不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明

不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明

かき揚げの具材として愛される春の食材・サクラエビ。ここ数年ひどい不漁が続き、様々な資源回復策がとられてきました。今年の状況はどうなっているのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

春の味覚サクラエビ

桜の季節になると美味しくなる海産物はいくつかありますが、そのひとつにサクラエビがあります。まさに桜色といったきれいなピンク色が食欲をそそり、「桜えびのかきあげ」は全国的な人気を誇る料理です。

不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明かき揚げ界の主役とも言える存在(提供:PhoteAC)

このサクラエビ、実は深海生物で、通常は水深500mほどの深海に棲息しています。日本近海にも広く分布していますが、漁が行われているのは静岡県にある駿河湾のみ。「大河の流れ込む浜から急激に深くなる」という特徴的な地形が、サクラエビ漁を可能にしているのです。

漁期は年に2回あり、産卵を控えて岸寄りの浅場に浮上してくる春(4~6月)と、産卵を終えて深場に戻る前の秋(10~12月)にそれぞれ行われています。

近年はひどい不漁

そんなサクラエビですが、ここ数年はひどい不漁が続いています。とくに2018年の不漁は非常に深刻なもので、春の漁期の水揚げは史上最低となる312tのみでした。2008年には1298tを記録しており、10年間で4分の1未満になってしまったことになります。さらに、秋漁の前に行われる資源調査漁で、漁獲に適さない3.5cm未満の稚エビが大多数を占めたため、結局その年は秋漁自体が中止になりました。(「サクラエビ不漁 漁打ち切り、競り価格高騰」中日新聞,2018.6)

翌2019年は、春漁において「頭黒」と呼ばれる産卵間近の個体が多く漁獲されたため、資源保護の観点から5月一杯で漁が打ち切られました。この年の春漁の漁獲は85tにとどまり、1kg1万円近い高値がつくこともあったといいます。

不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明最近では超高級品になってしまっている(提供:PhoteAC)

この年には史上初めて「禁漁区」が設けられ、サクラエビが産卵を行うと見られる駿河湾奥・富士川河口沖の地区では漁ができないことになりました。この処置は秋漁でも継続され、厳しい規制の中で翌年の漁獲高向上に期待が寄せられていました。(「駿河湾のサクラエビ春漁 記録的不漁で打ち切り」産経新聞,2019.6)

2020年の春漁

今年2020年も、例年通り4月5日に春漁が解禁されました。2月に行われた試験操業では、前年に群れが見られず禁漁区とされた湾奥から湾西部の広いエリアで0歳エビ(体長2~3センチ)の群れが確認され「資源回復に良い兆候」との見解が出されました。ただこのサイズは漁獲には向かず、また数自体も多くはないため、回復傾向にあるとまでは言えない状況となっています。(「自主規制継続を確認、湾奥に群れ サクラエビ漁情報連絡会」静岡新聞,2020.2)

この結果を受け、産卵地とされている湾奥を中心に引き続き禁漁区を設定するとみられます。ただ一方で、昨年よりも状況が改善されたとして、禁漁区を「富士川沖、田子の浦沖、蒲原・由比沖など湾奥の一部」に狭めるほか、同時に操業できる船の数を増やすなど、若干緩和した形で規制を実施することが予定されています。

不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明駿河湾奥は禁漁区に指定された(提供:PhoteAC)

また、網を入れる前に試験網を投入し、「頭黒」が全体の3分の1を占めたらその群れには網を入れない、さらに複数の海域でその状況が確認されれば、漁自体を見合わせる、など柔軟な対応を行うことも検討されています。(「サクラエビ春漁、湾奥の禁漁区維持 投網時間など一部緩和」静岡新聞,2020.3)

サクラエビはなぜ採れなくなったのか

2018年の不漁を受け、静岡県の桜えび漁業組合は「黒潮大蛇行により、サクラエビの成長を促す温かい海水が駿河湾奥に入ってこなくなったこと」を不漁の原因と指摘していました。(「サクラエビ不漁 漁打ち切り、競り価格高騰」中日新聞,2018.6)しかし、近年の研究で、また別の要因が関連している可能性が指摘されています。

駿河湾の最も奥まったところに注ぐ富士川の河口沖合には、富士山などへの降水が海中に湧き出している場所があり、その周囲がサクラエビの産卵場所とされています。しかし近年、その周囲に河川や放水路から流出した土砂が堆積し、湧水が塞がれていることがわかりました。

不漁続きのサクラエビは復活するか 2020年も続く規制と見えてきた光明富士川河口では漁獲されたばかりのサクラエビを干す景色が有名(提供:PhoteAC)

これが不漁につながっているのか、県は有識者による研究会を設置し、期間を定めて原因を追うことにしています。(「サクラエビ、専門家が研究会発足へ 再生プラン提言目指す」静岡新聞,2019.12)サクラエビの味覚を愛するものとして、一刻も早く原因が判明し、資源回復への抜本的対策が見つかることを願ってやみません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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