冬は釣り物が少なくなる季節だが、冬ならではの釣り物の代表格として名前が挙がるカレイ。しかし、実際に釣った人は案外少ないのではないだろうか。1月11日、都市近郊では今や幻の魚かもしれないカレイを狙って、大阪の泉佐野一文字で投げ釣りに挑戦してきた。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター伴野慶幸)
泉佐野一文字で投げカレイ釣り
冬になり、カレイの釣果情報をポツポツと見かけるようになったが、暖冬の影響か本格的なシーズンインが遅れていた。ようやく12月末に入ってから、泉佐野一文字でカレイの釣果が上向いてきたのを見て、これなら私にも釣れるかもしれないと期待感が募り、釣行を決めた。
泉佐野一文字は、泉佐野食品コンビナートのすぐ沖に存在する「くの字」の形をした全長約650mの防波堤で、足場もよく四季折々の釣り物が豊富な好釣り場である。
冬場は投げ釣りでカレイ、フカセ釣りでチヌ、エビまき釣りでセイゴ、ハネ(フッコ)、ズボ釣りやミャク釣りでアブラメ(アイナメ)、ガシラ(カサゴ)、メバルの根魚トリオが狙える。
現在渡しているのは葵渡船。乗船場から防波堤まで至近距離のため、5分程度で渡ることができる。近辺の釣りエサ、釣具店は臨海線(府道29号)沿いにTポート貝塚店やフィッシングマックス二色の浜店があり、両店とも泉佐野一文字の情報に精通している。
乗船場、手続き、出船時刻、釣り方や釣果などの情報は、それぞれのホームページで紹介されている。なお、乗船時は救命胴衣の着用が義務づけられているので注意してほしい。
投げカレイのエサとタックル
当日はカレイの投げ釣りがメインで、合間には中アジ狙いのウキサビキ釣りも並行して行った。葵渡船では、投げ釣り用のサオは一人3本までの制限を設けており、当日は投げ釣り用のサオを3本持参し、2本は投げ釣り、1本はウキサビキ釣りと使い分けた。
投げ釣りはスピニングリールにミチイト5号、チカライト5~12号、スパイクテンビン30号、ミキイト4号にハリス2.5号、カレイ専用バリ12号の自作の2本バリ仕掛けを用意した。しかし実際のところ、泉佐野一文字のカレイは50mより手前の近投で狙えるので、大仕掛けは必要ない。当日はちょい投げ仕掛けで臨む地元常連も見かけた。エサはアオイソメがメインで、マムシも併用した。
ウキサビキ釣りも遠投は必要なく、飛ばしウキに底オモリのマキエカゴという定番の組み合わせを用意したが、中アジがターゲットで、最近は25cmを超えるデカアジや大サバも釣れているとのことなので、サビキはフラッシュ仕様の目立つサバ皮のハリ6号、ミキイト6号、ハリス4号の太仕掛けを選択した。
始発便でポイント争奪バトル
5時の始発便は乗船待ちの段階で定員オーバー。船長はあわただしく乗船手続きと出船準備にかかっていたので、話しをする余裕もなく、直近情報が得られないまま出船。
満員となった船内の釣り人は、カレイ狙いとそうでない人で二分されていて、私を含むカレイ狙いの釣り人たちは早くもヒートアップ。それもそのはず、近況ではカレイのポイントが、波止の船着き場1番付近から北端の灯台付近までのエリアに集中しており、そこに釣り座を構えられるか否かでほぼ勝負が決まってしまうからだ。
一方それ以外の釣り人たちは、思い思いの釣り場を選んで釣りを楽しむのんびりムード。
ほどなく1番の船着き場に着くと、ポイント争奪バトルが始まった。釣り人たちは荷物を抱えて小走りに波止の北端の灯台付近を目指す。トラブル防止のため、釣り人同士の間隔を空けるのが渡船店からの注意事項でもあり、暗黙の了解。
残念ながら一番人気の灯台付近のポイントは先に埋まってしまい、私は少し外れた所で釣り座を構えることになった。一帯ではカレイ狙いのサオが早々と林立し、始発便でなければカレイのポイントに入れないという厳しさを実感した。
投げサビキでアジ手中も単発
夜明けまではタックルの準備に専念し、日の出から投げ釣りを開始した。アオイソメがメインでマムシも少量併用する、いわゆる「アオマムシ」のエサ付けで私は臨んだが、付近ではアオイソメの房掛けがスタンダードのようだ。仕掛けの投点は沖向き50mぐらいの近投で、適度に時間を空けて、手前20m付近まで徐々に砂底を引いてくる。これがサソイになるようだ。
投げ釣りは基本待ちの釣りだが、時合いは短いので、周辺の様子には気を配りつつ、併行してウキサビキ釣りもスタート。マキエカゴにアミエビを詰め、内向き20mぐらいに仕掛けを飛ばす。
当日は大潮で朝8時前の満潮と、絶好の潮回りで期待していたが、いざ蓋を開けてみれば釣況は激渋。灯台周りこそデカアジの数釣りが見られたものの、私は7時半ごろにデカアジ1匹を拾うのがやっとで大苦戦。
カレイは、周りを見ても小型が単発で1匹釣れただけ(※後で確認したところ、実際には灯台周りで他にも釣った人がいた)で、フカセ釣りの人にも釣果がなく、諦めて早々と片づける人も続出した。
奇跡のマコガレイ28cm!
投げ釣りもウキサビキもダメなまま、朝の好時間帯も過ぎてしまい、9時半ごろの時点でスカリの中はデカアジ1匹と何とも寂しい状況。周りで粘って釣っている人たちも表情は冴えず、波止には重苦しい雰囲気が漂う。
しかしこのままでは終われない。何か打つ手はないかと、思い切って80mぐらいの遠投から入り、40mまで徐々に底を引く釣り方に切りかえてみた。底を引いてくる時は、砂底の感覚を丁寧に感じながら、起伏が大きいと感じるところで止めてみるなど、一層丁寧な釣りを試みる。
それでもしばらく状況は好転しなかったが、10時20分ごろに奇跡が起きた。50mぐらいにあった仕掛けをさらに手前へ寄せようとサオを手に取った時、魚の反応が伝わってきた。「これはひょっとして?」と、底から浮かせて慎重に仕掛けを巻き上げていくと、確かな締め込みの感触が。「頼む、バレないでくれ」と、祈るような気持ちで波止際に寄せ、最後の締め込みもかわして、そろりと抜き上げに成功。採寸すると28cm、食味は最上級のマコガレイを釣り上げた。
喜びいっぱいでスカリに入れて、ここが時合いかと気合いを入れて続行。周りも活気づいたが、後が続かず11時過ぎに納竿した。
釣果を舌でも堪能
最終釣果は数こそ2匹と寂しいものの、10年近く見ていなかったカレイの姿を見ることができて大満足。活〆にして血抜き、内臓処理をして新鮮な状態で持ち帰った。カレイは抱卵していたこともあって、デカアジとともに絶品の煮付けとなって夕食の食卓の主役を飾った。
今後の展望
例年だと2月は寒さがピークで魚の活性も厳しく、3月から徐々に回復して、4月に花見カレイと乗っ込みチヌの好機を迎えるというのがパターンだが、今年は暖冬の影響で必ずしもこの通りになるとは限らない。葵渡船や近辺の釣具店のホームページなどで直近情報を確認し、釣り物や釣り方を選んで釣行してほしい。なお、2月は出船日と運行ダイヤが変更されるので注意のこと。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>