新型コロナウイルス感染防止のため、花見の自粛が呼びかけられています。そこで、今年は花の桜の代わりに「魚の桜」を見て春の訪れを祝うというのはいかがでしょうか。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
季節によって「桜」とよばれるサカナ
魚によっては、春の時期だけ桜〇〇と呼ばれるものもいます。このうち最も有名なもののひとつに「桜鯛」があります。
桜鯛
こちらは前章で触れた「サクラダイ」とは全く別の魚、正真正銘のマダイです。もとより輝くような赤い体色が美しいマダイですが、産卵期を控えた春先のオスはそこに薄ピンクの斑点が乗り、まるで桜吹雪が散っているようなカラーリングになります。日本で最も尊ばれる魚が、桜の時期にこのような色合いになるというのはまさに奇跡としか言いようがありません。
ウグイ
海の「桜」マダイに対して、川の「桜」といえばそう、ウグイですね!
おっ今「聞いたことねーぞ」という声が聞こえてきましたね。確かにそもそもマイナーな魚たちが多い淡水魚の中でも、中くらいの知名度(個人の感想です)であるウグイ。写真を見てもピンとこない人が多いかもしれません。しかし、春に産卵期を迎えるウグイの婚姻色は非常に美しく、誰の目にも鮮やかに映るはずです。
この赤い色合いと桜の季節を合わせて「桜ウグイ」なんておしゃれに呼ぶ地域もあります。
桜魚
さて、「桜鯛」「桜ウグイ」と異なり、色合いは地味ながらも「桜魚」なんておしゃれに呼ばれる魚たちがいます。有名なのはワカサギ、そしてアユの子です。
彼らはいずれも春先になると漁獲が増え、流通量が増えるため、そのように呼ばれます。蕎麦屋の店頭に「稚鮎入りました」なんて張り紙が登場すると、酒飲みの心でも桜が満開になるのです。「花より団子」という言葉を体現するような魚たちですね。
愛でてよし食べてよしな「桜」たち
せっかくの開花宣言も、おりからの外出自粛により嬉しさ半減の今年。しかし、外出禁止でもこれらの魚を楽しむことはもちろん可能です! サクラダイや桜ウグイは流通にさして乗らないために入手はやや困難ですが、それ以外の魚は桜前線に呼応するように鮮魚店の店頭に並んでいきます。鮮魚店で「花見」というのもまたひとつ乙なものかもしれません。
目で楽しんだあとはもちろん、美味しく調理して心ゆくまで「桜」を楽しみ、ついでに健康になって各種ウイルスに負けない体を目指しましょう!
<脇本 哲朗/サカナ研究所>