春を代表するサカナの一つが「サワラ」。旬のサカナは脂がたっぷりのっているので、どんな食べ方でも美味しいですが、試してほしい食べ方があります。それが「タタキ」。今回は自宅で簡単に出来る美味しいサワラのタタキの作り方をご紹介します。
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「タタキ」とはどういうものか
「タタキ」というのは、柵に取ったサカナの身に串を打ち、炭火や藁などで表面を軽く炙り、これを素早く冷した後に切り分け、薬味や調味料をつける食べ方のこと言います。
サカナではタタキと言いますが、肉料理だとローストビーフが近いものでしょう。
表面は焼けているのに中は焼けていない半生の状態で食べます。
一般的にタタキに用いられるサカナで有名なのはカツオですが、マグロやサワラ、地方によってはウツボなどが用いられることもあります。
表面を火で炙ることにより、香ばしさがUPし、同時に水分が減ることで食感も増します。
さらに味を凝縮させることができるので、非常に簡単でお得な食べ方と言えるでしょう。
アジのたたきは別料理
「タタキ」という料理には他にも、サカナの身を包丁の刃や峰(背の部分)・脇側で叩き、薬味や調味料と馴染みやすくした料理もあります。
例えば有名なものだと『アジのたたき』でしょう。
三枚におろして皮を剥いだ身を包丁で小さめに叩き切り、ネギや生姜などを叩き合わせた料理です。
千葉県の郷土料理で有名な「なめろう」もこのたたき料理の一つです。
これは火で炙るタタキとは全くの別物ですが、調理中に「叩く」動作があったことから「たたき」と呼ばれるようになったと言われています。
タタキの由来
ではなぜ、火で炙っているのに「タタキ」と呼ぶようになったのでしょうか。
これには諸説ありますが、もっとも有力なのは、
『魚肉に予め塩をする際に包丁の腹や手のひらで叩いた。あるいは、焼いた食材に薬味をまぶして包丁の腹や手のひらで叩いた』
というもので、下味や調味料を染み込ませるためにサカナの身を叩いたのが由縁になっているようです。
昔は塩などの調味料は大変貴重だったため、わずかな調味料で味付けをする必要があったという時代背景もあるようです。
「タタキ」と「炙り」の違い
「タタキ」と似て非なる料理、それは「炙り」です。
炙りというのは、皮目をバーナーなどで焼き、香ばしさをアップさせる料理です。
全体を焼くわけではなく、皮目のみで、味付けもしない点が「タタキ」とは異なります。
混同してしまうかもしれませんが、間違えないようにしましょう。
「タタキ」に適しているサカナ
どのようなサカナでも、美味しく食べられるタタキですが、特に適しているのは、赤身魚でしょう。
カツオやサワラなどの青魚は刺し身のままでも美味しいですが、サカナ独特の生臭さがあるのも事実です。
火で炙ることにより、余計な脂が身から出ていくとともに、一緒に生臭さを生むにおい成分も一緒に出ていきます。
また、ネギやショウガ、ニンニクなどの薬味は風味をよくするだけでなく、におい消しの効果もあります。
反対に淡白な白身魚では、必要以上に味付けをしてしまうとサカナ本来の味がかすんでしまうため、あまり適していません。
白身の場合は「炙り」の段階でストップするのがいいかもしれません。
風味の強い赤身魚だからこそ、調味料や薬味とうまく調和できるのです。