンDとは
骨の形成や維持に重要な役割を果たしているビタミンDは、100年前からその名のとおり、ビタミンとされてきました。そもそも、ビタミンとは「微量で生理機能を調節する有機物で、ヒトの体内で生成されない必須栄養で食べ物から摂取するもの」です。しかし、ビタミンDだけは、紫外線によってヒトの体内で生成されることがわかっているのです。つまり、ビタミンDは長年、ビタミンの一つとされてきましたが、実はビタミンではなくビタミンDは、副腎皮質ホルモンや性ホルモンと同じくステロイドホルモンなのです。
他のホルモンは水溶性ホルモンで血液中を漂い、細胞表面の細胞膜にある「細胞膜受容体」に結合して、細胞内の酵素を活性化します。これに対して、ステロイドホルモンは脂溶性ホルモンともいい、細胞膜を通り抜けて、遺伝子のある核内に入り込んで「核内受容体」に結合することによって、遺伝子を活性化するのです。
紫外線を浴びると、光反応によって皮下にあるコレステロールがビタミンDに変わることが解明されています。ですからビタミンDは「日光ホルモン」とも呼ばれています。
紫外線・ビタミンDが不足すると
紫外線不足がビタミンD欠乏症を招くと、全身の細胞内の遺伝子が正常に働かないために、次のような病気をきたすことが報告されています。
・がん :乳がん、大腸がん、前立腺がん、膵臓がん
・アレルギー・自己免疫疾患 : 1型糖尿病、リウマチ性関節炎、多発性硬化症
・精神科疾患 : うつ、アルツハイマー型認知症、統合失調症
・呼吸器疾患 : 結核、インフルエンザ、肺活量低下、ぜんそく
・循環器疾患 : 高血圧、心筋梗塞、心不全、末梢血管疾患
・臓器不全 : 肝不全、腎不全、腸の吸収不全
・不妊症 : 妊娠中毒、帝王切開、新生児疾患
・運動機能障害 :骨粗しょう症、関節炎、骨軟化症、くる病、筋力低下、筋肉痛
ビタミンDは野菜や穀物、豆、イモ類にはほとんと含まれていません。魚はカルシウムが多いのて骨の健康には優れた食品であることはご存知だと思いますが、ビタミンDが豊富に含まれます。またきのこ類にもビタミンDは多く含まれます。ですから魚やきのこは積極的に食べるべきです。そして、ビタミンD不足にならないためには日光・紫外線を浴びることです。
近年我が国の女性の乳がん発生率が増加していることには、1985年に始まった「紫外線予防キャンペーン」で、紫外線を悪者と決めつけ紫外線を浴びることを極端に避けてきたことが関係している可能性が考えられます。
自分の皮膚タイプを知って賢く紫外線と付き合う
皮膚にはメラニン色素があり、紫外線防御に働いています。紫外線を浴びたときの反応には、赤くなる「紅斑」と黒くなる「黒化」があり、その反応は皮膚の色によって異なります。これを「スキンタイプ」といって、次のように分類されます(Fitzpatrickの分類)。
Ⅰ型 :必ず赤くなるが黒くならない。皮膚の色は白色
Ⅱ型 : 必ず赤くなり、そのあと少し黒くなる。皮膚色は白から淡褐色
Ⅲ型 : ときどき赤くなり、そのあと黒くなる。皮膚色は淡褐色から褐色
Ⅳ型 : 赤くはならず、必ず黒くなる。褐色から地黒
Ⅴ型 :かなり黒い。地黒
Ⅵ型 :黒色
日本人のスキンタイプは、3種類に分類されています(Japanese Skin Type)。
JST1 :紫外線に当たると赤くなるがあまり黒くならない。色白
JST2 :赤くなり、あとで黒くなる。普通色
JST3 : 赤くならずに黒くなる。地黒
紅斑反応は、いわゆる「日やけど(サンバーン)」です。紅斑反応を起こすのに必要な最少紫外線量を最少紅斑量(MED)といいます。スキンタイプの数字が大きくなるほどMEDが大きくなるのです。黒化反応は、いわゆる「日やけ(サンタン)」で、次の二つがあります。
・即時黒化 :A波紫外線を浴びたときは、皮膚にもともとある還元型メラニン重合体(無色)が酸化して酸化型メラニンになり、黒化を起こします。即時黒化は、紅斑反応を予防する生体の防御反応です。一晩寝ると成長ホルモンの作用で再び還元型に戻ります。
・遅発型黒化(色素沈着):B波紫外線による紅斑反応が消退するころに、メラニン色素細胞が増加して色素沈着を起こします。
JST1、2の人が無防備に紫外線B波を浴びると日やけどを起こし、紅斑や水疱形成を生じます。黒くなってからは気にせず日光を浴びれば良いのですが、JST1、2の人は白い間は日焼け止めクリームやオイルを利用しましょう。日焼け止めクリームやオイルはこの最少紅斑量(MED)を伸ばす効果があるのです。ですからオイルを塗っておくと赤くならずに黒く日やけがしやすいというわけです。
日焼けサロン、いわゆる日サロの光は紫外線A波なのでJST1、2の人は、日光にあたる前に日サロで日やけをして、すこし黒く下地を作れば紅斑反応が起きにくくなりますよ。
紫外線にあたって健康に!
以上述べたように 日光に含まれる紫外線は健康を損なう悪者どころか、体内でビタミンDをつくる救世主とも言えます。
女性も男性も極端な紫外線予防の考えを改め、積極的に日光・紫外線にあたりましょう。特に今年はコロナの時期の外出自粛で、すでに紫外線にあたる時間が少なくなり、ビタミンD不足が起こりやすくなっていると思われます。
コロナが収束し、心置きなく再び釣りが楽しめるようになった時には、水分摂取と衣類の工夫で適切な熱中症対策を行った上で、自分の皮膚タイプに適したスキンケアを行いつつ精一杯、太陽の光、紫外線にあたりましょう!
<近藤惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>